今年5月10日(金)に第1幕が公開された『コードギアス 奪還のロゼ』。6月7日(金)からは第2幕も公開中だ。今回は第1幕の内容をメインに、「Zi-アポロ」など3DCGで描かれたナイトメアフレームのモデリングからアニメーション付けまでを詳しく紹介する。
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複雑で大胆なバトルを可能にするKMFのセットアップ
本作では、アニメーション経験が豊富なメンバーがセットアップを担当した。これは実際に動かす立場から必要な動きを逆算してセットアップ時にリグを組み込んでいく方が合理的だという考えに基づいている。本作ではボディリグを組む際に、KMFが作中でとるポージングを参考としてもらい、それに基づいてリグを組んでいった。
KMFの特徴のひとつはランドスピナー(脚部に付属する走行移動用装置)を使っての地上高速移動。そのとき低姿勢を取ったり、滑るときに足を開かず揃えるなど、KMFらしく見せるためのポージングが重要だった。脚の部分はIKとFKの切り替えができるように構成されていたが、ロングショット以外は基本的にFKを使用した。
今回、KMFならではのセットアップとして難しかった点を笠原氏に尋ねると、後半に登場するKMFのパーツ数の多さと、後述するカムデンの足の複雑さを挙げたが、「めり込みの課題はあったものの、モデラー側で回転の起点となるピボットを残しておいてくれて、その位置にジョイントを当て込むスタイルがとれたので、その意味ではとても楽にできました」とのことだった。
アポロのセットアップ
アポロのボディリグ。腕や脚は身体の本体と独立して動くようにリグが組まれている。アニメーターによっては、それぞれを独立させて制御したい場合と、FK状態で使いたい場合があり、そのどちらにも対応することができる。ほかにも足首を伸ばしたり、画面上でパースを誇張するために手足を拡大できるようなリグも仕込まれている。
様々なアクションに対応する脚のセットアップ
アポロの脚部のセットアップ。
胸部とハーケンの可動
メカは肩周りが硬いままだとCGっぽさが目立ってしまう。そこで胸部とハーケンには丁寧なスキニングを施すことで、肩周りを柔らかくし、セルアニメらしく見えるようにつくられている。いかり肩をしたときにもモデルの破綻がなく動かせるしくみが施された。
肩の可動とアーマーの調整
KMF の肩と腕のパーツは連動しており、腕を上げたときには肩の装甲を常に下に向ける必要があった。その際、パーツごとの干渉を避けるために、腕の回転値に重みをかけてブレンドしたり、肩やアーマー部分の向きをカットバイで調整したりしている。
手の表情
表情がないメカの場合、手や指のポージングはキャラクター性を表す上で大事な要素となってくる。本作においても手の芝居は非常に重視されていた。手のポージングを簡略化するために、ドリブンキーに “握る”、“広げる”、“丸める”、といったポージングをあらかじめ設定。直接指のコントローラを触らずに、それらしい手の表情をつくることができるよう工夫が施された。実際の本編制作ではこれらをポーズのたたき台とした上で、コントローラを使って細かな表情付けが行われている。
カムデンのセットアップ
ネオ・ブリタニアの量産型KMF・カムデンはアポロとは異なり、脛の部分が後ろに反る鳥脚のつくりになっている。そのため構造は複雑で、IKをふくらはぎと足首に仕込んでいる。これにより、駐機状態のときに太ももとの干渉を防ぎつつ、足が順方向に動くような構造になっている。
(3)に続く。
CGWORLD 2024年6月号 vol.310
特集:ローポリから始める3DCG
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年5月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_海老原 朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada