『プリキュア』TVシリーズ恒例のCGによるダンスのエンディング(以下、ED)は、2月4日(日)に放送が始まったばかりの『わんだふるぷりきゅあ!』(以下、『わんぷり』)でも健在だ。CGWORLD vol.308(2024年4月号)では、シリーズを重ねる度に進化を続けてきた『プリキュア』EDの最新の舞台裏を全10ページにわたって紹介した。以降では、その一部を抜粋してお届けする。
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INFORMATION
『わんだふるぷりきゅあ!』
日曜あさ8時30分
ABCテレビ・テレビ朝日系列にて放送
www.toei-anim.co.jp/tv/precure
©ABC-A・東映アニメーション
STAFF
[演出]小さなお子さんにも愛される、明るくポップな画づくりを目指す
『わんぷり』EDには、ピンクの髪のキュアワンダフルと、金髪のキュアフレンディの2人が登場する。「こむぎ(キュアワンダフル)は犬飼いろは(キュアフレンディ)に飼われているパピヨン犬で、人間の姿になる力を得て、いろはと一緒にプリキュアとして活躍します。エグゼクティブプロデューサーの鷲尾(天氏)は、振付師のyurinasiaさんとの打ち合わせの席で "今回のプリキュアは、落語の『元犬』なんです" と語っていました。犬がプリキュアになって、人間の世界でどう生きていくのかを考える物語を、古典落語に例えたのだと思います」(CGプロデューサー・野島淳志氏)。
シリーズ21作目となる『わんぷり』のEDでは、意欲的に新しい試みを実践しており、yurinasia氏の起用もその一環だった。「われわれが新しい振付師さんを探していたときに、タイミング良く "プリキュアの振付したい" というXでのポストを見つけたんです。yurinasiaさんのことは以前から知っており、アイドルのMVから子ども向け番組まで幅広く手がける実力派だと感じていたので、喜んで連絡をとりました」(野島氏)。ED楽曲「FUN☆FUN☆わんだふるDAYS!」の振付を快諾したyurinasia氏は、自らキュアフレンディのダンスアクターも務めた。
もともとは東映アニメーション(以下、東アニ)のCGアニメーターだった滝 勇樹氏(現在はフリーランス)を演出に起用したことも、新しい試みのひとつと言える。「以前から演出志望だと聞いていたし、若手にチャンスを提供したかったので声をかけました。本作は滝さんの演出デビュー作となります」(野島氏)。滝氏は2023年初夏に実施された本作のモーションキャプチャに立ち合った後、絵コンテや、背景のビジュアルイメージを制作した。「最初の頃は自分が表現したい色や質感の説明に苦労したので、資料をいっぱい集めたんです。歴代の『プリキュア』EDの中からイメージに近い要素を抽出し、小さなお子さんにも愛される、明るくポップな画づくりを目指しました」(滝氏)。
Blenderによる背景のラフモデルを、絵コンテ制作に活用
お祭りのように賑やかな、背景のビジュアルイメージ
[キャラクターモデリング&リギング]可愛らしさを徹底追求した、キュアワンダフルの3Dモデル
前作の『ひろがるスカイ!プリキュア』EDに続き、東アニのCGディレクターは高橋友彦氏が務めた。「本作は例年よりも低年齢層をメインターゲットにしているので、小さなお子さんにも喜ばれる画づくりを常に意識しました。ただし演出に関しては滝さんのやりたいことを大事にして、自分はエラーの指摘や、色味のチェックなどの役割に回るよう心がけました」(高橋氏)。
背景モデリング、ルックデベロップメント(以下、ルックデヴ)、撮影以外の工程は東アニが担っており、キャラクターモデリングはスーパーバイザー(以下、SV)の坪川尚史氏を含む2人、リギングはSVの猪野高史氏を含む3人で進行した。「リグの完成後、アニメーションSVの鄭(彦康氏)から "フェイシャルリグを調整してほしい" という相談を受けたので、レイアウト作業と並行して猪野に更新を依頼しました。工程を遡って直すのは珍しいことですが、おかげで良い表情になったと思います」(高橋氏)。
デザイン画の見事な再現と、細やかなリギング
デザイン画の髪の再現と、シェーダの一新
アニメーターからの相談を受け、フェイシャルリグを更新
INFORMATION
月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.308(2024年4月号)
特集:アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年3月8日
TEXT&EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)
文字起こし_遠藤大礎/Hiroki Endo