今年4月よりTV放送され、現在はYouTubeにて公開中のショートアニメ『ARNOLD & PUPPETS/アーノルドアンドパペッツ』。非対称対戦型マルチプレイゲーム『IdentityV 第五人格』(Android、iOS、ほか)が原作で、制作にあたったのは今年20周年を迎えたカナバングラフィックスだ。
ゲームの内容をいかにアニメにしていくのか、CGWORLD vol.315(2024年11月号)では、その制作について全12ページにわたって掲載したが、今回はその一部を抜粋・再編集してお届けする。
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デザイン画を忠実に再現し、タッチ感もテクスチャで表現
モデリングで最もこだわったのは、アートディレクターたちが描いたデザイン画を忠実に再現することだった。実際に作品を見てみると手描きのコンセプトアートがそのまま動いているようで、そのねらいは達成できている。
モデリングの工程は、まずデザイン画の特徴であるエッジの効いたメリハリのあるシルエットを再現することから始められた。テクスチャを外して、キャラクターのシルエットを確認しながらモデリングすることもあり、例えば、ジョーカーの義足部分にはスムーズに丸まった部分とカクッとしたところがあるが、そのメリハリのバランスをとることが求められた。デザイン図で描かれていないアングルはモデラーがながれを読み解き、補完してモデリングしてテクスチャを描いた。作業時間はメインキャラクターのモデリングとテクスチャワークで20日間ほどかけられている。
一連の作業の中でも特に難しかったのはテクスチャだったという。本作ではライティングをほとんどせずに、キャラクターモデルのテクスチャワークで明暗や陰影を描き込んでシェーディング的な表現を実現。衣装の中の同じ赤い素材の中でも、微妙に色相を変えてデザイン画と同じブラシで描いたようなタッチを丁寧に入れている。
テクスチャは慣れていないとベース色と影色の表現を混同して描いてしまうこともあるという。モデリングとテクスチャのスキルについて聞くと、「個人的にはモデリングもテクスチャも両方できて然るべきかと思います。テクスチャで陰影を表現するのはゲームCGのつくり方に近いですね」とモデリングディレクターの古部満敬氏。リアルな3DCGのコンテンツでは、ここまでテクスチャを描き込むことはないが、カナバングラフィックスのモデラーは比較的、今回のようなテイストの作品に慣れていて、美術的素養のあるスタッフも多いので対応できるという。
モデリングディレクター
古部 満敬氏
テクスチャワークはSubstance 3D PainterとPhotoshopを併用。はじめはSubstance 3D Painterのみの作業を試みたが、微妙な色合わせやはみ出し修正などはPhotoshopの方が取り回しが良く、Photoshopも並行して使うことになった。
背景もキャラクターと同様のアートタッチだが、平面のステージがスライドして広がったり、円形にまるまったり、ギミックが盛りだくさん。特に回転するところは演出やアートと相談しながら詳細なモデリングを詰めていった。また、アニメーターからも意見を聞き、動かしやすい方法を考えながら、部署間をまたいだ総力戦で背景がつくられていった。
テクスチャのタッチ感も再現したジョーカーのモデル
ベインのモデル
劇場の支配人・アーノルドのモデル
ギミックたっぷりの背景モデル
CGWORLD 2024年11月号 vol.315
特集:デジタルハリウッドの30年
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年10月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎデ)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDITOR_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada