今年5月10日(金)に第1幕が公開された『コードギアス 奪還のロゼ』。6月7日(金)からは第2幕も公開中だ。今回は第1幕の内容をメインに、「Zi-アポロ」など3DCGで描かれたナイトメアフレームのモデリングからアニメーション付けまでを詳しく紹介する。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 310(2024年6月号)からの転載となります。

    関連記事:新たに登場する個性的なナイトメアフレームのメイキングを解説! 『コードギアス 奪還のロゼ』〜(1)モデリング&ルックデヴ篇

    Information

    『コードギアス 奪還のロゼ』
    全4幕にて劇場上映開始、第1幕:2024年5月10日(金)~、第2幕:6月7日(金)~、第3幕:7月5日(金)~、最終幕:8月2日(金)~

    原作・企画:サンライズ/ストーリー、原案:大河内一楼、谷口悟朗/監督:大橋誉志光/シリーズ構成:木村 暢/キャラクターデザイン原案:CLAMP/製作:バンダイナムコフィルムワークス、コードギアス製作委員会
    geass.jp/roze
    ©SUNRISE/PROJECT G-ROZE
    Character Design ©2006-2024 CLAMP・ST

    複雑で大胆なバトルを可能にするKMFのセットアップ

    ▲ 前列、左より、ルックデヴ、レンダリングチーフ・七五三慶紀氏、CGI監督・篠田周二氏、CGレイアウトチーフ・佐々木研太郎氏、リギング、CGアニメーションチーフ・笠原季生氏、CG制作進行・田中雅規氏、CGプロデューサー・岡村慎治氏。

    ▲ 後列、左より、モデリングチーフ・今野 航氏、デジタルアーティスト・山口基尋氏、デジタルアーティスト・豊岡雅大氏、デジタルアーティスト・坂口虎太朗氏、デジタルアーティスト・堀内柊志氏、デジタルアーティスト・冨樫侑太氏(以上、武右ェ門)
    buemon.com

    本作では、アニメーション経験が豊富なメンバーがセットアップを担当した。これは実際に動かす立場から必要な動きを逆算してセットアップ時にリグを組み込んでいく方が合理的だという考えに基づいている。本作ではボディリグを組む際に、KMFが作中でとるポージングを参考としてもらい、それに基づいてリグを組んでいった。

    KMFの特徴のひとつはランドスピナー(脚部に付属する走行移動用装置)を使っての地上高速移動。そのとき低姿勢を取ったり、滑るときに足を開かず揃えるなど、KMFらしく見せるためのポージングが重要だった。脚の部分はIKとFKの切り替えができるように構成されていたが、ロングショット以外は基本的にFKを使用した。

    今回、KMFならではのセットアップとして難しかった点を笠原氏に尋ねると、後半に登場するKMFのパーツ数の多さと、後述するカムデンの足の複雑さを挙げたが、「めり込みの課題はあったものの、モデラー側で回転の起点となるピボットを残しておいてくれて、その位置にジョイントを当て込むスタイルがとれたので、その意味ではとても楽にできました」とのことだった。

    アポロのセットアップ

    アポロのボディリグ。腕や脚は身体の本体と独立して動くようにリグが組まれている。アニメーターによっては、それぞれを独立させて制御したい場合と、FK状態で使いたい場合があり、そのどちらにも対応することができる。ほかにも足首を伸ばしたり、画面上でパースを誇張するために手足を拡大できるようなリグも仕込まれている。

    様々なアクションに対応する脚のセットアップ

    アポロの脚部のセットアップ。

    • ▲ デフォルトの状態
    • ▲ FKでの動作。腿ごと脚を動かしたり、腿を固定して脛部分だけ動かすことができる
    • ▲ スピナーは膝にぴったり付いてくるが、コンストレイント先をlocal、body、worldなどに切り替えが可能
    • ▲ スピナーと地面の接地を容易にするために、スピナーだけをIKコントローラで扱うことも可能
    • ▲ 脚のIKでの動作。膝を曲げてスピナーを正面に向けた状態。KMFが前傾姿勢で走るときのポーズ
    • ▲ 支点を階層化し、複数個所設けられているため、スピナーを起点にした脚の動きなどで役立った

    胸部とハーケンの可動

    メカは肩周りが硬いままだとCGっぽさが目立ってしまう。そこで胸部とハーケンには丁寧なスキニングを施すことで、肩周りを柔らかくし、セルアニメらしく見えるようにつくられている。いかり肩をしたときにもモデルの破綻がなく動かせるしくみが施された。

    • ▲ デフォルトの状態
    • ▲ 胸部のスキニングにより、ハーケンが曲がった状態
    • ▲ 胸を張った状態。肩を柔らかく動かす都合上、スキニングされたメッシュを柔らかいものと硬いもの2種類を用意し、表示の切り替えをして対応している
    • ▲ ハーケンを射出するときはサブコントローラを使う。ワイヤーはこのときだけ必要になるため、別アセットとして用意し、各カットごとに読み込んで使用する

    肩の可動とアーマーの調整

    KMF の肩と腕のパーツは連動しており、腕を上げたときには肩の装甲を常に下に向ける必要があった。その際、パーツごとの干渉を避けるために、腕の回転値に重みをかけてブレンドしたり、肩やアーマー部分の向きをカットバイで調整したりしている。

    • ▲ 腕の回転値に重みをかけてブレンドしているため、肩パーツの動きは腕よりも少なくなっている
    • ▲ 腕を上げたときにめり込む部分はカットバイで肩アーマーの高さを調整する
    ▲ 腕を上げたときに肩アーマーが真上を向いてしまうと、メカとして格好が悪いため、向きを斜めに補正されている

    手の表情

    表情がないメカの場合、手や指のポージングはキャラクター性を表す上で大事な要素となってくる。本作においても手の芝居は非常に重視されていた。手のポージングを簡略化するために、ドリブンキーに “握る”、“広げる”、“丸める”、といったポージングをあらかじめ設定。直接指のコントローラを触らずに、それらしい手の表情をつくることができるよう工夫が施された。実際の本編制作ではこれらをポーズのたたき台とした上で、コントローラを使って細かな表情付けが行われている。

    • ▲ コントローラ非表示の状態
    • ▲ ドリブンキーを実装し、指を閉じた状態
    • ▲ Spreadアトリビュートを追加し、指を広げた状態
    • ▲ Curlアトリビュートを追加し、手をすぼめた状態
    ▲ コントローラを使うことでさらに指を自在に表現することができる

    カムデンのセットアップ

    ネオ・ブリタニアの量産型KMF・カムデンはアポロとは異なり、脛の部分が後ろに反る鳥脚のつくりになっている。そのため構造は複雑で、IKをふくらはぎと足首に仕込んでいる。これにより、駐機状態のときに太ももとの干渉を防ぎつつ、足が順方向に動くような構造になっている。

    ▲ カムデンのボディリグ
    • ▲ デフォルトの状態の脚
    • ▲ アポロと同様に、スピナーと地面の接地を容易にするために、スピナーだけをIKコントローラで扱うことも可能
    ▲ IKの中間地点からも制御できるように、細かいリグが仕込まれた。また、カットによってはめり込ませて対応している

    (3)に続く。

    CGWORLD 2024年6月号 vol.310

    特集:ローポリから始める3DCG
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2024年5月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume

    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

    EDIT_海老原 朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada