今回は、現在YouTubeにて公開されている、スタジオカラーによる『シュガシュガルーン』連載20周年記念短編映像、「SUGAR SUGAR RUNE Les deux sorcières」のメイキングを全3回にわたり紹介する。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 330(2026年2月号)に一部、加筆修正を加えた転載となります。

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    Information

    『シュガシュガルーン』連載20周年記念短編映像「SUGAR SUGAR RUNE Les deux sorcières」
    原作:安野モヨコ/監督・脚本・画コンテ:松井祐亮/プロデューサー:川島正規/アニメーションプロデューサー:藤原滉平/アニメーション制作:スタジオカラー
    youtu.be/qidzapjAMVc?
    ⒸMoyoco Anno / khara

    オシャレでラグジュアリーな原作のイメージそのままのショコラとバニラ

    本作に登場するショコラとバニラは、漫画キャラクターとして非常にデフォルメされたスタイルをもつキャラクターであり、3Dモデルとして再現するには難易度が高い。作成されたモデルは原作者である安野氏の監修を受けながら、原作のイメージ通りのファッション性の高いキャラクターとして仕上げられている。多彩な髪型や衣装などに対しても安野氏と相談しながら制作が進められた。

    また、原作のイメージを再現するために、キャラクターモデル自体のクオリティだけではなく、カットごとのキャラクターの見せ方についても様々な工夫がされている。

    左より、キャラクターモデラー:冨田直人氏、CGアニメーションディレクター:柴野剛宏氏、CGアニメーションスーパーバイザー:森江康太氏(以上、MORIE Inc.)、監督・脚本・画コンテ:松井祐亮氏、ヴィジュアルディレクター:釣井省吾氏、アニメーションプロデューサー:藤原滉平氏、プロデューサー:川島正規氏(以上、スタジオカラー

    例えば、カットごとの表情やポージングを原作イメージに近づけるため、カット専用のフェイスモデルを用意したり、ポージングの自由度を優先してキャラクターリグはアニメーターが自由に動かせるように厳密な関節角度の制限は設定されていないという。

    また、コンポジットにおいても、煌びやかでラグジュアリーなルックを表現するためにMayaから多くのレンダーパスを出力。AEによるコンポジットのレイヤー構造も非常に難易度の高いものになっている。

    ショコラとバニラのモデル

    主人公の魔女、ショコラのモデル例。モデリングはMORIE Inc.の冨田氏を中心にMayaをメインツールとして進められている。目が非常に大きいデザインのキャラクターなので、角度ごとのバランスが難しいキャラクターだったという。キャラクターのルックは、背景と合わせながら調整されている。

    • ▲ショコラのモデルのワイヤーフレーム
    • ▲ショコラのシェーディング画像
    • ▲背景の画像と合わせた色味などのルックデヴ

    ショコラの親友でライバルのバニラ。画像は通称、試練服と呼ばれる衣装だが、この試練服以外に、2人ともさらに2パターンの衣装が用意されており、物語の進行に応じて衣装替えされている。

    • ▲バニラのモデルのワイヤーフレーム
    • ▲バニラのモデルのシェーディング画像
    • ▲背景に合わせたルックデヴ

    ショコラとバニラの儀礼服

    通称、儀礼服と呼ばれる、宮殿内のクイーン=キャンディの前で着用する衣装。2人が身に着けているアクセサリーに関しては、クリスチャン・ディオールの展覧会である「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」(2022~2023)に足を運んで研究するなど、女子が可愛いと感じられるデザインと高級感が追求された。

    • ▲ショコラのモデルのワイヤーフレーム
    • ▲シェーディング画像
    • ▲背景に合わせたルックデヴ

    同じくバニラの儀礼服。モコモコとした髪型の再現には苦心したという。

    • ▲バニラのワイヤーフレーム
    • ▲シェーディング画像
    • ▲背景に合わせたルックデヴ

    ショコラのモデルのディレクション

    ショコラのキャラクターモデルのディレクション例。髪型のモデリングは工数がかかるため、一気にモデリングしてしまうのではなく、ある程度モデルを作成したところで冨田氏がペイントでレタッチし、2Dで最終イメージを作成。その後、モデリングディレクターの香田一成氏によるフィードバックを受けている。

    • ▲ある程度、進んだショコラのモデルに最終的な髪型のイメージを冨田氏がレタッチした画像
    • ▲レタッチされた画像に対する香田氏のフィードバック。三つ編みの形状や髪先の状態など、細かく指示が書き込まれていることがわかる。またパーツの流用指示やパーツ分けなど効率化に繋がるフィードバックも示されている
    ▲フィードバックを基に修正された状態

    こだわり抜かれたショコラのレンダーパス

    ショコラのルックをコンポジットするためのレンダーパスの一覧。計21枚のレンダーパスが出力されている。まずシーンごとのベースカラー素材が用意され、さらにシーンごとのライン用のテクスチャが用意されている。ライン素材はAEで揺らぎの強さを調整するために顔パーツも分けて出力。

    また、マスク素材はCryptomatteベースだが、それだけでは足りない部分用に追加でマスクが出力されている。ライト素材もパーツごとに影の出方が異なるため、ライトも細かく分けて出力されていることがわかる。

    • ▲ノーマル色素材
    • ▲1号影素材
    • ▲ハイライトの1号影素材
    • ▲ハイライト素材
    • ▲顔ライン素材(目、口、眉)
    • ▲インライン素材
    • ▲アウトライン素材
    • ▲服ライン素材
    • ▲Cryptomatte素材
    • ▲グラデーションマスク素材
    • ▲顔マスク素材
    • ▲詳細マスク素材
    • ▲ハイライト用フレネル素材
    • ▲リライト用ノーマル素材
    • ▲首下影用ライト素材
    • ▲前髪用ライト素材
    • ▲全身用ライト素材
    • ▲髪ハイライト用ライト素材
    • ▲髪用ライト素材
    • ▲描き影用マスク素材
    ▲アナログ風質感テクスチャ

    マント裏のキラキラとした素材をはじめ、アナログ風の素材を重ねることでより自然なルックが表現されている。マントの裏にあるキラキラとしたエフェクトは、漫画で使用されるスクリーントーンの模様をベースに作成。マント裏が単色だと地味になってしまうことから、見映えを考慮してのアイデアだという。

    キャラクターのショットサイズに応じてエフェクトの模様サイズを調整する必要があるため、撮影時に貼り込んで調整。3Dモデルのテクスチャとしてマッピングしてしまうと平面的になってしまうため、あえて撮影時に貼り込み、奥行き感のあるエフェクトとして仕上げられている。

    • ▲全身用のアナログ風質感テクスチャ
    • ▲マント裏のキラキラ模様用のテクスチャ
    ▲コンプ済みのショコラの画像

    No.3に続く。

    CGWORLD 2026年2月号 vol.330

    特集:映像制作ニュースタンダード
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2026年1月9日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_大河原浩一(ビット プランクス)/ Hirokazu Okawara
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada