Houdiniのリリースペースが早すぎる! 昨年末のHoudini 20.0のリリースもまだ記憶に新しいですが、早くも20.5がリリースです。その驚異的な開発スピードに置いていかれないように、本記事では20.5で実装された注目の新機能を全3回に分けて紹介していきます。(※機能や画像は開発中のものなので、リリース時とは異なる場合があります)
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CopernicusやMPM Solverなど、新機能が盛りだくさん!
Houdini 20.5でも、大幅な新機能追加や変更がなされています。まず注目したいのは、COPネットワークがリニューアルされた点です。新しいCOPはCopernicusと呼ばれ、画像編集のみならずSOPデータを読み込んで画像として編集できるなど、Houdiniらしい機能がたくさん備わっています。さらにSlapComp機能も実装され、Solarisと連携することで、レンダリング画像に対してCopernicusでの編集結果を反映することも可能になりました。
Solaris&Karma関連では、まずKarma XPUの性能が向上し、レンダリング時間が大幅に短縮されています。新規ノードとしては、リアルな惑星大気を再現できるKarma Sky Atomosphere LOP、質感調整が手軽に行えるQuick Surface Material LOP、レンズの歪みなどがリアルに再現できるレンズシェーダなどが実装されています。
シミュレーション関連では、新しくMPM Solverが実装され、土、泥、コンクリート、金属といった複数の材質のシミュレーションが可能になりました。さらにRBD Car Rigノードの実装により、クルマのリアルな挙動をシミュレーションで制御することもできるようになりました。
群衆関連では、Houdini Procedural:Crowd LOPの追加によって群衆の最適化が可能になり、メモリ効率などが大幅に向上しています。
APEX関連では、Animate Stateへのアニメーションレイヤー機能の追加、Ragdoll関連の改良などが行われています。
SOP関連では、シワを再現するWrinkle Deform SOPの追加、平面に膨らみをもたせるPlanar Inflate SOPなど、いくつもの新規ノードが追加されています。またSculpt SOPが一新されたのも見逃せないポイントです。
ほかにもRecipe機能の実装など、押さえておきたいポイントが満載です。以降では、それらの機能について詳しく紹介していきたいと思います。
Copernicus
COPネットワークが新しいコンセプトの下で生まれ変わりました! 新しいCOPネットワークはCopernicusと呼ばれ、従来のCOPよりもリアルタイム性や3Dとの親和性が高まったHoudiniらしい機能となっています。例えばSOPからジオメトリを直接Copernicusに読み込み、アトリビュートの値などを画像としてラスタライズすることができます。それらを合成してテクスチャを作成したり、レンダリング画像を加工したりするなど、様々な活用が可能となっています。テクスチャ作成の観点では、COP Preview Materialというノードを使うことで、Copernicusで作成したテクスチャを、そのままSOPデータに適用することができます。
ほかにも、Copernicusを活用した機能としてSlap Compが実装されました。これによりレンダリング結果に対して、Copernicusでの編集結果をそのまま反映することが可能になりました。例えばDenoise、Glow、カラコレなどの処理をレンダリング画像に直接反映できます。COPネットワークの編集も、リアルタイムに適用されます。USD Render ROPにもSlap Compの項目が追加されており、加工結果を出力ファイルにそのまま反映することが可能です。なお、これまでのCOPは互換性の観点からCOP Network - Oldとして残されます。各ノード単位でバージョン管理できるので、古いバージョンのファイルでも問題なく動くようになっています。
Solaris&Karma
Solaris&Karma関連では、まずKarma XPUのパフォーマンスの大幅な上昇が挙げられます。前バージョンと比較すると、NVIDIA Ada Lovelace 上でのレイトレーシングシェーダの実行速度が2〜3倍向上しているそうです。新規ノードとしては、新しくKarma Sky Atomosphere LOPが追加され、リアルな惑星大気の再現が可能になりました。日中の青空や、日の出と日没時に空が赤く染まる現象を、空気感も含めて見事に再現しています。前バージョンで実装されたCloudsやKarma Physical Skyと組み合わせることで、よりリアルな空間をつくることができます。ほかにもQuick Surface Material LOP、Quick Cloud Material LOPといったノードの実装によって、Material Library LOP階層に移動することなく、質感を手軽に調整できるようになっています。
またカメラのレンズシェーダに関しても、よりUSDフレンドリーなものが追加されています。Open CV Distortionのパラメータを設定することで、リアルなレンズの歪みを再現できる機能は特筆したいポイントです。Cameraノードから直接追加できるので、作成も簡単です。さらにStage Manager LOPが一新されたり、ライトのインスタンスが可能になったりといったアップデートが行われています。
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総ページ数:112
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TEXT_北川茂臣(No More Retake 3DCG屋さん向け Tips & Reference サイト)
EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)