Houdiniのリリースペースが早すぎる! 昨年末のHoudini 20.0のリリースもまだ記憶に新しいですが、早くも20.5がリリースです。その驚異的な開発スピードに置いていかれないように、本記事では20.5で実装された注目の新機能を全3回に分けて紹介していきます。(※機能や画像は開発中のものなので、リリース時とは異なる場合があります)

記事の目次
    ※本記事は月刊 『CGWORLD + digital video』vol.313(2024年9月号)掲載の「.5のバージョンアップとは思えない魅力的な新機能の数々 Houdini 20.5 新機能紹介」を再編集したものです。

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    シミュレーション

    シミュレーション関連では、新しくMPM Solverが追加されました。MPM SolverはFLIPを固体にまで拡張したもので、土、泥、コンクリート、金属、ゼリー、ゴムなど、様々な材質のシミュレーションが可能となっており、動的な破砕が行える点も特徴のひとつです。MPM SolverはSOPベースのワークフローにも対応しており、セットアップ例としてMPM Configure系SOPが多数用意されているのも嬉しいポイントです。

    ▲MPM Solverを用いたクルマの破砕シミュレーションの例
    ▲MPM Configure系SOPが多数追加された。MPM系ノードのネットワークの組み方の参考にできる
    ▲左から、Landslide、Building Collapse、Pancakes、Spining Tire

    RBD関連では、RBD Car Rigノードが追加されました。これはクルマの挙動をシミュレーションするためのノードで、RBD Solver SOPとセットで使用します。以前からContent Libraryで公開されていた機能が、正式に実装されたかたちになります。それに伴いRBD Car Follow Path SOPや、RBD Car Deform SOPといった関連サポートノードも実装され、カーブによる軌道のコントロールやタイヤの変形もできるようになっています。

    ▲RBD Car Rigはセットアップ用ノードで、RBD Solver SOPノードの上流で使用する。ホイールやステアリングといったジオメトリを指定すると、上図のようなガイドやプロキシジオメトリが作成される。その状態でRBD Solver SOPに接続することで、クルマの挙動をシミュレーションできる

    Vellum関連では、Vellum SolverにMinimalモードが追加されました。現時点ではGrainsとFluidのみへの追加ですが、リアルタイムに近い速度でのシミュレーションが可能となっています。それに伴いVDB Collider SOPも追加されており、Minimalモードでのコリジョンとして使用できます。またVellum Constraints SOPの設定に、新しくSurface StrutsというConstraint Typeが追加されています。これはシワを作成するためのConstraint Typeです。これを使用したノードとして、Wrinkle Deformer SOP、APEX Add Wrinkles SOPが追加されています。特にWrinkle Deformer SOPは気軽にシワを追加でき、処理も高速なので重宝しそうです。

    ▲Wrinkle Deformer SOPは、Restと変形後の形状を入力するとシワをつくってくれる

    群衆

    群衆関連では、Houdini Procedural:Crowd LOPが追加されています。近年のバージョンで実装され始めているHoudini Procedural系LOPのCrowd版になります。これを用いることで群衆の最適化を行うことができ、メモリ使用量の軽減とレンダリング時間の短縮が可能となります。Houdini Preview Procedurals LOPなど、複数のノードを組み合わせて使用します。

    ▲Houdini Procedural: Crowd LOPによる群衆。カメラから遠い場所や似たポーズのエージェントをインスタンスに置き換えることでメモリ使用量を軽減し、パフォーマンスを向上させることができる。上図は白エージェントがオリジナル(Default)、青エージェントがインスタンスに置換済み(Instance)、緑エージェントはインスタンスの基(Prototype)

    APEX

    APEX関連では、Animate Stateにアニメーションレイヤー機能が追加されました。元のアニメーションへの影響なしに、動きを編集できるようになっています。またRagdoll関連のワークフローが改良されており、テストジオメトリのElectraにRagdollの設定が追加され、機能の参照や検証ができるようになっています。

    ▲ElectraにRagdollのセットアップが追加され、Ragdoll機能を使用したポーズ作成も可能となった
    Houdini 20.5 新機能紹介 No.3:SOP関連と、そのほかのアップデート

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    TEXT_北川茂臣(No More Retake 3DCG屋さん向け Tips & Reference サイト)
    EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)