CG歴1年半の文系大学生、b3d創作祭マウスコンピューター賞を受賞!ポストアポカリプスの世界観で描くドーナツ
CGWORLD主催「b3d創作祭」で、マウスコンピューター賞を受賞した山口歩夢氏。大学生でありながら、独学でCG制作を学び、作品『Old-Time Donuts』で見事受賞した。高く評価された独特な世界観と、詳細な質感表現をどのように制作したのか、そして今回賞品として同氏に提供されたマウスコンピューター「DAIV FX-I7G7S」の実力について語ってもらった。
1. 「つくりたいものをつくる」という学習方法
CGWORLD(以下、CGW):ご経歴を教えてください。
山口歩夢氏(以下、山口):東京出身の大学生です。学部は文系なんですが、趣味でBlenderをはじめ、独学で学んできました。SF映画が好きで、ハリウッド映画などで使われているCGを見て、自分もやってみたいと思うようになりました。CG歴は約一年半です。
CGW:CGは独学とのことですが、具体的にどのように学ばれたのでしょうか?
山口:「つくりたいものをつくる」ということを大事にしていて、その過程で、必要となる知識をYouTubeや、Udemyで調べ、学んでいます。機能をひとつずつ覚えていくより、まずは自分がつくりたいものありきで始めたほうが長続きすると思います。実は今回のコンテストの説明に、「チュートリアルといえばドーナツ」とありましたが、自分はこれまでドーナツを作ったことがなかったんですよ(笑)。あとは、あまり目標を高く掲げず自己満足でいいので、少しずつ自分の作品を完成させていくことを心がけています。
CGW:参考にしているクリエイターさんはいますか?
山口:「3D Bibi」さんの動画はよく見ていました。海外のクリエイターさんの動画も見るんですが、チャンネル単位というよりは分からない工程を英語で検索し、出てきた動画を参考にするという流れで見ることが多いです。
2. ポストアポカリプスの世界観をテーマにしたドーナツ
CGW:「b3d創作祭」でマウスコンピューター賞を受賞した作品『Old-Time Donuts』について聞かせてださい。このコンテストは「ドーナツ」がテーマでしたが、どのようにコンセプトを発想されたのでしょうか?
山口:普通のドーナツよりも何か異質な要素を取り入れたものをつくる方が面白そうだと感じたので、石が苔に覆われたSFっぽいドーナツを作ってみようと考えました。「未来少年コナン」※のようなポストアポカリプス的な世界観の中にドーナツがあったらどうなるのかな、というイメージです。ドーナツを山や地形のようにする案も考えたんですが、ノートPCで制作するには無理があると判断し、サイズ感は現実と同じにしました。
※(アレグザンダー・ケイの小説「残された人びと」を原作に、宮崎駿が監督したTVアニメ作品)
CGW:なるほど。世界観を聞くと、本来の「ドーナツ」とはかけ離れたイメージになりそうなところですが、今回の作品には美味しそうという評価も寄せられていました。
山口:ライティング、コンポジットに拘った結果そのような評価を頂けたのかなと考えています。石でできた無機質なドーナツを主題にしつつも、どこか温かみや生活感を感じられるような作品が理想でした。ライティング、コンポジット前は色味が全体的に冷淡な印象でしたので、暖色を追加し暖かさを演出しました。
CGW:作品の中で特にこだわって作った部分はどこでしょうか?
山口:特にこだわったのは苔の質感です。どうつくるか悩みながら色々と調べていた際に、ジオメトリーノードの存在を知り早速、活用してみたところ、うまく苔を表現をすることができました。
CGW:参考にした教材はありますか?
山口:Robbie Tilton氏の「Blender Geometry Nodes - Moss Generation」を参考にしました。YouTubeで「Blender moss(苔)」と検索して見つけた動画です。
CGW:この作品の制作時間を教えてください。
山口:実際の制作が30時間くらい、レンダリング時間も含めると50時間くらいだと思います。ノートPCでの制作ということもあって、レンダリングにかなり時間がかかってしまい、試行錯誤する時間が少なかったですね。
3. レンダリング時間が半減「DAIV FX-I7G7S」の実力
<検証機材> DAIV FX-I7G7S
- OS
Windows11Home 64ビット
- CPU
インテル®Core™Ultra7プロセッサー 265K
- グラフィックス
NVIDIA®GeForce RTX™4070 SUPER
- メモリ標準容量
64GB (16GB×2 / デュアルチャネル)
- M.2 SSD
2TB (NVMe Gen4×4)
- 無線
Wi-Fi 6E( 最大2.4Gbps )対応 IEEE 802.11 ax/ac/a/b/g/n準拠 + Bluetooth 5内蔵
山口氏の現行機のスペック
- CPU
Ryzen7 5700X
- グラフィックス
RTX 3060ti
- メモリ標準容量
16GB
CGW:普段の制作環境を教えてください。
山口:自作のデスクトップPCをメインに使用しています。GPUはRTX 3060ti、CPUはRyzen7 5700X、メモリは16GBです。
CGW:今回はそれよりさらにスペックの低いノートPCで制作されたとのことですが、動作は重くはなかったですか?
山口:すごく重かったです。最終レンダリングは12時間くらいかかりました。実家のリビングの端で、ノートPCのファンの音がずっとしていました(笑)。デスクトップPCも、ゲーム用に構成を組んだもので、Blenderを使い始めてからは、制作中にソフトが落ちてしまいやり直しということが結構ありました。
CGW:賞品であるマウスコンピュータのDAIV FX-I7G7Sの性能を検証していただきました。まずは率直な感想をお聞かせください。
山口:自分のPCとスペックがあらゆる面で段違いなので、かなり快適でした。ベンチマークを計測したのですが、普段使っているPCの3倍くらいの数値が出て驚きました。いつもと同じ作業をするのも、データの読み込み速度がかなり向上したことが体感できましたし、プレビュー画面の表示もかなりスムーズになりました。特にジオメトリノードを多用するシーンでの快適さは顕著でした。とにかく、あらゆる面で操作感がかなり良くなっていることを感じました。
CGW:筐体のデザインはいかがでしたか?
山口:自分はあまりPCの筐体を掃除しなくて埃が溜まりやすいので、USB端子などを隠せるカバーがあるのはいいなと思いました。これならメンテナンスもしやすそうです。
それに、ケースの下にキャスターが付いているので、移動させるのが楽です。今のデスクトップPCは移動する際にかなり苦労していたので、こういった工夫があるのはありがたいです。
4. レンダリング時間の比較
山口氏の現行機と「DAIV FX-I7G7S」で、Blenderのレンダリングに要する所要時間の比較検証を行なった。検証には、山口氏が制作した『デロリアン』※のモデルが使用された。
3,840×2,160の解像度のデータを、Blender標準搭載のCyclesでサンプル数4096でレンダリングを行い、時間を計測した。結果は山口氏の現行機15分41秒、DAIV FX-I7G7Sは8分35秒。レンダリング時間が約半分に短縮された。
現行機
(GPU)RTX 3060ti
(CPU)Ryzen7 5700X
(メモリ)16GB
DAIV FX-I7G7S
(GPU)NVIDIA® GeForce RTX™ 4070 SUPER
(CPU)インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 265K
(メモリ)64GB
また、ChineBench R24を使用し3つのレンダリング方式(マルチ、シングル、GPU)ごとに性能比較を行った。DAIV FX-I7G7Sは、マルチスレッド、シングルスレッド、およびGPUレンダリングの各項目で現行機を大きく上回る性能を発揮した。マルチスレッド処理では評価スコア1782と、現行機の734を大幅に凌駕し、高い処理能力を示している。シングルスレッドではスコア 119と現行機 91を上回り、シングルタスクでも優位性を発揮した。さらに、GPUレンダリングではスコア 17979を記録し、現行機 9162の約2倍の性能を示し、GPUを活用したタスクでの圧倒的なパフォーマンスが際立っている。GPU性能の違いがこの差を生んでいるのは明白だが、DAIV FX-I7G7Sは、さらにNPU・AI機能を搭載したインテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 265Kを搭載しておりBlenderのレンダリング時間の短縮、スムーズな動作の実現に寄与していると思われる。
結果的に、マウスコンピュータの「DAIV FX-I7G7S」は、圧倒的な性能で現行機を大きく上回った。Blenderのレンダリング検証では、3,840×2,160解像度・サンプル数4096のデータで現行機15分41秒に対し、8分35秒と約半分の時間で完了。ベンチマークでも約3倍のスコアを記録し、データ読み込み速度やプレビュー画面の表示が大幅に向上した。ChineBench R24を使用した計測では、マルチスレッドスコアが現行機の734に対し1,782、シングルスレッドスコアでも上回り、特にGPUレンダリングでは約2倍の性能を発揮。筐体デザインもUSB端子を隠せるカバーやキャスター付きで、メンテナンス性と移動の利便性が高く、快適な操作性を実現している。あらゆる面で制作環境の改善が期待できる一台だと言える。