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世界中から多数の魅力的な作品が集結! 世界規模のVFXデザインコンテストで優勝を勝ち得た学生アーティストのこだわりや技術習得の秘訣とは?

2022年3月、アグニ・フレアが主催する世界規模のVFXデザインコンテスト「WWVFX CONTEST FOR GAMES 2021」の最終審査が行われ、その結果発表会「WWVFX CONTEST FOR GAMES 2021」The Awards Ceremonyが開催された。前半ではまず同コンテストの概要とともに、受賞作品や審査員のコメントなどをお伝えする。

記事の目次

    VFXの技術向上とともにスターアーティストの発掘などを目指したコンテスト

    同コンテストは、ゲームや映画などで良く見られる映像技術の1つ「VFX(Visual Effects)」にフォーカスし、「VFX業界全体を盛り上げていきたい」という思いで企画されたもの。VFX技術の向上を促すとともにその楽しさを広め、VFXアーティストのスターを発掘することなどを目指したリアルタイムVFXのコンテストである。

    さらに、「VFXに国や地域の壁は存在しない」というコンセプトから応募資格を不問とし、世界中からの作品を募集した点もユニークな特徴の1つ。また、応募部門は「学生部門」と「一般部門」の2つのカテゴリに分けられ、各部門ごとに「Explosion」と「Free」の2セクションを設定。その結果、10の国と地域から74作品の応募があった。

    最終審査では、スポンサー各社と有識者によって編成された「9 Judges」が審査を担当。「技術力」「美術力」「発想力」の3要素を各10点満点として評価し、総合得点で順位を決定する。また表彰では、学生・一般部門の各テーマ別セクションで「BRONZE AWARD」と「SILVER AWARD」の2枠ずつを選定。さらに、全応募作品の中から最も評価の高かった作品に「GOLD AWARD」が与えられた。

    • 結果発表会で司会を務めたJ-mon氏
    • 同じく司会を務めた東海林舞氏

    学生部門・Freeセクション「BRONZE AWARD」

    ●『Lightning Strike』(hook、日本、186ポイント)

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    学生部門・FreeセクションのBRONZE AWARDは、hook氏の「Lightning Strike」が受賞した。この作品に対して、SQUARE ENIXの鈴木光氏は「電撃の発光感や雷らしい動き、明滅などが良く表現されており、見ごたえのある作品でした」と総括。ツールの使いこなしなどのテクニカルな面とともに、演出中盤のチャージのような表現の際に表示される黒い球体状のパーツが「明滅を印象付けるのにとても効果的で、そういった表現の発想面も良かった」と評価した。

    一方で、いくつかの改善点も提示。例えば「電撃のシルエット」では、半円状の雷の形状がほぼ固定化されていたことから、頂点シェーダによる形状変化を加えるなどで「ランダム感が出せて雷感が強まる」とアドバイス。また、最後の大きな雷の表現が「ややベタな表現が多く単調に感じた」ことから、シェーダによる削り表現などを加える方法などを提案した。

    JangaFXのニック・シーバート氏は「稲妻の形状や色、タイミングなどが素晴らしく、じつにクリエイティブだ」と評価。さらに、色収差の使い方にも優れており「とても心に響いた」と付け加えた。一方で、1つ気になった点として「キャラクターがエネルギーをチャージしているときの演出」を指摘。チャージ中の稲妻に特別な動きがあまり見られなかったことから、最後の落雷がある場所に向かって「そこにすべてのエネルギーを放出するんだ!」という感じで稲妻が走るような演出があると「より良くなる」とアドバイスした。

    【受賞者コメント】
    「こだわった点は“雷エネルギーの表現”と“エネルギーを溜める演出”。マテリアルで雷を点滅させたり、エネルギーのオーブをランダムで変化させたりするなどの機能を加えました。さらにクオリティの高い作品を作れるように、今後もエフェクト制作に励んでいきます」

    一般部門・Freeセクション「BRONZE AWARD」

    ●『Jin』(Delphic、大韓民国、184ポイント)

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    一般部門・FreeセクションのBRONZE AWARDは、Delphic氏の「Jin」が受賞した。この作品に対して、Epic Games Japanの斎藤修氏は「緩急のあるHUD表現が次々と展開されていくところがとても気持ち良く感じました」と評価。また、カラーが暖色系でまとめられている点にも着目し、色遣いをあえてシンプルにまとめることで「動きや形、リズムなどに情報がフォーカスされ、よりスタイリッシュでSFチックな表現ができていると感じました」と語った。

    WWVFX委員会の篠原亜留吾氏も、非常に繊細でリズムよく空間に表れるHUDの演出に注目し、「パーツを立体的にバランスよく組み上げていく技術力や、小気味よい動きを付けた表現力の高さを感じました」とコメント。さらに、全体を通して「エネルギーのタメ表現や発射後の余韻のゆがんだ衝撃破、バックブラストなども丁寧に表現されていました」と付け加えた。

    【受賞者コメント】
    「BRONZE AWARDの受賞を、とても嬉しく感じています。まだまだ至らない部分もありますが、今回の受賞はアイデアの勝利だったのかなと思っています。これからも素敵な作品を作っていく所存です。有難うございました!」

    学生部門・Freeセクション「SILVER AWARD」

    ●『幻想インパクト』(Armour、中華人民共和国、202ポイント)

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    学生部門・FreeセクションのSILVER AWARDは、Armour氏の「幻想インパクト」が受賞した。この作品に対してEpic Games Japanの斎藤修氏は、エフェクト自体の表現とともに“エフェクトを見せるための環境の美しさ”に感心し、「表現の緩急が素晴らしく、非常にダイナミックな表現になっていました」と評価する。また、エフェクトを構成する技術の多彩さにも注目し、ファンタジーの派手さだけでなく「説得力のあるリアリティもエフェクトに生まれている」と補足。さらに、学生とは思えない完成度の高さを称えるとともに「今後はカメラのカット割りも含めた映像としての全体的な表現にチャレンジしてみてはどうか」と提案した。

    Beyond-FXのキース・ゲレッテ氏は、作品全体で様々なことが起こる展開に魅力を感じ、「これだけのことをやってのけたことは圧巻」と称賛した。さらに、滑らかさと鋭さのパラメータを使って「すべてのモーションがとても綺麗に流れている」ことからアニメーションのタイミングも高く評価するなど、全体として「非常に魅力的な作品でした」と総括した。

    【受賞者コメント】
    「2年前までは普通のプログラマーだったのですが、VFXの世界に触れたことで人生が一変しました。VFXには人に幸せを与える魔法の力があると思います。今後はVFX向けのテクニカルアーティストとして、みなさんの心に触れるようなVFXの制作を目指していきます」

    一般部門・Freeセクション「SILVER AWARD」

    ●『Bird projectile』(Rinban、大韓民国、187ポイント)

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    一般部門・FreeセクションのSILVER AWARDは、Rinban氏の「Bird projectile」が受賞した。この作品に対して、JangaFXのニック・シーバート氏はまず“色の鮮やかさ”に目を引かれるとともに、ゆっくりと飛んで力強くヒットする演出の“気持ち良さ”に着目し、「とても素晴らしい」と称賛。さらに、目標に向かって追尾するように飛んでいく2発目の演出も「自分好みでとても興味深い」としたほか、ちょっとしたリフレクションが「魔法らしい雰囲気を醸し出しています」と語り、その出来栄えを高く評価した。

    Persistant Studioのメデリック・ハバート氏も「細部までよく作られているうえにバリエーションもあり、とても格好良いと感じました」と高評価。鳥型の光弾が回転する部分などにも触れて「ディテールにまでこだわりが感じられ、良いアイデアだと思いました」と付け足した。また、個人的な意見として「鳥をイメージするのであれば、もう少し直線っぽくない動きにした方が良かったかも」と提案したが、全体としては「AAAタイトルのゲームに合うようなプロの仕事といえます」と評した。

    【受賞者コメント】
    「私はゲームのVFXに関する仕事に携わって長いのですが、コンテストに作品を応募するのは今回が初めてでした。“自分の作品が世界でどう評価されるか”を知る意味で、この機会はとても良い経験になりました。これからもより学びを深めていき、その経験をシェアしていきたいと考えています」

    学生部門・Explosionセクション「BRONZE AWARD」

    ●『Absorbing orb』(pataya、フランス、175ポイント)

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    学生部門・ExplosionセクションのBRONZE AWARDは、pataya氏の「Absorbing orb」が受賞した。この作品に対してPersistant Studioのメデリック・ハバート氏は、オーブの周りの帯とオーブの膨張・圧縮が上手くシンクロしている点に着目し、pataya氏が「高度なシェーダ技術を熟知しており、Vertex Displacementを上手く利用している」と評価。さらに爆発については、花の形をした炎が高速で回転しているかのようで「爆発の威力をしっかりと強く感じられました」とし、このまま制作を進めていけば「明るい将来が待っているでしょう」とエールを送った。

    NeoBards Entertainmentのライアン・ズォン氏はまず、無駄のない素晴らしタイミングで短いストーリーを表しているテンポが良さに「ひと目惚れしました」と語った。また、歪むシーンや引き寄せられる箱がコアのエネルギーを強く見せて大爆発を予感させる一方で、それをすぐに爆発させずに小さな火花にサイズを合わせている点を「良いアイデアです」と評価。さらに、それが次のフレームの爆発を「より強力にしています」と解説する。また、独特の色彩による特殊なエネルギーが「重力圧縮のように炸裂している」と感じられることから、「伝えたいテーマが理解できます」とコメントした。

    【受賞者コメント】
    「今回のエフェクトは、特にタイミングを工夫することで迫力のあるものに仕上げることができました。“爆発”というテーマが漠然としていて、どのような方向にもっていくかで最初は少し悩みましたが、最終的にはこの“吸収・爆発”のダイナミックさに行き着き、納得のいく作品になりました。今回の受賞はとても嬉しいですが、お互いに切磋琢磨する機会としても本当に楽しめましたし、決められた期間内に洗練された作品を作り上げるためのモチベーションになりました。このコンテストは、リアルタイムVFXの分野での露出を増やし、新人がコミュニティに参加するきっかけにもなるとても良いイベントだと思うので、今後の開催も期待しています」

    一般部門・Explosionセクション「BRONZE AWARD」

    ●『Sakura blossom explosion』(Yousuke0527、日本、202ポイント)

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    一般部門・ExplosionセクションのBRONZE AWARDは、Yousuke0527氏の「Sakura blossom explosion」が受賞した。この作品に対してUnity Technologies Japanの大下岳志氏は、桜の開花を爆発に見立てた美しさに着目しつつ「その表現を支える確かな技術と丁寧な仕事が本当に素晴らしい」とコメント。木の幹にまとわりつきながら進む軌跡の滑らかな動きや桜のエフェクトのリズム感も「何回も見たくなる気持ちよさがある」と評価した。さらに、その後に続く2D的な表現まで加わった豪華なクライマックスもにも注目し、「まさに生命力の爆発という印象で、見る人を楽しませてくれる素晴らしい作品でした」と語った。

    WWVFX運営委員の下澤章吾氏も、テーマに対して桜が舞う光景を爆発に見立てるアイデアを高く評価する。さらに、徐々に視点を広げていくダイナミックなカメラワークや、畳みかけるように花を咲かせて画面にインフレーションを起こしていくタイミングの良さにも着目し、「時間をかけて丁寧に作成したはず」と指摘。1つ1つの構成要素はシンプルかもしれないが、適切なタイミングとアニメーション演出の積み重ねが、最終的に「とても華やかで、大きな動きを感じる作品となりました」と総括した。

    【受賞者コメント】
    「この度は、情熱や工夫に満ちた映えある作品群の中から、受賞を頂くことができて光栄の限りです。日々進化するリアルタイムVFXの環境の中で、これからも業界の皆と切磋琢磨して、VFXを楽しんで制作することを続けていけたらなと思います」

    学生部門・Explosionセクション「SILVER AWARD」

    ●『Eye Vortex』(mim、フランス、179ポイント)

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    学生部門・ExplosionセクションのSILVER AWARDは、mim氏の「Eye Vortex」が受賞した。この作品に対してGame for ITの後藤誠氏は、全体の1つ1つが非常に丁寧に作られていることに感銘を受けたことに加えて、その作品レベルの高さを指摘。細かな動きや表現をもっと突き詰めることで「さらにクオリティが上がると感じさせてくれる点が、この作品の特徴であり素晴らしさです」と、逆説的に評価した。さらに、レベルアップの方法として「リアルな光や実際の映画をコマ送りで研究すると良い」とアドバイスし、今後の成長に期待を寄せた。

    Unity Technologies Japanの大下岳志氏は、全体の完成度やクオリティの高さに加えて、「見どころが多いという点が印象的でした」と総括。さらに、「爆発」がテーマでありながら、通常とは逆の展開を爆発と感じられるように様々な工夫を施しており、「とても挑戦的な作品に感じました」と評価した。一方で改善点として、前半の裂け目に吸い込まれていくエフェクトの動きが「コミカルな印象を受ける」と指摘。それが世界観を狭めていると感じたことから、その部分がよりスマートになれば「多彩なテイストに合わせやすくなります」とアドバイスした。

    【受賞者コメント】
    「これまでは外側に広がっていく爆発エフェクトを制作していましたが、今回は常に内側に収縮していくエフェクトだったので、最初は目の形をしたブラックホールの動きを出すのに苦労しました。しかし、制作の過程でテンポや色、カメラなどの難題を克服できたので、最終的には満足のいくエフェクトを制作できました。今後、もっと多くのエフェクトを制作し、いずれはVFXの分野で働きたいと思っています。また、WWVFX CONTESTはVFXアーティストにとって良い挑戦の場ですので、より多くの方の参加を期待しています」

    一般部門・Explosionセクション「SILVER AWARD」

    ●『CODE EXPROSION』(武0武【ブレイブ】、日本、203ポイント)

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    一般部門・ExplosionセクションのSILVER AWARDは、武0武氏の「CODE EXPROSION」が受賞した。この作品に対してSQUARE ENIXの鈴木光氏は、気持ちの良いテンポの演出で作られていたと感じたことから「そういった部分はアート的な面で評価しました」とコメント。さらにテクニカルな面では、シェーダ処理での削り表現などで「フチだけを光らせるなどの小技が効いており、そこが作品全体の品質向上につながっています」と解説する。また、見せ方のテクニックに「職人の技が見える」や、終盤のテンポ感などは「初心者の参考になる」といった感じで注目ポイントを挙げたほか、全体の発想として「オリジナリティを感じ、とても印象に残る作品でした」と総括した。

    NeoBards Entertainmentのライアン・ズォン氏はまず、個々のパーツだけでなく「作品全体がSF的な世界観になっており、形状のデザインに工夫が凝らされています」と指摘。さらに、絶妙に設計されたタイミングで各段階の勢いが徐々に増していき、そして最後の爆発へと至るという流れを「ドラマチックで期待感を持たせる良いアレンジです」と評価する。「形状のデザイン」「クリエイティブなドラマ」「素早い展開」のいずれもが優れており、「魅力的なエフェクトに仕上がっています」と語った。

    【受賞者コメント】
    「今回、初めて尺が長めの15秒で作品を制作してみました。しかし、やりたいことを詰め込むとすぐに15秒に到達してしまい、15秒以内に収めることに意外と苦労しました。ただ、結果的には、テンポが良い感じのエフェクトを制作出来たのでよかったです。今後も、質の高いエフェクトを作成できるように精進していきます」

    「GOLD AWARD」

    ●『Colorful Smoke Bomb!』(木下裕也、日本、207ポイント)

    ハイクオリティな作品が集まるなか、栄えあるGOLD AWARDを勝ち取ったのは、木下裕也氏の作品「Colorful Smoke Bomb!」。学生部門のExplosionセクションに応募された作品ながら、一般部門の作品をも上回る形での堂々たる受賞となった。

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    この作品に対してアグニ・フレアの稲葉剛士氏は、一見シンプルながらも「その中には様々な技術が詰め込まれています」と解説。リアルな品質とともに、独自のフルイドシミュレーションを実装している点も含めて「リアルタイムの表現をハイレベルで表現していると感じました」と高く評価する。また、学生でフルイドを独自に実装した点が「多くの審査員の注目を集めた」ことはもちろんだが、丁寧な作品作りや演出の発想力、キャラクターの面白い動きの表現などもポイントにつながったと補足。さらに、起承転結の要素を満たしていることなどからも「総合得点が高くなった」と分析した。

    Beyond-FXのキース・ゲレッテ氏はまず、お気に入りのポイントとして「非常にダイナミックで気持ちの良さを感じる全体の構成」を挙げた。また、注意をひく落下のアニメーションや爆発前の膨らみ、爆発自体も気持ちが良さなどに注目したほか、カメラが揺れる様子の出来栄えなども指摘して「すべてが満足のいく楽しい作品です」と評価した。さらに、その完成度の高さに感心しきりで、「素晴らしさが計算的に詰め込まれている」といった表現も付け加えた。

    【受賞者コメント】
    「優勝を目指して作品作りをしてきたとはいえ、本気で優勝できるとは思っていなかったので本当に嬉しいです。ゲーム業界やVFX業界で活躍する審査員から高い評価を得らえたこと、さらにこの賞を受賞できたことを大変光栄に感じています。現在はGPUの高性能化にともなって、表現の幅もどんどん広がっています。それだけに、これからのVFXの可能性も大きく広がっていると思います」

    書籍やWebで「フルイドの実装」を独学で習得、求められるのは「アート」と「エンジニアリング」

    後半ではまず、GOLD AWARDを受賞した木下氏のインタビューを紹介。作品のコンセプトや技術的なポイントを聞くとともに、技術習得の秘訣なども語ってもらった。

    木下裕也氏

    CGWORLD(以下、CGW):GOLD AWARDの受賞、おめでとうございます。いまの心境は?

    木下氏(以下、木下):ありがとうございます。受賞できたことをとても光栄に感じてます。ただ、いまはどちらかというと、喜びよりも驚きの方が勝っている感じでしょうか。本当にビックリしました。

    CGW:まず、学生部門のExplosionセクションに応募した作品で見事にGOLD AWARDを受賞した「Colorful Smoke Bomb!」と、学生部門のFreeセクションに応募したもう1つの作品である「Birth of the Sword」について教えてください。

    木下:「Colorful Smoke Bomb!」は、流体の美麗さを表現するためにまずは「煙」に着目し、そこから煙を目立たせる方法として「花火」にたどり着きました。ただ、白や黒のありきたりな煙では見栄えが良くないので、カラフルな色味を追加したという経緯があります。

    「Birth of the Sword」は、「ゲームのエフェクト=魔方陣」という発想からスタートし、煙を出しながら飛ぶ球体から聖剣が錬成されるというストーリーです。煙を目立たせるために、飛翔する球体が軌跡を描いているのがポイントです。また、製作期間はどちらも約3週間といったところです。

    CGW:どちらの作品も非常に魅力的ですが、1番の注目点はやはり「Colorful Smoke Bomb!」での「フルイドの実装」でしょうか。

    木下:そうですね。今回のフルイドは、リアルタイムで煙をシミュレーションする仕組みをUnity上で実現しました。手法としては、Unity内のVFX エディター「Visual Effect Graph(VFX Graph)」とGPGPUを実現する「Compute Shader」を利用し、HLSLというプログラミング言語でプログラミングコードを記述。これにより、自分のPCに搭載するミドルクラスのGPU「GeForce GTX 1660 SUPER」でも、リアルタイムの流体シミュレーションを実現できました。

    CGW:フルイドの実装はかなり高度な技術です。どうやって習得したのでしょうか。

    木下:まずは書籍やインターネット検索で「流体力学」について学ぶことから始めました。ただ、流体力学には例えば自動車などの空気抵抗を検証するリアルな分野のシミュレーションがあるのですが、自分の場合は完全にCGの流体力学のみにフォーカスし、BlenderやMaya、Houdiniなどで実装されている流体シミュレーションに近い事柄のみを学んでいった感じです。

    さらに、基本的なことを調べ尽くすと次は専門的な方向に進むことになるのですが、そうなると書籍やインターネットの検索だけではなかなか情報が得られなくなります。そこで最終的には、世界最大のCGカンファレンスである「SIGGRAPH」に投稿される論文などを調べる形で知識を深めました。

    CGW:相当の努力と根気で体得した印象ですね。知識の部分以外で苦労した点などはありましたか?

    木下:それはやはり、実装するためのプログラミングコードを記述する部分でしょう。なぜなら、流体のコードはコード自体が長くなってしまうため、書籍やインターネットの検索ではすべてのコードを記載しているケースがほとんどなく、断片的な情報しか得られなかったからです。そういった背景があったからこそ、結局はSIGGRAPHの論文を見る必要が出てきたとも言えます。

    ちなみに今回の作品は、CG分野における流体シミュレーションの基礎を築いたと言われる1999年の論文「Stable Fluids」をベースとした独自の実装となっています。そのほか、2001年の「Visual Simulation of Smoke」や2010年の「Interactive Fluid-Particle Simulation using Translating Eulerian Grids」などの論文も参考にしました。

    CGW:フルイドの実装以外でこだわった点は?

    木下:流体シミュレーションは実現できればとても美しいのですが、それだけでは面白味に欠けます。そこで、作品に明確な「起承転結」を盛り込むことも意識しました。「Colorful Smoke Bomb!」では、冒頭で花火の缶が落ちてくるシーンをBlenderを使ったアニメーションで表現したほか、光の反射なども加えて見栄えを良くしています。さらに、煙の出方に強弱をつけたり、最後のオチとして爆発させたりするといった演出を加えることで、起承転結を表現しました。

    授賞式の様子

    CGW:見た目以上に、さまざまな技術やこだわりが詰め込まれていることがわかりました。一方で、VFXに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

    木下:元々、趣味でゲーム製作をやっていたのですが、ゲームのクオリティを上げるためには、VFXの技術はどうしても不可欠です。そこで、始めはゲームありきでVFXに手を出したという経緯があります。ただ、最近はむしろVFXの方が楽しくて、こっちにハマってしまった感じです。VFXは本当に奥が深くて、クオリティを上げようと思うとやるべきことが無限大のように増えていきます。そういった意味では、昨今のゲームには「本当に多彩な知識やテクニックが集約されている」と実感します。

    CGW:VFXを作りたくて始めたというよりは、より良いゲームを作りたいがためにVFXを始めたという感じですね。では、どうやったVFXの技術を磨いていったのでしょうか?

    木下:こちらは意外と単純で、Unityの公式YouTubeチャンネルがあるので、それを主に参考にしました。そのほか、わからないところがあればインターネットで調べるというのが基本で、それ以外は特にやっていません。

    CGW:それなら、誰でも簡単にできそうですね。それなら、VFXの学びで重要な要素などはありますか?

    木下:これは結果論かもしれませんが、自分の感覚としては、VFXには「アート」と「エンジニアリング」という2つの要素が求められるのではないかと感じています。というのも、VFXではアートとしての「美しさ」が重要となるのはもちろんですが、その一方でモデリングやアニメーションなどよりも「技術的な知識」が問われる側面も強いと感じているからです。

    また、VFXの場合は表現に対する「センス」も重要でしょう。例えば、あるVFXが理論的あるいは数式的に正しい表現であっても、見た目に違和感があっては意味がありません。「自然かどうか」や「気持ちいいか」という部分は、やはりセンスに依存してくると思うわけです。ただ、センスというのは言語化が難しく、それを磨くのも簡単ではありません。自分としては、試行錯誤していくなかで身に付けていくしかないのかなと思っています。

    CGW:最後に、これからVFXを始めようと思っている人にメッセージをお願いします。

    木下:まずは、UnityやEpic Gamesなどのメーカーが公式で公開しているチュートリアル動画をチェックし、そこから自分がやりたい表現にトライしていくのが良いでしょう。いまの時代はインターネットで検索すれば何らかの答えは必ず出てきてくれるので、安心して始めて欲しいと思います。逆に、もし知りたい情報がインターネットでなかなか見つからなくなったら、それは自分の技術がそれなりの域に達してきたという証拠かもしれません。そうなった場合は、本腰を入れて論文にも目を通してみてください(笑)。

    VFXに特化した唯一無二のイベントを開催、プロに引けを取らない学生の技術力に驚き

    続けて、今回のコンテストを主催したアグニ・フレア 代表取締役の稲葉剛士にもインタビューを実施。コンテスト全体を振り返ってもらうとともに、今回の成果や今後の展望などを聞いた。

    アグニ・フレア 代表取締役 稲葉剛士氏

    CGWORLD(以下、CGW):改めて、コンテストの総括をお願いします。

    稲葉剛士氏(以下、稲葉):今回は準備の段階も含め、すべてが初めての経験で1からの立ち上げでした。そういった点を考慮しても、盛大かつ無事にイベントを開催できたことは本当に良かったと感じています。

    CGW:今回のコンテストの趣旨として、VFXにフォーカスした理由は何だったのでしょか?

    稲葉:私自身、長年にわたってVFXアーティストとしての道を歩んできましたが、VFXに携わる人材はまだまだ少なく、VFXアーティストを目指す学生も決して多くはありません。そういった現状だからこそ、VFXにおける優秀な人材の発掘は重要なポイントですし、VFXの面白さや楽しさをもっと広く伝えたいという思いがありました。

    また、「グローバル」という点にもこだわったことも重要なポイントです。ゲームのクリエイターは世界中にたくさんいるので、そういった人たちも巻き込んだコンテストを開催できれば、唯一無二のイベントになるのではないかと考えたわけです。幸いなことに、今回は応募件数が74点、10の国と地域の人にご参加を頂けました。第1回目ながら、その成果は十分に出たと実感しています。

    CGW:バラエティーに富んだ作品が世界から届きましたが、応募作品を見てどのような印象を受けましたか?

    稲葉:「VFXアーティストの人口は少ない」と言われながらも、どの作品も非常にレベルが高いと感じました。しかも、グランプリを獲得した木下さんを筆頭に、学生の作品のレベルがプロにも引けを取らなかったことが1番の驚きでした。優秀な人材の発掘という意味でも、非常に意義あるコンテストになったと感じています。

    CGW:第1回目から大成功のコンテストだったというところですね。では最後に、今後のコンテストの展望などをお聞かせください。

    稲葉:基本的なコンセプトや趣旨は、今後も変わらないと思います。ただ、世界にはVFXのスキルがあっても、コンテストに参加できていない人がまだまだ多くいるはずです。だからこそ、我々がコンテストを開催することでVFXの楽しさや面白さをしっかりと伝えていき、1人でも多くの人が参加する気持ちになるように努めていきたいと思っています。本コンテストは、これからも継続的な開催を計画しています。このコンテストがVFXアーティストたちの挑戦の機会になることそしてそれがVFX、さらにはゲームや映像コンテンツの発展にまで寄与できれば幸いです。

    授賞式の様子

    TEXT_近藤寿成(スプール)
    PHOTO_弘田 充

    INFORMATION

    WWVFX CONTEST FOR GAMES 2021

    ゲームや映画などで良く見られる映像技術の1つ「VFX(Visual Effects)」にフォーカスし、「VFX業界全体を盛り上げていきたい」という思いで企画されたアグニ・フレア主催のリアルタイムVFXコンテスト。VFX技術の向上を促すとともにその楽しさを広め、VFXアーティストのスターを発掘することなどを目指す

    アグニ・フレア(「WWVFX CONTEST FOR GAMES 2021」主催)

    ゲームエフェクトをメインとするデザイン会社。ゲームのリアルタイムエフェクトを中心に、プロジェクションマッピングなどを含む3D・映像の制作を手掛ける。

    https://www.agni-flare.com/jp/

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