「WHO'S NEXT?」2021年第2弾の覇者が独自の学習法を披露 、「DAIV Z7」と最新CPUの実力にも迫る
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過去最高となる185点の応募があり、とてもハイレベルな作品が集まったCGWORLD主催の学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」2021年第2弾。2021年7月に優秀賞作品が発表され、その中で多くの審査員を魅了した『クリーニング』が1位を獲得した(「WHO'S NEXT?」2021年第2弾)。今回は、その作者にCG制作を始めたきっかけや作品のコンセプト、こだわりなどを聞くとともに、インテルの最新CPUを搭載したマウスコンピューターのデスクトップPC「DAIV Z7」の性能を検証してもらった。
動画のチュートリアルから模写へ、リアルさを生む情報の足し方も模索
印象的な作業場の風景をフォトリアルに描き、見事に1位を獲得した『クリーニング』の作者である佐藤駿平さん。現在は日本工業大学の4年生で、所属はプログラミングやWebデザインなどを学ぶ情報メディア工学科となるため、CG制作は「大学1年生のときに友人に誘われて趣味で始めました」とのこと。プラモデルなど、子どもの頃から“何か物を作ることが好きだった”ことから、誘われたときは「これは面白いかも」と感じたそうだ。
佐藤駿平氏
日本工業大学 情報メディア工学科
趣味でCG制作を始めたことから、佐藤さんはスタート当初、Webにアップされている動画などをCG制作のチュートリアル教材として活用。自動車や戦闘機が好きだったことから「作りたいものに必要な(あるいは応用できる)チュートリアルを探していく流れで、さまざまな技術を学んでいきました」と説明する。また、子どもの頃から「フリーハンドで絵を描く才能には恵まれていない」と感じていたが、CGであればしっかりとした造形になることに感動し、「その点でモチベーションが上がりました」と振り返る。
ちなみに、佐藤さんは最初の段階で「BlenderとMayaのどちらを制作ツールに選ぶべきか」で迷ったそうだ。しかし、Blenderだと無料のWeb教材が豊富にあったのに対して、Mayaは有料ばかりだったことから「金銭面も考慮してBlenderを選びました」とのこと。一方で、「疑問に感じた点などを誰にも相談できなかったのは大変でした」と独学ならではの難しさにも触れ、自分で模索していくしか方法がなかったために「悩む時間は多かった」と吐露した。
このようなチュートリアル期間を半年ほど経験したのち、佐藤さんがのめり込んだ学習は「模写」。ゲームが好きだったことから、好きなゲームコンテンツの背景模写を何度も繰り返したそうだ。また、模写から学んだこととして挙げたのが「構図」「配色」「観察力」「空気感」「空間への意識」など。さらに、2次元の写真を3次元モデルにする場合には、「どうやって情報量を足していけばリアルに見えるか。そういった部分は常に考えています。なぜなら、不自然に要素を追加してしまうと、整合性が取れなくなるからです」と付け加えた。
ちなみに、フォトリアルな作品を好む佐藤さんが個人的な目標としているのが、「WHO'S NEXT?」2020年第2弾で入賞経験のある平田翼さん(デジタルハリウッド大学)(「WHO'S NEXT?」2020年第2弾)。作風や空気感にほれ込んでおり、「モデルの質というか、テクスチャが本当に見事で、どうしてここまで本物のように見えるのか。技術的に、自分はまったく追いついていないと痛感します」と絶賛。その技術を試行錯誤しながら「自分の作品に落とし込もうと励んでいます」とのことだった。
良く知る分野をコンセプトにすることがリアリティを生み出す大切なポイント
さまざまな想像をかきたてる『クリーニング』は、圧倒的な物量や高いクオリティが醸し出す“リアリティ”が大きな魅力の1つである。このリアリティを生み出すうえで、重要なポイントとなっているのが作品の「コンセプト」。佐藤さんは作品のコンセプトを「射撃競技者の作業場」としたが、その詳細は非常に細かく設定されており、例えばこの作業場の主人公には「イギリス在住 36歳 男性」「結婚済み 子1人(6歳)」「愛煙家(赤LARK)、ドクターペッパーが好み」「几帳面」「趣味は家族とのドライブ、射撃」といったところまで設定されているほどだ。
このようなコンセプトづくりに関して、佐藤さんは「設定するコンセプトに対して、その詳細な背景まで知らないとリアリティは出せません。今回、射撃競技者を選んだのも、自分の父親が射撃競技を実際にやっていたから。自分が好きな分野や身近な領域であれば、そこでの経験や知識を反映させることで作品の作り込みもしやすいわけです」と説明する。実際、主人公の設定は佐藤さんの父親がベースになっているほか、射撃競技では「顎を付ける場所の高さをビニールテープで調整する」という独自カスタムがあることから、それが作品の表現にも反映されている。
それ以外にも、例えば佐藤さんがコンビニで働いていたときに「赤LARKを買う人は温厚で優しくて趣味人」というイメージがあったことから、それらも主人公の設定に反映されている。さらに今回の作品とは別だが、以前に中華料理店のCG作品を制作した際には、実際の中華料理店の厨房に入らせてもらったこともあるそうだ。「勝手に作るぐらいなら、しっかり経験した方が良い作品が作れるかなと思ったので」と佐藤さんはほくそ笑む。
一方で、実際に経験することが難しく、制作過程で佐藤さんをもっとも悩ませたのが「構図」だ。書籍やWebではなかなか良いものを見つけられなかったことから、最終的に佐藤さんが参考にしたのはソーシャルカードゲームのカードに描かれているイラストの構図。そこには多くのプロイラストレーターの技術や工夫が詰め込まれていることから「自分としてはとても勉強になりました」と語り、構図だけでなく「アウトライン誘導」「配色(信号機の定理)」「背景のメリハリ」などの技術を吸収したそうだ。
このような経緯もありつつ、佐藤さんはBlender、Photoshop、Substance Painterといったツールをフル活用し、わずか3週間程度で『クリーニング』を完成させた。しかし、その制作過程は決して順調だったわけではなく、開始からわずか1週間で「PCの故障」という最大のピンチに見舞われた。そもそも、佐藤さんが最初に使っていたPCは中学1年生のときに買ってもらったデスクトップPCだったそうだ。Core i7のCPUやGPU「GeForce GTX 1060」などを搭載していたが、さすがに7年前のマシンでは性能不足で処理の負荷も大きかったためか、最終的に電源を入れても画面が表示されない状態にまでなってしまったという。
さすがに佐藤さんも、その瞬間は「終わった…」と落胆したそうだが、すぐに気持ちを切り替えて迅速に新しいPCを購入。壊れたPCから制作途中のデータをサルベージできたこともあり、最悪の事態を乗り切ることが出来たそうだ。さらに、怪我の功名とばかりに、ハイスペックな新しいPCに買い替えたことで作業効率が飛躍的にアップ。壊れたPCでは30分かかっていたレンダリング時間が、たったの1分にまで短縮できたそうで、「PCを買い替えていなかったら絶対に間に合わなかったと思います」と苦笑交じり語ってくれた。
このように、独自のやり方で研鑽を続けるとともに想定外のピンチを経験した甲斐(!?)もあって、栄えある1位をコンテストで獲得した佐藤さん。今回はその賞品として贈呈されたマウスコンピューターのデスクトップPC「DAIV Z7」を使用し、『クリーニング』の制作に即した検証を実施。作品制作時に買い替えた新しいデスクトップPCと比較し、その性能や使い勝手に迫った。
検証機「DAIV 7」と佐藤駿平さんの現行機との機材構成比較
今回の検証では、賞品のクリエイター向けデスクトップPC「DAIV Z7」と、佐藤さんがPCの故障に際して新たに購入した現行機を使用。『クリーニング』の制作データを利用して検証を行った。
DAIV Z7は、インテル第12世代の最新CPU「インテル Core i7-12700F プロセッサー」を搭載する点が最大のポイント。これに加えて、ミドルクラスのGPU「GeForce RTX 3060」や32GBのメモリ、さらには水冷CPUクーラーまで装備し、幅広い作業を万能にこなすハイスペックモデルとなっている。
インテル第12世代Coreプロセッサーは、アーキテクチャが異なる2種類のCPUコアを採用した「ハイブリッドアーキテクチャ」が大きな特徴の1つ。性能を重視した「Pコア(Performance-core)」と効率を重視した「Eコア(Efficient-core)」の2つがあり、上位モデルには両方のコアを搭載。これによって電力効率を上げるとともに、高い処理性能も実現している点がメリットだ。なお、インテル Core i7-12700F プロセッサーは12コア(Pコア 8、Eコア 4)/20スレッドとなる。
また、インテルではOSがCPUコアの割り当てを支援する「Intel Thread Director」という機能を用意しており、この機能によってインテル第12世代Coreプロセッサーはその性能を最大限に発揮できるようになっている。ただし、この機能はWindows 11に最適化されていることから、DAIV Z7のOSが「Windows 11」という点は意外と重要なポイントといえる。
一方、佐藤さんの現行機は、2021年に約18万円で買い替えたモデル。佐藤さんいわく「型落ちのセール品」とのことだが、8コア16スレッドのAMD製CPU「AMD Ryzen 7 3700X」や1世代前ながらもハイエンドのGPUとなる「GeForce RTX 2080 SUPER」、さらに32GBのメモリを搭載しており、現状でも十分な処理性能を有している。
DAIV Z7
- 価格
26万9800円(税込)
- CPU
インテル Core i7-12700F プロセッサー(12コア【Pコア 8、Eコア 4】 / 20スレッド / Pコア 2.10GHz、Eコア 1.60GHz / TB時最大4.90GHz【Pコア 4.80GHz、Eコア 3.60GHz】 / 25MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3060
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe接続512GB SSD+2TB HDD
- OS
Windows 11 Home 64bit
- 無線
IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n + Bluetooth 5内蔵
- 電源
700W【80PLUS BRONZE】
佐藤駿平さんの現行機(デスクトップPC)
- 価格
約18万円
- CPU
AMD Ryzen 7 3700X(8コア / 16スレッド / 基本クロック:3.6GHz / 最大ブースト・クロック:4.4GHz / キャッシュ32MB)
- GPU
GeForce RTX 2080 SUPER
- メモリ
32GB(8GB×4)
- ストレージ
500GB SSD+1TB SSD
- OS
Windows 10 Home 64bit
検証1:Blenderでのレンダリング時間
Blenderの検証では、『クリーニング』の制作データをそのまま使い、CPU+GPU設定でレンダリングを実施。レンダーにはCyclesを使用し、サンプル数は「2000」として、「2K」「4K」「6K」の3サイズで処理時間を計測した。
その結果、2KではDAIV Z7が「1分56秒」、現行機が「2分21秒」、4KではDAIV Z7が「7分24秒」、現行機が「8分11秒」、6KではDAIV Z7が「17分18秒」、現行機が「19分43秒」となった。3サイズすべてDAIV Z7が勝利する結果となったが、じつはGPUの性能だけで比較すると、DAIV Z7のGeForce RTX 3060は現行機のGeForce RTX 2080 SUPERよりも2割ほど性能が低いとされている。その点を踏まえると、DAIV Z7のインテル Core i7-12700F プロセッサーはGPUの性能差を埋めるだけでなく、さらに1割程度の差を現行機につけたということ。最新CPUの実力を遺憾なく発揮しており、佐藤さんも「現行機と比べて完全に上位互換」と満足げだった。
検証2:Blenderのウォークナビゲーションでの検証
Blenderで制作した3D空間を一人称視点で自由に移動して確認できる機能「ウォークナビゲーション」を使用し、『クリーニング』の制作データでその処理性能を検証した。
こちらの検証結果も、現行機では表示までにやや待たされるケースも多かったが、DAIV Z7では待ち時間が少なく、かなり快適に操作できる結果となった。検証1でも述べたようにGPUはDAIV Z7の方が劣っているので、ここでもインテル Core i7-12700F プロセッサーが大きく貢献していることが見て取れる。佐藤氏も「レスポンスが本当に早いと感じました。視点を動かしてもパッと表示されるので、ストレスなく作業できる点はとても良いです」と高評価だった。
第12世代の最新CPUがその実力を発揮、水冷CPUクーラーが使い勝手をさらにアップ
DAIV Z7は、そのスペックを確認しただけでも高性能だとわかるが、今回の検証を通じて、3DCG制作も快適にこなせる力をしっかり備えていることがわかった。とくに、インテル Core i7-12700F プロセッサーがその優れたパフォーマンスを随所に発揮しており、大きなアドバンテージを生み出している点は見逃せない。
また、佐藤さんが使い勝手の面で注目したのが「水冷CPUクーラー」である。優れた冷却性能でCPUの処理能力を最大限に引き出せる点は大きなメリットだが、それ以外にも「現行機よりファンの音が抑えられており、音がまったく気にならなかった」とのこと。寝る前にレンダリングをスタートさせ、朝起きてから出力結果を確認することもあるため、長時間レンダリングによるCPUの発熱も含めて「そういった使い方にもメリットがある」と感じたそうだ。
今後に展望について佐藤さんは、「直近の目標はゲームメーカーへの就職です。その後は、フォトリアルに長けたクリエイターになれればと考えています。いずれはAAAのゲームタイトルに携わりたいですね」と語った。また、学生やCGの初心者に向けては「まずはCG制作を始めて、そのまま続けていくことが大事です。さらに、もっとも重要なのは“楽しむ”こと。作りたいものを楽しみながら制作し、それがいずれ仕事になれば最高ですよね」とアドバイスした。
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6833-1041(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6833-1010(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)