人気ゲーム『モンスターストライク(以下、モンスト)』の新キャラクター・マサムネをフィーチャーした新作オリジナルアニメ『マサムネ - 使命の赤き刃 -(以下、マサムネ)』が、昨年末に前後編としてYouTubeにて公開(※)された。本作の制作を担当したのは『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(2022)や『ニンジャバットマン』(2018)などの作品で知られるYAMATOWORKSだ。

CGWORLD.jpでは、本作のメイキングを3回にわたって紹介していく。第1回は監督を務めたYAMATOWORKS代表・森田修平氏と、氏とともに絵コンテ・演出を担当した佐々木達也氏に、本作の企画から演出面の意図までじっくりと聞いた。

記事の目次

    ※:現在は前編・後編を1本にまとめた動画が公開中

    モンストアニメ『マサムネ - 使命の赤き刃 -』

    ストーリー:
    近未来、異国の属国となったとある国で生きる少女・マサムネ。
    古来より国を治めてきた王族である「ミカド」の護衛を代々行う一族の当主となった彼女は、その使命を果たすため、ミカドが参加する和平会談の場に向かっていた。だが、時を同じくして、異国の属国下より再び〝サムライの国〟を取り戻すために武力統治を目指すタカ派の新政党・ミツルギ党によって内乱が発生してしまう。
    ミツルギ党の党首イワクラの謀略によって、濡れ衣を着せられ窮地に陥るミカドだったが、間一髪、間に合ったマサムネと共にその場から逃走することに成功する。ミカドを狙うイワクラの追手から逃れるため、マサムネはミカドと共に、自身の故郷である秋水の里へと向かうのだった。

    アニメーション制作:YAMATOWORKS
    製作:MIXI

    www.monster-strike.com/promotion/shinshun2024/
    ©MIXI

    メイキング動画

    MAKING of MASAMUNE / モンストアニメ『マサムネ - 使命の赤き刃 -』

    YAMATOWORKSに宿るオリジナルアニメの開発力

    CGWORLD編集部(以下、CGW):まず、YAMATOWORKSが本作を手がけることになった経緯について教えてください。

    森田修平氏(以下、森田):YAMATOWORKSではこの作品の前に「モンストアニメ」の短編PVを3作品手がけておりまして、そこからのながれです。YAMATOWORKSは長編作品の制作を志向している会社なので短編の制作は基本的にお引き受けしないのですが、2020年にMIXIのプロデューサーさんからとても熱心にご依頼をいただきました。

    以前から弊社の作品をいろいろ見てくださっていて、「ぜひとも森田さんとお仕事をしたくて!」と大変リスペクトをしてくださりお話が進みました。そこからまずPVを2本制作し、それが公開されたのが2021年10月のことでした。

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    森田:その後、またMIXIから2022年の12月に、今度は前後編で40分程度の中編としてご依頼をいただいたのが、今回の『マサムネ』でした。

    2023年の1月に制作インして10月に納品と、短い期間での制作になりましたが、ちょうど別件でご一緒していた脚本家の伊藤栄之進さん、造形作家の竹谷隆之さんも参加してくれることになり、チームとして温まった状態で制作に入っていけました。

    森田修平 / Shuhei Morita
    株式会社YAMATOWORKS 代表
    『マサムネ - 使命の赤き刃 -』監督/前編 絵コンテ・演出

    CGW:『モンスト』のアニメということで、キャラクター設定は決まっていたと思いますが、その他の要素や映像のコンセプトはいかがでしたか?

    森田:マサムネ、ミカド、イワクラの3人に関してはキャラクター設定は決まっていたのですが、それ以外の部分に関してはYAMATOWORKSが主体的につくっていくことができました。

    原作がある作品をアニメ化する場合は「正解」がありますが、今回のようなつくりですと、キャラクターの性格から仕草まで、自分たちでつくり上げていく必要があります。演出家やアニメーターも交えて自分たちで答えをつくりにいくという作業はやはり面白いですね。

    社内全体で1本の作品に挑むことで会社として成長していくので、ちょっと『FREEDOM』(2006)の頃を思い出しました。

    ▲MIXIから提供されたデザイン画 ©MIXI

    佐々木達也氏(以下、佐々木):みんなでコミュニケーションを取りながら進められたのも良かったと思います。ほとんどの工程を社内で完結できましたし、それが成長のきっかけになったのかなと。

    僕自身も演出を担当するようになってからキャリアが浅いのですが、YAMATOWORKSはもともとオリジナルをつくれる力がある会社なので、僕みたいにあまり実績がない人間でも気負わずに参加できるのが良いところだなと、担当させてもらって改めて思いました。

    佐々木達也 / Tatsuya Sasaki
    株式会社YAMATOWORKS
    『マサムネ - 使命の赤き刃 -』後編 絵コンテ・演出

    CGW:佐々木さんは本作の後編部分の絵コンテ・演出を担当されたそうですが、どんなことを念頭に作業をされましたか?

    佐々木:クレジット上では僕の名前がありますが、演出陣で方向性を話し合いながらつくっていきました。美術設定も、ほぼ演出陣で描いています。そのあたりも含め、監督がそばにいて相談できる環境にあったので、悩むことはあまりありませんでした。

    強いて言えば、僕はもともと背景美術の制作会社にいて、10年ほど前にYAMATOWORKSに入ってからは、3Dアニメーションや撮影など、現場の仕事をひと通り経験させてもらってきたので、現場に不要な苦労をかけないことを意識しました。

    森田:制作上においてもそうですが、演出としても全てをやたらにハイカロリーにしても意味がないんです。今回で言えば、後編の終盤、最終決戦でマサムネがパルクールを駆使してフガクに迫っていくパート周りのカットはものすごいカロリーをかけてつくりましたが、それ以外の部分はなるべくシンプルにつくろうとしているのが上手いなと思いました。そういう苦労はスタッフも理解してくれるんですよ。

    CGW:前編は森田さんの絵コンテ・演出です。どのようなねらいでつくられましたか?

    森田:キャラクターの魅力を押し出していくことを意識しました。前編・後編と2本しかありませんから、1本観ただけで魅力があると思ってもらう必要があります。最初の1話でひとつのお話が完結するぐらいの勢いで、バトルを展開しながらも物語が進行していくようにつくりました。一般的なシリーズ作品であれば、鉄仮面に勝つところで終わるはずですが、そこからもうひと展開あり、キャラクターの魅力を届けていくことを意識しました。

    CGW:そのあたり脚本制作の段階から念頭に置いて仕込まれていったのでしょうか?

    森田:はい。この会議室に集まって2~3日で集中してつくり上げました。ホワイトボードに作劇の要素などを書きながら、久々に短い間でガッツリと。最近はオンラインで打ち合わせることが多いので、楽しかったですね。

    スクリプトドクターの属 結司(さっか ゆうじ)さんにも一緒に入っていただきました。スクリプトドクターというのはどんな仕事かというと、属さんいわく、山を登るのは森田や佐々木、脚本の伊藤さんであり、属さんはその様子をキャンプ地から双眼鏡で見て「そっちのルートはちょっと危険」とか「そのお話のながれだと、この尺に収まらないですよ」と、客観的に見て知らせてくれるという役割です。

    CGW:なるほど。脚本が仕上がってから調整するのではなく、つくるそばからアドバイスをしてくれるんですね。制作は前編の森田さん、後編の佐々木さんと同時進行でしたか?

    森田:はい。監督として責任を持って前編を僕が担当し、後編を佐々木に任せました。

    佐々木:脚本の時点である程度しっかりとした道筋が決まってはいたので、あまり迷うこともなく作業できました。

    森田:コンテや演出論などの話は普段からしているので、感覚は一致しているよね。

    佐々木:そうですね。YAMATOWORKSに10年ぐらいいると、会社としての方向性とか、森田さんがどういう演出を好むのか、感覚的にわかるようになるんです。その意味でも方向性を見失うことはありませんでしたね。

    この作品は事前にしっかりとキャラクターが決まっていたので、迷ったときは派手な方にしようみたいな話はしていましたよね。僕ら個人的には、どちらかというと映画とかでも地味なものの方が好みなんですけど(笑)。

    森田:そうそう(笑)。その意味で今回は派手な要素があらかじめ用意されていたので助かりましたね。あとは僕らが演出として突き詰めていく。選択肢が2つあって、普段の僕らが選ばなそうなものを選ぶとそれが正解という(笑)。

    佐々木:それは演出だけでなく設定や脚本を考えているときもありましたね。

    CGW:ケレン味がある派手なアクションが目立つ一方で、山登りでの丁寧な芝居などはお2人の地が出た演出だったりしたんですね。

    森田:そこは脚本家がちょうどそういう要素を入れたいタイミングで、僕と趣味が合致して入れることにしました。

    キャラクターを立たせ、自然に動かすために演出を「突き詰める」

    CGW:先ほど、森田さんの言葉で演出を「突き詰める」とありましたが、それは具体的にどういった意味でしょうか?

    森田:僕がよく話しているのは、例えばバトルであればそこにきちんと感情を込めて進行させる必要があるということです。ただ格好良いだけで進行するようなものでは意味がなく、この場面はこういう思いがあって、だからこういう行動に出たのだと、突き詰める。特に後編はバトル展開が続くので、佐々木にはそこを特に意識してもらいました。

    佐々木:後編は本当にバトルの連続で、しかもだんだんとマサムネが劣勢に追い込まれていく内容なので、最後にマサムネが真獣神化するところにもっていく方が、視聴者も気持ちが落ち込まずに観ていただけるかなと思ってつくっていきました。パルクールパートのながれはその前段をスムーズに行うためのものとして組み立てました。

    森田:あのパルクールパートの場面が、マサムネの気持ちが本当に転じたところなんですよね。真獣神化の前にすでに。

    佐々木:獣神化する前に、彼女の中でどういう気持ちの整理があったのか、その理屈となる場面を描いておかないと、単に一度負けてピンチに陥って真獣神化では視聴者が飲み込めないと思うんです。実はあのくだりは脚本上にはありませんでした。そもそも、女の子が大きな怪物と戦うという特殊なシチュエーションを成立させるにはどんな舞台を整えればいいかを考えつつ、さらに彼女が向かうべきゴールに向けて自然にもっていく方法を考える必要がありました。

    CGW:なるほど。

    ▲後編のクライマックス、マサムネが真獣神化する直前のシーン。追い詰められたマサムネの気持ちが前向きに転じ、敵の攻撃をかいくぐりながらパルクールや刀を使ったジップライン移動を駆使してフガクのもとへ向かう

    佐々木:森田から事前に言われたのは、脚本から多少変わっていてもコンテにすることで初めて見えてくることもあるので、入れ込むべきものは積極的に入れ込んで良いと。ただ、新しいドラマや感情がそこで生じると脚本レベルの改変が必要になってくるのでNGです。今回のパルクールパートの場合は脚本家さんが書いてくれたものから外れないし、上手くゴールにたどり着けるきっかけになるかなと、事前に相談しつつ進めました。

    森田:やっぱりキャラクターとして立ち始めると、たとえ脚本上でこの場所に行かせるとなっていても、動き出さないっていうことがあるんですよ。そこで無理に動かそうとすると違和感が出たり引っかかったりするんですよね。そういうノッキングが起きたような状態のときには、演出家が何かしらアイデアを入れなきゃいけない。そこで演出としてのアイデアが大切になります。

    佐々木:脚本を書いている段階で設定が全部あるわけではありませんしね。例えば部屋がどうなっているか、レイアウトひとつとっても変わってきます。後付けで設定が出てくることもあるので、整合性を取るためにコンテで演出を足していくこともあります。

    CGW:今回、美術設定を演出陣で描いたのはそういう理由でもあったんですね。

    佐々木:そうですね。自分たちで話し合う段階で大体構築されてはいたので、演出陣で共通認識が取れていたら美設を書かずにコンテ作業に入ってしまうこともありました。

    ▲本作の美術設定の一部

    CGW:続いて、本作では「3D演出」という肩書きのスタッフさんがいますが、これはどういった役割ですか?

    森田:これは3D的なフォローをする役割です。 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』でも立てたのですが、3Dの側面において、工程的に必要な素材の洗い出しや仕分け、アイデア出しなどをしていきます。

    なぜこの役職を置いたかと言うと、CGの仕事が広範囲にわたりすぎて、もはや従来のCGI監督という役割ではカバーしきれなくなったからです。昔は一部のセクションだけを見るからCGI監督という役割だったのですが、今は各セクションごとにスーパーバイザーが立っているので、すると何でもCGI監督がチェックすることになり、パンクしてしまいます。

    そこでこの周りの仕事を再定義し、3D演出という役職をつくりました。演出打ち合わせの席で、僕たち演出陣がアイデアを出して、それを3Dの側でどの部門にどのように頼むかを考え、制作進行とやりとりをしていきます。もちろん、僕らも考えて仮の振り分けをした上で精査していったりはしますが。

    佐々木:線引きがしっかりされていたので、僕たちもスムーズに仕事をすることができました。それに制作進行さんがいる環境でオリジナル作品をつくったのは初めてでしたね。

    森田:YAMATOWORKSが立ち上がってからは、そうですね。現在は30名ほどいますが、以前は10名程度だったので、アーティストそれぞれが自分たちでカットをつくり、自分たちで制作の管理もしていたんです。ただ、現在の規模感になったこともそうですし、劇場作品をつくれるような組織にしようということで、制作進行を置いて動き始めた。その1作目がこの作品でした。

    CGW:前編、後編それぞれの見どころをお互いにご紹介いただければと思います。

    佐々木:前編の見どころは、やっぱりキャラクターが立っているところですね。限られた数のキャラクターしか出ない中でストーリーをきちんと成立させることができているのは、やはりこの作品の特徴のひとつだと思います。

    その中にもキャラクターの浮き沈みがあって、変化もきっちりと描かれています。剣を折られた後の展開を現場では「弁慶モード」と呼んでいたのですが、ああいったビジュアル面がマサムネを上手く引き立たせる要素のひとつになっているかと。

    森田:「弁慶モード」はYAMATOWORKS側でつくったんだよね。ミカドやイワクラもそうですが、それぞれのキャラクターがどういうキャラクターで、関係性がどういうものなのか、40分という短い時間の中でしっかりと描くことができたと思います。

    佐々木:後編でも常にキャラクターを立たせるためにと考えていて、そこはアニメーターさんも気をつけてくれていたし、各工程でも様々な工夫をしてくれました。

    森田:自分も同じくですね。今回のキャラクターを立たせる目標があったので、短い時間の中で落差を大きく出そうと演出していきました。敵が魅力的でないとマサムネも魅力的に映らないので、最後のイワクラとの戦いでは、その気持ち悪さをしっかり出せた感じがします。

    ▲制作チーム内で「弁慶モード」と呼ばれた、自分の刀を折られた後、大量の刀を装備して敵の本拠地に乗り込むマサムネ
    ▲イワクラとの最終決戦

    CGW:最後に、今回の『マサムネ - 使命の赤き刃 -』はYAMATOWORKSにとってどんな作品になったと言えますか?

    森田:また続きをつくりたいと思える作品になりました。あとは今回、僕が一番驚いて手応えを覚えたのは、ルックデヴが急激に進化していたことでした。

    僕自身は、作画のアニメシリーズも監督したことがある人間ですから、作画もCGもツールのひとつにすぎないと捉えています。今回は手とか顔とか、繊細な演技も大切にするべきところを本当にしっかりと付けてくれて、そうしたツールの壁を超えて『マサムネ』という作品として成立させることができ、将来に繋がる作品が完成したと思っています。

    (2)アセット&ルックデヴ篇に続く>>

    TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota