「KYOTO CG ART CONTEST」最終結果発表! 賞金100万円は誰の手に!?
京都の城や神社仏閣などの歴史的建造物を舞台に、メタバースのバーチャル世界とリアルがクロスオーバーする次世代型アートプロジェクト「NAKED GARDEN ONE KYOTO」とCyberAgentとのコラボレーションが実現したのが今回の「KYOTO CG ART CONTEST」だ。コンテストテーマは、京都らしい「かたち」と「うごき」。時代を経て、特有の文化と和の精神を継承してきた京都をどのように表現するのか? 本コンテストはプロ・アマ問わず、さらにチームでの参加も可能というルールで、2部門合わせて計135作品が集まった。最優秀賞、部門賞の発表と審査員の講評コメントを紹介しよう。
(※)審査員講評、応募者のコンセプト説明は原文ママ
■作品応募条件・審査方法について
賞金
最優秀賞 100万円
部門賞 各30万円
応募概要
かたち部門 制作したモデルが360度回転する10秒以内のターンテーブル動画での応募
うごき部門 ジャンル、形式問わず10秒以内の動画作品での応募
参加対象
プロ・アマ問わずどなたでも
審査方法
1次審査:主催であるNAKED.IncとCyberAgentにより各部門13作品を選出
2次審査:特別審査員による審査。1名につき1部門あたり10点を好きな作品に配点。1部門あたり配点できるのは最大5作品
■特別審査員
■結果発表
最優秀賞【100万円獲得!】
『Gion』 獲得点数:20点
今川真史氏
●作品解説
祇園祭り、西陣織、鴨川など京都を代表するモチーフを、個人的に好きな京都の夏の夕立後の空に合わせて神々しい雰囲気で仕上げました。
●使用ツール
3ds Max
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
京都の様々なモチーフをとても高い技術をもちいて映画的に表現しており様々なストーリーを想像させてくれます。幻想的なライティンとシンメトリーで力強いレイアウト、優雅な布の動きなど全体的に神秘性が強く感じられてとても美しいです。
工藤美樹氏(ビジュアルテクノロジスト/レタッチャー/こびとのくつ株式会社代表取締役社長)
逆光表現や抑えたトーンなど、映画のような余韻と印象の残る作品で個人的にとても好きです。「京都の夏の夕立後の空」を選ぶ感性や、説明的な表現に頼りすぎない詩的な構成も素晴らしいと思います。御自身の感性を大切にしながら成長と進化を続けていってください。
砂川 敬氏(京都市 文化市民局文化芸術都市推進室長)
歴史と伝統の象徴が、近代建築と自然の中に浮遊する様は神々しく、未知との遭遇を感じさせる。
若杉 遼(CGWORLD編集長)
見た事ある景色の中にとても自然にSFの要素をいれていて、見た事ないのに不思議と馴染みのある景色が作られていて作品としてのバランスがとても良かったと思いました。
石橋義正氏(映像作家・演出家/京都市立芸術大学美術科教授)
実際、山鉾を動かすのはかなり労力のいる大変な作業なのですが、本当にこんな風に宙を巡行すると面白いなと想像しました。
部門賞―うごき部門【30万円獲得!】
『四季庭(シキテイ)』 獲得点数:19点
金原朋哉氏
●作品解説
石庭、枯山水をモチーフにしています。本来動かないものを気持ちよく、動きをつけたらどうなるのか? といった自分への興味もあり、枯山水の動きには特に、こだわりました。四季折々の色の豊かさも付け加え、優しい雰囲気になるように気を付けています。
●使用ツール
3ds Max、DaVinci Resolve
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
枯山水という伝統的なモチーフを心地よいモーションと四季をイメージした美しいレイアウトとルックで実現していてとても美しいです。CGも砂の粒の動きやその上のオブジェクトなどを高い技術で細部までコントロールされていてその優雅さが京都という題材にとてもマッチしていると思います。
桐島ローランド氏(CyberHuman Productions/取締役)
色彩もポップでマテリアル感がよく描かれている。最後のキャラクター達、もうちょっと頑張って欲しかった。
工藤美樹氏(ビジュアルテクノロジスト/レタッチャー/こびとのくつ株式会社代表取締役社長)
導入部分の、抽象的でありながら具象も感じさせる表現で引き込まれました。後半の人物などの登場人物が、前半の期待や広がりを収束してしまった印象があり、もっと飛躍できたのではないかと感じてしまいます。技術力や表現力は高いと思いますので、これからの作品に期待しています。
寺本恒昌氏(文化庁 企画調整課長)
美しいと思います。モダンで綺麗なのが今日の京都との兼ね合いでどういうメッセージ性を持つのか、もう少し知りたいと思いました。
石橋義正氏(映像作家・演出家/京都市立芸術大学美術科教授)
静止しているからこその枯山水ですが、動きの美しさに説得力があり、色彩も美しい。
村松亮太郎氏(NAKED, INC.代表)
シンプルなアイデアの表現、見せたいポイントへの明確なフォーカス、複雑性へのアプローチ。無数のパーティクルを動かしていることでリアルなものの情報量に負けないような表現が高評価。
部門賞―かたち部門【30万円獲得!】
『キツネ遊戯』 獲得点数:15点
Atlas氏
●作品解説
「祭り」をコンセプトにした作品です。京都の神秘的な雰囲気を表現したく、色の配色、物の配置やライティングに拘りました。
●使用ツール
Maya、ZBrush、Substance 3D Painter、Unreal Engine 4、Photoshop
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
キャラクターや動物たちのデザインやポージング、その他の和のオブジェクトなどどれもデザインがかわいく、それらが美しくレイアウトされているので見ごたえがあります。とくにライティングが幻想的で美しいです。
桐島ローランド氏(CyberHuman Productions/取締役)
この世界観とても好きです。日本の「闇」をうまく表現できたと思います。
砂川 敬氏(京都市 文化市民局文化芸術都市推進室長)
鳥居と狐と紅葉の配列が絶妙で、神秘的な雰囲気をライティングによってうまく表現している。
若杉 遼(CGWORLD編集長)
今にも動き出しそうな造形と神秘的な色使いで躍動感のある作品だと思いました。京都というと静かなイメージに寄ってしまいそうですが、しっかり京都を表現しつつダイナミックさの演出が素晴らしかったです。
村松亮太郎氏(NAKED, INC.代表)
コンセプトが高いクオリティで表現されている。きちんと演出されているので世界観が伝わってくる。
その他優秀応募作品
うごき部門
『TORII GATE YORU』 獲得点数:12点
柴田製案氏
●作品解説
深夜の夜詣TORII GATE。異世界につながりそうな予感のある世界を目指しました。
●使用ツール
Blender、Unreal Engine 5、Twinmotion
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
クリスタルやガラスのような質感の光る鳥居が無数に並んでいる姿がとても幻想的で作者が意図されているように異世界との境界といった非日常的で美しい印象を受けました。
工藤美樹氏(ビジュアルテクノロジスト/レタッチャー/こびとのくつ株式会社代表取締役社長)
京都の象徴の一つ鳥居を、独特の解釈でCG表現している点が素晴らしいと思います。今後、環境や性能と同時に技術力も上がっていくにつれ、シュミレーションや屈折表現なども複雑かつ高度化していくと思います。そして誰も見たことのないような表現を具現化し、多くの人を感動させてくれることを期待しています。
砂川 敬氏(京都市 文化市民局文化芸術都市推進室長)
スケルトンの鳥居が伝統と革新を、過去と未来を感じさせ、水面に浮かべることで神秘的な情景を醸し出している。
村松亮太郎氏(NAKED, INC.代表)
京都らしさというものを、モダンなテイストを用いて少し独特な世界観を表現している。
『Hirano Shrine』 獲得点数:11点
岩崎航輔氏
●作品解説
2018年に台風により本殿が倒壊した平野神社。子供の頃から身近に通って遊んだりしていた神社で、修繕費用の寄付を募ってらっしゃると聞いて自分なりに何か出来ないかと思い作った作品です。
●使用ツール
Blender、Nuke
●審査員コメント
工藤美樹氏(ビジュアルテクノロジスト/レタッチャー/こびとのくつ株式会社代表取締役社長)
御自身が持つ才能で倒壊した神社の再建に貢献したいという、その想い自体が素晴らしいと思います。他方、倒壊した悲しみを伝えるのであれば、報道としての写真や映像のようなドキュメンタリーの方が良いのではないかと感じるという点です。折角才能をお持ちなので、例えば再建された神社の美しい姿を織り込むなど、御自身の思いをもっと突き詰めても良いと感じました。
寺本恒昌氏(文化庁 企画調整課長)
滑らかな映像の流れと音が綺麗に整っていると思います。本映像に持たせるメッセージをより知りたいと思いました。
石橋義正氏(映像作家・演出家/京都市立芸術大学美術科教授)
京都には何か目に見えぬものの気配を感じる場所があちこちに存在しますが、その独特な空気感が表現されています。
『光陰』 獲得点数:11点
takao氏
●作品解説
シンメトリベースにすることで、アシンメトリをより際立たせ空間的な美を感じられるようにデザインしました。また、茶道や坪庭、紅葉、詫び錆びなど、自分が思う京都の良さを表現しました。
●使用ツール
Maya、Blender、Substance 3D Painter、After Effects、Photoshop、speedtree、Megascan
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
非常にフォトリアルなレンダリングでその場にいるような説得力があり派手な絵ではありませんが引き込まれます。細かく作り込まれたオブジェクトやレイアウト、ライティングなど高い技術でコントロールされておりゆったりした侘寂のある時間の流れをCGで感じさせてくれます。
工藤美樹氏(ビジュアルテクノロジスト/レタッチャー/こびとのくつ株式会社代表取締役社長)
技術力の高さや表現の自然さで、すっと表現が入ってくる素晴らしさがあります。敢えて欲を言えば、技術力が高く自然になればなるほどCG独特の表現がないことへの疑問が出てしまうことです。ロケ撮影した映像との差別化や、作家性を帯びることができれば、大きな飛躍が期待できる才能をお持ちだと思います。
若杉 遼(CGWORLD編集長)
空気感だけで京都を表現しているのが素晴らしかったです。京都の厳かな雰囲気が建物のデザインや色使いから手に取るように感じられて、シンプルな要素でここまで表現できるのは素晴らしいです。
石橋義正氏(映像作家・演出家/京都市立芸術大学美術科教授)
手前の部屋は、光が柔らかくて心地よく、表現が難しい侘び寂びの空間をうまく表現されています。
かたち部門
『鳳雛の一矢』 獲得点数:13点
Hand to Mouse.氏
●作品解説
伝統からポップカルチャーまであらゆる文化を内包し、なお未来へ進化する京都を「通し矢」「寺社」「絵巻物」「キャラクター」などのエッセンスを交え、成長・躍動・進歩・未来を感じていただけるよう形にしました。
●使用ツール
Blender、Marvelous Designer
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
現代的なキャラクターと京都や和の伝統的なモチーフを上手く融合させていて綺麗です。キャラクターのポーズなども派手過ぎず凛とした綺麗な構え姿で和のモチーフに合っています。衣服も細かく作り込まれていて美しいです。
桐島ローランド氏(CyberHuman Productions/取締役)
2Dグラフィック調なものを3Dに上手く演出していると思います。
砂川 敬氏(京都市 文化市民局文化芸術都市推進室長)
石段と鳥居、桜吹雪の連動したカーブと弓矢のバランスが絶妙。花びらと狐が袴の絵柄になるところも面白い。
若杉 遼(CGWORLD編集長)
キャラクターの造形ももちろんですが、セットのデザインが素晴らしかったです。特に桜の表現は静かな弓道の印象に躍動感も盛り込んでいてとても良かったです。
村松亮太郎氏(NAKED, INC.代表)
リアルに近いCGはたくさんあるが、あえてアニメタッチを選んだことで他とは少し違った京都らしいかたちが伝わってくる。
『五重塔』 獲得点数:11点
FloorYUKA氏
●作品解説
日本の和風建築の美しさにある、繊細な造りと複雑な構造を魅力的に再現するために、組物の構造を理解し、造っていくことことに力を入れました。また、瓦を一枚づつ配置し、テクスチャも惜しみもなく使ったので、まばらな造形と色合いを表現することができました。
●使用ツール
Maya、Substance 3D Painter
●審査員コメント
横原大和氏(Khaki CG Director/Art Director)
五重塔のパーツごとに細かくモデリングされており、テクスチャなども経年感をしっかりと拘って表現していて時が経った伝統的建築物の美しさを表現していると思います。
工藤美樹氏(ビジュアルテクノロジスト/レタッチャー/こびとのくつ株式会社代表取締役社長)
非常にシンプルですが、その分作者の丁寧な観察眼と、建築への愛を強く感じます。古美術や工芸を愛する自分としては、全応募作品中、最も称賛したい作品です。御自身の興味や繊細な感性を大切にしながら、このまま突き進んでいって下さることを期待しています。建築や仏像・工芸など、興味の対象を深掘りしていって欲しいです。心から応援しています。
若杉 遼(CGWORLD編集長)
五重塔のディテールの作り込みが素晴らしかったです。日本の伝統的な建築物は構造がとても複雑だと思うので、CGの造形で再現するのもとても難しいと思うのですが、瓦も一枚づつということでこだわりが作品からも伝わってきます。そして、何よりそこまでのディテールにより、作品の素材感が際立っていました。
『いざない』 獲得点数:10点
ZKI design 塩月卓也氏
●作品解説
純朴な舞妓さんのかわいらしさと、日没とともに京都の街を包み込む艶かしい非日常との対比を、スケーラブルなデジタルアートのターンテーブルを通して表現した。門を境界として、2つのシーンを同時にモデリングし、俯瞰するのみの従来のターンテーブルにはない臨場感を試みた。
●使用ツール
Blender、Davinci Resolve
●審査員コメント
砂川 敬氏(京都市 文化市民局文化芸術都市推進室長)
京都らしいかたちとして評価できる部分が多いのに、展開が早すぎて内容が伝わらないのが残念。
寺本恒昌氏(文化庁 企画調整課長)
京都の世界観が垣間見えると思いました。
石橋義正氏(映像作家・演出家/京都市立芸術大学美術科教授)
舞妓が不気味とも感じるビザールな存在感を醸し出していて、そこがこの作品の魅力です。
問い合わせ
■問い合わせ先
「KYOTO CG ART CONTEST」運営事務局
Mail:ad@cgworld.jp
■本プロジェクト関連会社
株式会社NAKED
株式会社CyberHuman Productions
株式会社CyberMetaverse Productions
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada