昨年の「コンセプトアーティスト&マットペインターの仕事展」に続くボーンデジタル主催の特別展「映像制作の仕事展 vol.2 ― 特殊メイクアップ × 背景 × キャラクター × ミニチュア造形 ―」が10月17日(火)から21日(土)まで5日間にわたり、ターナーギャラリー(東京都豊島区)で開催された。会場には気鋭のアーティストのCGアートや映画制作に使用されたミニチュア素材、立体造形、3Dプリンタで出力したサンプルなど、多彩な作品が展示された。本記事では、21日(土)に開催されたセミナーの概要や会場の模様をレポートする。
今回は、日々高度に発展していくCG作品に加え、それでもなお映像業界で求められる特殊メイクやミニチュア素材などアナログ手法の可能性を意識した展示となった。参加アーティストは元内義則氏、百武 朋氏、木村俊幸氏、帆足タケヒコ氏、北田栄二氏、鈴木卓矢氏、森田悠揮氏、岡田恵太氏、AKIHITO氏、田島光二氏。他にもModelingCafeより一丸敦生氏、斎藤聡介氏、江原 徹氏、吉田雄貴氏、松井優和氏、武田侑也氏、松本龍一氏らの作品も展示された。
TEXT_横小路祥仁(いちひ) / Yoshihito Yokokouji(ICHIHI)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura (CGWORLD)
PHOTO_横小路祥仁、西原紀雅 / Norimasa Nishihara(CGWORLD)、平谷早苗 / Sanae Hiraya
CG作品から立体造形、特殊メイク、ミニチュアまで多彩な展示の数々
会場は昨年同様1F、3F、4Fの3フロア。1Fには、VFX studio LOOPHOLEを主宰する木村氏の作品、AKIHITO氏や森田氏の塑像、岡田氏のCG作品等が展示された。
3Fでは帆足氏、鈴木氏のCG作品と、百武氏の特殊メイクの写真、元内氏のミニチュア作品を展示。元内氏が映画『STAND BY ME ドラえもん』のために制作した野比家の1/6ミニチュアはセッティングに3時間を要する非常に大きな作品で、多くの人が張りつくように覗き込んでいた。
4Fはセミナースペースとして会期中にAKIHITO氏のライブ彫刻デモなど9件のセミナーが行われたほか、formlabsの3Dプリンタ・Form2やSamsungのポータブルSSDなどの製品展示に充てられた。また、18日(水)に特別講演を行なったアートセンターカレッジの講師で書籍「スコット・ロバートソンのHow to Draw」の共著者でもあるトマス・バートリング氏のデザイン・制作プロセスや、北田氏ほかModelingCafeの若手アーティストの作品も展示された。
17日(火)に開催されたAKIHITO氏のライブ彫刻デモの様子
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書籍「スコット・ロバートソンのHow to Draw」より乗り物の描き方の解説展示
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ModelingCafe若手スタッフの展示作品群
セミナー「メカ&背景モデリングの魅力」/帆足タケヒコ氏、北田栄二氏
スーツアクター、ゲームプロデューサーなどを経て、緻密でハードなメカCGを生み出してきたstudio picapixels代表・帆足タケヒコ氏。そして、海外で活躍しハリウッド映画にも参加した後、背景モデリングで壮大な世界を構築してきたModelingCafe福岡支社代表・北田栄二氏。日本を代表するデジタルアーティストであり、互いをよく知る飲み仲間でもある2人が、メカモデリングと背景モデリングの魅力を語った。
帆足氏&北田氏の講演の様子
帆足氏は、バンプレストでアーケードゲームのプロデューサーを務めていたころ、大きなコンピュータの並んだCG制作班の作業現場がSF映画みたいで格好良いな、と思ったところからCGに興味をもったという。転属希望が通らなかったためあっさりと退社、スクウェア(現・スクウェア・エニックス)に入社しスクウェアUSA ホノルルスタジオに移り、そこから本格的にCGのキャリアをスタートさせた。『ファイナルファンタジー IX』のキャラクター制作を担当した後映画『ファイナルファンタジー』の制作チームに移籍、以来メカCG一辺倒だという。
目と口があって、結局同じになってしまうキャラクターやクリーチャーよりも、やはりメカをつくるほうが面白いと話す帆足氏。ことに日本の映像業界においては、メカのモデリングに関して"『アイアンマン』みたいな"、"『トランスフォーマー』みたいな"といったかたちの依頼が多く、その「みたいな」の部分を自由につくることができるところに面白さを感じているのだという。ハリウッド式の大規模な分業制が採られていない日本の制作事情ゆえの自由度とも言えるだろう。そうして自分のデザインしたメカが画面を動くのは楽しいと語る。
帆足タケヒコ氏(左)と北田栄二氏(右)
北田氏は、専門学校時代に出会った『ファイナルファンタジー Ⅶ』でCG、とりわけモデリングの虜になったという。すぐには希望は叶わなかったが、スクウェアに入社しキャリアを積んでいった。スクウェアUSAからEAジャパンスタジオに移っていた帆足氏と出会ったのもこのころだという。もともと仕事中毒気味だったが、子どもが生まれて一変、ワークライフバランスを自分で調整するために、裏付けとなる高いスキルを習得すべく海外修行を決意。オーストラリア、シンガポールで実績を積んできた。
北田氏にとって、背景モデリングの楽しさは「様々なものをつくることができる」ことにあるという。キャラクターだけでは画にならないが、背景なら西洋ファンタジー、和風、SFといった世界観を伝える画づくりができ、その過程で必要な建築、植物、文化といった多岐にわたる雑学を学ぶのもまた面白いとのこと。また、つくる素材が多いゆえに常にチームでの作業となり、アイデアを出し合いながら仲間と何かをつくり上げていくのも背景モデリングの醍醐味のひとつだと語る。
北田氏の展示作品
明日のアーティストを目指す若いひとへ、ということでいくつか質問が投げかけられた。普段の心がけという点では、両氏とも一致して「観察すること」の重要性が挙げられた。仲間と入った居酒屋でテーブルのテクスチャがいいなと思ったり、いまこのセミナー会場の天井を見て、四角い跡があるのはなぜか、と考えたりしたことを引き出しにしまっておく。そういった観察力、洞察力が重要なのだという。
帆足氏はプラモデル制作も愛好しており、メカの関節構造を肌で感じることでそれを作品に反映させ、説得力を与えているという。「メカの関節を守るために装甲はどう付くのか、メンテナンスではどこを開けるのか、整備兵の足場は? といった妄想を広げていくと、アニメの画もリアルに昇華できる」。北田氏も工場や整備場で実際の機械の駆動系をみるなど、現実にあるものから派生させていくという。「想像だけでは情報量が不足し、説得力が出ない」とのことだ。
いずれも海外で活躍してきた2人だが、海外といえば英語というハードルがある。この点でも「特に勉強することはなく、現場で仕事をするうちに覚えた」と一致した。ただ、現在は世界中にデジタルアーティストがいて、技術が同等であれば英語を喋れる方が選ばれるというケースも少なくなく、「突出した技術がない限りは英語力が必須というのは間違いない」という。
会場の3Dプリンタ展示コーナーでは、帆足氏の昔のメカCGモデルも立体化されており、氏は「今後は造形方面の仕事もしたい」と語った。ModelingCafeで若いスタッフを管理する立場でもある北田氏は、個人のアーティストとしてというより「いまだネガティブな、ブラックな印象の強いデジタルアーティストのイメージを変えたい」と、業界全体の向上を訴えていた。また、モデリングの段階で、使わない部分、映らない部分もつくり込み、細部のディテールにこだわりすぎるあまり、後に続く画づくりや仕上げの工程が割を食い、作品のクオリティに制約ができているのではないか、との問題提起もあった。海外と比較して工数が少ない日本の映像づくりでは、効率的な工程管理が必要となるだろう。
帆足氏のCGモデルをForm2で出力した造形物
AIに関する質問も挙がった。AIの発達はCGの世界にも影響しつつある。人ではなくAIが絵を描く時代が来るという人もいる。しかし、帆足氏は、「AIがどんなに頑張っても人間のイマジネーションの上には立てない。これまでゼロからつくっていたものに対して、土台や準備の部分をAIが担い、その上に人間がイマジネーションを構築していく、そういう作業が増えていくのではないか」と語る。北田氏は「テクノロジーで進歩している部分はもちろんあるが、どうしても最後の20~30%は人間の感覚が必要になる。そこのクリエイティビティ、センス、スピリチュアルな部分がない人は仕事がなくなる」と、人間にしかできない部分の必要性を強調した。
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ギャラリートーク「リアルとイマジネーション」/元内義則氏、木村俊幸氏
ギャラリートーク「リアルとイマジネーション」では、昨年に続いての参加となる、コンセプトアーティスト、マットアーティスト、美術家など多彩な活動をくり広げる木村俊幸氏と、映画『STAND BY ME ドラえもん』をはじめ、話題作に作品を提供してきた特殊造形作家の元内義則氏が、映像作品におけるアナログ技術の可能性、リアリティの表現について語った。
学生時代、映像会社でアルバイトをする中でマットペイントに触れ、そこから「変なことばかりやって」現在にいたる木村氏。様々な作品に関わってきた木村氏は、リアリティとは一義的に決まるものではなく、作品ごとに求められるリアリティは多様なものだと語る。高く評価されたオムニバス映画『ブルーハーツが聴こえる』内に登場した宇宙船のアートワークは、木村氏が捨てられようとしていたダンボールで制作したものだが、ダンボールの積層構造が実物のスペースシャトルのパネル構造を想起させ、SF世界を描き出すに充分なリアリティを備えた。
映画『ブルーハーツが聴こえる』のために制作されたダンボールの宇宙船
元内氏はSEとして働くかたわら趣味で模型等の制作を行なっていたが、白組の山崎 貴監督の新作にミニチュアスタッフとして応募、採用されたことがアーティストとしてのキャリアの開始点となった。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)の古き良き昭和の町並みは、実際の町並みをそのまま再現したわけではなく、「記憶にあるリアル、若い人が見ても懐かしいと感じるもの、いわば嘘を描いた」と元内氏は語る。作品世界と見る人の記憶、感性を抵抗なく結びつけるリアリティの追求は、それ自体、正解のない表現行為と言える。CGかミニチュアか、デジタルかアナログか、という使い分けにも定式があるわけではない。ただ、データではなくそれが実在するというミニチュアのリアリティは今後も生き続けるだろう。
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映画『GAMBA ガンバと仲間たち』(2015)コンセプトマケット
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野比家ミニチュアの廊下
CGがますます発達していけば実物であるミニチュアに限りなく近づいていき、ミニチュアの出番はなくなっていくように思える。ミニチュアをつくって撮影までしたにもかかわらず、結局CGに差し替えられるケースもあるという。しかし、なお実物、ミニチュアの出番は絶えない。新作映画『ブレードランナー2049』でもミニチュアが使われている。『STAND BY ME ドラえもん』ではキャラクターはCGだが、家や町にはミニチュアを採用しているのも、畳の目や窓の影などの情報量が多くなれば、CGだと重くなってその都度時間がかかってしまうのに対し、ミニチュアであれば、様々なカットやライティングが容易に試せるからだ。また、爆破シーンなどは、ミニチュアをカメラに映らない後ろからハンマーで叩き壊すが、こうして生まれる迫力は廃れないだろう。
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参加アーティスト4名によるギャラリートーク [[SplitPage]]
参加アーティスト4名によるギャラリートーク
最終日、展示会の締めとして、当日のセミナーに登場した、帆足タケヒコ氏、北田栄二氏、木村俊幸氏、元内義則氏4名によるギャラリートークが行われた。会場からの質問に各々回答するという形式で進められた。
左から木村俊幸氏、元内義則氏、北田栄二氏、帆足タケヒコ氏
まず、作品を展示した感想が聞かれた。こうした展示が初めてという帆足氏は「思ったより大勢来てくれて嬉しい」と語った。機会があればまた参加したいとも。北田氏は、「昔の作品ばかりになったので、次は新作を出したい」と話す一方で、会社の若いスタッフや同業者にも作品を出してもらって、いい機会になったと言う。元内氏は「過去にも作品を展示したことはあるが、その作品を使用した映像作品の展示の一環であり、アーティストとして名前が出たのは初めて」と言う。職業としてのアーティストをみてもらうという意味では意義があると続けた。木村氏は「今は権利関係が複雑になり、なかなか展示まで行き着かない状況があるが、こうして見せることができてよかった」とふり返った。
CGや映像業界にそれほど興味のない、事前知識のない人が通りがかりにふらっと入ってきて、作品そのものに感心していく。そういう一般のお客さんの声をアーティストが直に聞く機会が得られるのも展示会の意義である。帆足氏が「普段クライアントからはリテイクやダメ出しばかりされ、あとはOKといってもらうだけで、褒められることがない」とぼやくと、木村氏は「褒められるのはすごく大事」だと応じ、皆賛同していた。
続いてストレス解消法について。帆足氏は散歩、自転車、山登りなど外に出ること、北田氏はスタッフが男性ばかりなのもあり、下ネタを振って笑うことだという一方で、ボーっと1人で過ごす時間もストレス解消になると言う。元内氏が「キャラクターものを中断してハードな作品に取りかかるなど、案件を切り替えることが気分転換になる」と話すと、北田氏も「1ヶ月ほどで終わる仕事を次々にやっていくのは気分的に良いリズムだが、なかなかそうもいかない」と応じる。木村氏は、アーティストとして油絵など自分の作品をいじったり、家でギターを弾いたり、子どもと一緒に半日レゴで遊ぶなど、ギリギリまであえて何もしないという。
また、「一番の失敗は?」との質問に対し、元内氏と帆足氏は「失敗はない」と言い切った。「というより、忘れちゃうんじゃないか。嬉しいことはよく覚えているし、嫌なことでも大抵のことは仕事だから仕方がないと処理しているのか、あまり覚えていない」と帆足氏は補足した。こうしたポジティブ思考がアーティストには重要だと、他の3人も意見が一致していた。
好きな映画、ゲーム、マンガなどについての質問には、木村氏は『ブレードランナー』(1982)、『未来世紀ブラジル』(1985)、『エイリアン』(1979)といった名作SF映画を挙げた。それらに限らずたくさんある、とも。元内氏も木村氏と同様80年代SFが好きで、いまでもくり返し見てしまう作品もあるという。対して、帆足氏は「仕事でたくさん見てきたせいか、よくわからない」と個別の作品は挙げなかったが、新しい試みのある作品、バカっぽい作品が好きだと語る。北田氏は映画は「仕事として観てしまい、これが好きといったことはないが、ゲーム『モンスターハンター』が仕事に差し障るぐらい好きで、自分で禁じていたのに最近ついに新しいソフトを買ってしまった」と笑った。
続いて最近嬉しかったことを聞かれ、北田氏が娘さんの誕生を、木村氏は油絵と小説が特装本になったことを挙げた。帆足氏と元内氏は、参加した映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』の完成に安堵の色をみせた。特に元内氏は「ミニチュアをつくるたびに要求されるカットが増え、終わらないんじゃないかと思った」とふり返った。
「今後やりたいことは?」という質問に、帆足氏は「これまでやりたくないことから全力で逃げてきた逃げの人生、これからも全力で逃げる」と笑って回答。「全力で逃げる」が字義通りでないことは言うまでもないだろう。北田氏も「好きなことをやってきたが、業界全体が盛り上がるためにやれることをしていきたい」と語った。元内氏は「辞めない若いスタッフを探したい」という。つくりたいイメージを明確にもっている子ほど、アシスタント的な作業に耐えられず辞めてしまうのだそうだ。木村氏は「自身の子供心、中二病的な部分を意識し、これをやらないで死ねるか、ということを常に考えている」と言い、手法を限定せずに模型、オブジェ、油絵、すべて同じ地平の活動として、なんでもやっていきたいという。
最後にアーティストを目指す若い人たちへのメッセージとして、帆足氏は「今の子はみんな器用だが、やりたいことだけやっていればいい」と言う。「あまりツールに頼りすぎず、ある日CGを取り上げられても何かつくれるぐらいの余裕を持っておいた方がいい」とも。北田氏も「好きなことをやれる範囲で」と語った。木村氏は「評価されなかったり結果が出ないとそれを辞めてちがうジャンルや手法に移りがちだが、自分は何でもかんでもとっかえひっかえやってきて、それで自分が出来上がっているので、若いうちは削ったり整理したりせずいろんなことをやってもいいんじゃないか」と話し、そして元内氏はやはり「辞めない」ことを強調した。「続ければ仕事はあるし、各年代にポジションはできるはずだが、50代40代と若手の間に人がいないのが現状だ」という。また、「独自にアート作品をつくり続ける人もいるが、業界で通用するレベルかというと微妙で、商業ベースの制約の中でやることで技術も上がっていく」と語った。
アートを支えるテクノロジー展示
4Fではセミナーのほか、本展覧会の協賛企業であるSamsungのポータブルSSD T3/T5や、formlabsの3Dプリンタ、Form2も展示されていた。ポータブルSSDは、フラッシュメモリを搭載しているために、HDDに比較して小型で軽量、また衝撃にも強く、動作音もない。Samsung Portable SSD T3/T5は、80mmから100mmを超える寸法の多いSSD製品の中でも最大幅74mmというコンパクトさが目を引く。
SamsungのポータブルSSD T3/T5
外付けドライブの接続方式はSATAからNVMeへ移行しつつある。増大し続けるデータの転送速度はSATAではもはや限界に近い。各メーカーからNVMe対応のSSDは登場しているが、SamsungのT3/T5はベンチマークテストで突出した性能を示している。納品やプレゼンなどでテラバイト単位のデータをもち出す際にSSDを使用している企業はあるが、公称値ほどの速度が出ないケースがある。この場合、元データがHDDにあると本来の転送速度が出せないことがあり、PC本体と外付けドライブのディスクの組み合わせにより差が生じる。この点はこれからも研究対象となるだろう。いずれにせよ、SSDに置き換えることでデータ転送の時間は半分となり、転送に数時間単位を要するデータを扱う現場であれば、それだけ大きな余裕が作業時間に生じるのだ。
SSDのネックはHDDに比較して価格が高くなることだが、2020年頃にはHDと同等の単価まで下げられるとの予測もある。また、現時点でも、電気代も少なく堅牢性ゆえに交換の頻度も下がるSSDは、HDDよりランニングコストが安い。データセンターなど大量のディスクを配置する場合、軽量なSSDであれば、床の補強工事なども不要となる。このため、そうした企業ではすでにSSDへの転換が進んでいる。
formlabsのForm2は、光造形方式を採用した3Dプリンタだ。3Dプリンタの造形方式としては、溶解したプラスチック樹脂を数ミクロン単位で積み上げていく積層方式と、光硬化樹脂を紫外線レーザーなどで硬化させていく光造形方式などがある。積層方式では2~3万の価格帯のプリンタも登場しており、個人の入門向けとしては適しているが、出力した造形物の精度は高くは望めない。
Form2の出力による造形物の展示
光造形でも、硬化させる層に一度にレーザーを照射するDLP方式と、その層の中でさらにピンポイントで少しずつ硬化していくSLA方式がある。光造形型は積層方式よりもなめらかな出力品が得られるが、SLA方式はさらに精度の高いものが出力できる。Form2は卓上サイズで光造形SLA方式を採用し、使用できる硬化樹脂も多彩。値段こそ50万円オーバーではあるが、個人に手が届かないわけでもない。コンシューマ向けの高性能3Dプリンタとして確固たる地位にあると言っていいだろう。
formlabsの展示スペースには、CGアート作品とそれをForm2で出力した立体物が比較展示されていた。CG作品を画面の外に実体化する3Dプリンタはアーティストの表現手法を豊かにする存在であり、今後さらに活躍の場を広げていくだろう。
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「映像制作の仕事展 vol.2 ― 特殊メイクアップ × 背景 × キャラクター × ミニチュア造形 ―」
開催期間:2017年10月17日(火)~10月21日(土)
開催時間:11:00~19:00
会場:ターナーギャラリー
主催:ボーンデジタル
参加アーティスト:元内義則/百武朋/木村俊幸/帆足タケヒコ/北田栄二/鈴木卓矢/森田悠揮/岡田恵太(順不同)
海外アーティスト:AKIHITO/田島光二(順不同)
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