2023年11月に公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。興行収入が約27億円を記録し、各地で応援上映も行われる大人気作だ。今回は東映アニメーションとモンスターズエッグを取材。全2回にわたり、3DCGによって効果的に表現された妖怪「狂骨」や「血桜」のメイキングをお届けする。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 309(2024年5月号)からの一部転載です。
関連記事:妖怪の「狂骨」やクライマックスに登場する「血桜」などを3DCGで表現! 映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(1)
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原作:水木しげる/監督:古賀 豪/脚本:吉野弘幸/キャラクターデザイン:谷田部透湖/制作:東映アニメーション/配給:東映
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©映画「⻤太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
寄りから引きまで様々なカットに対応した「血桜」
本作の終盤に登場し、ストーリー上、重要な役割を果たす「血桜」。監督の思い入れも強く、イメージのすり合わせとリテイクを数多くこなすことになったため、途中まではカット制作も担当していた入川氏が血桜のCGディレクション専任となって対応した。
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血桜は当初、美術ボードに合わせたイメージでつくっていったが、監督の要望が緻密なものだったので、ブラッシュアップを重ねるうちにデータが重くなっていった。そのためカメラの距離によってモデルを軽いものに変えることも検討されたが、カットごとに雰囲気が変わってしまうことが危惧されたので、結果としてひとつのモデルで全カット対応した。
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同じモデルを使っているとはいえ、最終的にはカットの見た目重視で、カットごとに花や枝の密度は細かく調整されている。また、桜の揺れの動きもシミュレーションでは違和感が出てしまうため、カットごとに手で付けている。監督からは「ここまできたから、もうひとがんばりしたらもっと良くなる」と励まされ、ギリギリまでチューニングを重ねた結果、クライマックスにふさわしい、密度の濃い見ごたえあるカットの連続に仕上げられた。
血桜の設定とイメージボード
血桜はストーリー上、重要な役割を担うたため、イメージのすり合わせとリテイクを数多くこなすことになった。当初は設定と美術ボードに寄せて制作を行い、全体のボリューム感や質感、花弁の密度などの指摘を受けつつ詰めていった。
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ボリューム感や質感、ディテールなどのイメージのすり合わせ
制作当初、ミドルやロングの距離感では好感触だったが、実際にカットに当てはめて使用した際には思ったような結果が出ないことが指摘された。美術らしいブラシのたたきのようなルックでまとめてしまうと、寄りカットの際に隙間の空いたまばらな花弁がスクリーン上でどうしても悪目立ちしてしまう。納得のいく見た目や演出をどう担保するのか、試行錯誤していくことになった。
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▲修正して赤みを増したもの。カメラが回り込んだときの桜のボリューム感を、正面から見たときと統一させている -
▲幹の部分。スカルプトでモデリングしている。乾き具合や根部分のディテール、雰囲気なども監督と相談して詰められた
取り回しや寄りのカットへの対応
枝と花びらはリアルと美術の間のバランスを見つけることが必要だった。そのため、ベースとなる血桜と寄り用の枝の素材、花弁素材を分けて制作。さらに、美術らしさの雰囲気と3DCGらしいディテールや豪華さを引き出すために花弁素材は「リアルな花弁の素材」と「ブラシたたき素材」を別で出力してまとめている。
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▲tyFlowの作業画面。花びらの密度などをコントロールするために、tyFlow内のBirthやScaleなどのパラメータを一斉に適用するツールを制作し、担当者ごとに調整に迷う個所を徹底して減らした。そのほか、選択したエミッタのON/OFFを一括でコントロールできるように調整し、一部だけのキャッシュ計算をしやすくした -
▲左画像、赤枠部分の拡大
素材を組み合わせた血桜の表現
データが重くなってしまった対策として、一部サーフェス内のパーティクル以外のみをレンダリングする(その逆も可)などの仕込みを行い、レンダリングの軽量化も図られた。これらの素材を組み合わせて血桜の表現が完成。
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寄りから引きまで多数のカットに対応するための花弁素材
血桜の花弁素材は大きく分けて7種類。これらをカットごとに細かく調整して血桜がつくられている。
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CGWORLD 2024年5月号 vol.309
特集:『グランブルーファンタジー リリンク』
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年4月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎデ)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada