ゲーム内ムービーからフィギュアルックのPV制作へ。本作のキーパーソンが企画の誕生や今後の展望について語った。
上画像左から、あんべ よしろう氏/y_ambe、高木康次郎氏/マーベラス、斎藤瑞季氏/StudioGOONEYS

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 236(2018年4月号)からの転載となります

TEXT_野澤 慧
EDIT_斉藤美絵(CGWORLD)/ Mie Saito、山田桃子 / Momoko Yamada

『ORDINAL STRATA -オーディナル ストラータ』
ジャンル:ドラマチックファンタジーRPG
配信日:好評配信中
対応OS:iPhone 5s以上(iOS 9.0以上)/Android 4.3以上(OpenGL ES 3.0以上)
※一部端末を除く
価格:基本無料(一部アプリ内課金有り)
公式サイト:ordinal-strata.com
ダウンロードはこちら:iOSAndroid
© Fuji Games, Inc. / Marvelous Inc.

iOS/Androidで好評配信中のスマートフォン向けアプリ『ORDINAL STRATA -オーディナル ストラータ(以下、オデスト)』。ここでは、本作の中心メンバー3人による特別対談をお届けする。

──はじめに、みなさんの自己紹介をお願いします。

斎藤瑞季(以下、斎藤):StudioGOONEYSの代表取締役です。ウチのスタジオは主にCG映像を制作していますが、最近はゲームのイベントシーンを担当する機会も増えてきて、『オデスト』でもイベントシーンやPVを制作しました。

高木康次郎(以下、高木):マーベラスでプロデューサーをしています。『オデスト』では企画立案から担当しており、生みの親です(笑)。

あんべよしろう(以下、あんべ):イラストレーターをしています。『オデスト』のメインキャラクターのデザインを担当しました。

Character Design

あんべ氏によるキャラクターデザイン。流行の絵柄は意識しつつも、そこに囚われすぎず独自性が出るよう考えているという。動くことが前提にあるため、大きめの揺れものも描かれている


アスセナ。高木氏の理想を体現したというキャラクターで、他のキャラクターとは異なりデザイン先行でつくられた。王道の元気なヒロインではなく、ダークヒロインのような、邪道なヒロインをつくりたかったそうだ(高木氏談)

主人公(男)【画像左】と主人公(女)【画像右】のキャラクターデザイン。本作は途中でも主人公の性別を入れ替えることができる

高木:以前からスマホ向けアプリで王道のRPGをつくりたいと構想を練っていましたが、スマホゲームでシナリオは売りにならないと言われているのが現状です。そんな中、本作では「ドラマチックな物語展開」を売りにして、作中にフルボイス、フル3Dで動くキャラ劇を企画していたところ、同僚から斎藤さんを紹介してもらいました。

斎藤:2016年の6、7月頃でしたね。スマホゲームがストーリーでは売れないということは多くの人から言われていたので、すごく挑戦している人だなという印象を受けました。僕らはストーリー性のある映像を得意としているので、ぜひ力になれたらと。

あんべ:僕は、過去に高木さんが勤めていた会社に出向していたことがありまして、そのときは2、3回挨拶したくらいの関係でしたが、僕が描いた絵を高木さんが覚えていてくださって、『オデスト』の企画が起ち上がった2年半くらい前にお声がけいただきました。僕はキャラクターだけでなくシチュエーションや情景も含めて描くタイプのイラストレーターなので、キャラクターひとりひとりを大事につくっていきたいという『オデスト』の企画に合っていたんだと思います。

高木:最初に指名したのがあんべさんで、プロトタイプからつくっていただきました。

あんべ:シナリオ担当の方からテキストで細かな設定をいただき、ゼロからイラストに仕上げたので、とても愛着がありますね。

高木:タイムトラベルをベースにした独特の世界観の中で、StudioGOONEYSさんとあんべさんのつくったキャラクターが、活き活きと動く作品に仕上がりました。

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PVの企画はどのように誕生したのですか?

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PVの企画はどのように誕生したのですか?

斎藤:イベントシーンを見せていただいたときにまず目に留まったのがキャラクターで、その魅力に惹かれていきました。社内で映画やアニメの案件が多い中、他のプロジェクトチームのアニメーターからも『オデスト』に挑戦したいという声が上がっていましたね。そうした中で自主的にフィギュアルックの3Dモデルを起こして完成したビジュアルを高木さんにお見せしたところ、マーベラスさんへプレゼンする機会をつくっていただきました。大きく展開できたらいいですね、という話になったんですけど、そこからゲームの制作が忙しくなって、企画は止まってしまっていました。でも、その間も高木さんは諦めないでいてくれて......。

高木:東京ゲームショウが近づいた頃にプロモーションの担当者が替わり、そのタイミングでまた話を進めることができました。

斎藤:そこで二度目の機会をいただき、『オデスト』に参加していた社内スタッフがアニメーションを付けてくれて、せっかくだから見せてみようよと、今度は試作したムービーをお見せしました。

高木:社内とフジゲームスさんを交えた会議でそのムービーを見てもらい「PVをつくりませんか?」と話したら「すごく良いじゃん」となったんです。

斎藤:動かしたことによる効果がすごくあったんだなと感じましたね。このままやろうという話になって社内で盛り上がっていきました。実写合成のテストも社内で進めて......めっちゃ 楽しんでいるでしょ?(笑)

Visual


高木氏へのプレゼンのために制作され、高木氏のデスクトップも飾ったというStudioGOONEYS発案のビジュアル。StudioGOONEYS内で自発的に制作された。"仕事の合間に楽しくやれる範囲でつくる"ということで、メインキャラクター2体に絞られている。3Dのキャラクターがまるで現実世界にいるかのように実写背景と合成され、同じくStudioGOONEYSが制作を担当した『オデスト』のタイトルロゴと合わせた画に仕上げられた。マーベラス社内でも、実際にフィギュアをつくったのかと思われたという話も頷けるクオリティである。これがPV制作へとつながる、まさに最初の一歩となった

高木:PVの作成が決まって、今回の作品はドラマチックなお話を推してもらいたいので、カッコ良く見せてほしいとお願いしました。けっこうギリギリまでつくってもらいましたね。

斎藤:ゲーム紹介ムービーの作成自体は決まっていたので、それを頭において紹介ムービーにつながるようにPVをつくっていきました。PVでもゲーム内ムービーでもそうですけど、キャラクターのかわいさや日本のキャラクターデザインの魅力をグローバルに認めてもらいたいという想いをもっていたんです。ピクサー系のような目のサイズ感とか、おでこが広くて眉が動くとか......動かすための整合性がとれたキャラクターデザインは、どうしても同じ方向になっていきます。それはひとつの完成されたデザインかもしれないけど、僕らは日本のデザインを魅力的に動かしたいと挑戦しました。そう思わせてくれるキャラクターデザインですね。

あんべ:ありがたいです。喋らない主人公にもかわいい動きがついて、存在感が濃くなっていました(嬉)。

高木:ゲーム内でも主人公は好き勝手にカツサンドを食べたり、自由に動いたりしています。悩みは3Dで動かしているので、2Dのイラストを担当しているあんべさん泣かせになるのかなと......(笑)。

あんべ:3Dが前提だったので、シンプルなシルエットでも動いたときに見映えがすることを意識しました。だから、動かしてもらった方がありがたいな。PVは誰が観ても「おお!」となると思います。ゲームに接することがない人でも、それこそピクサーのアニメが好きな人でも楽しめるものになっていると感動しました。

高木:ゲームの枠だけでなく、こういうこともできるんだという可能性がPVの数秒の中で感じられるのがすごく良かったです。ゲーム内ムービーでも、見せ方の難しい縦画面にも関わらず、良いものをつくってくれました。とてもよく動くので「物語を見ていても楽しい」、「かわいい」との声をいただいていて、想いが現実のものになりました。

斎藤:このルックでフルCGアニメをやりたいです(笑)。

あんべ:短編でも東京ゲームショウのクオリティで見てみたいな(笑)。

高木:真面目に提案してみたいです。ゲームをつくって終わりではなくて、今後もいろいろと展開したいですね。

斎藤:それに日本はマーチャンダイジングの国だから、グッズもよく売れます。ほかにもCGWORLD.jpでのモデル配布(※下記参照)なんていう企画も実現できたら良いですね。

あんべ:ゲームを盛り上げるのは大前提で、そこから先にも広がっていくと面白いですね。

高木:ゲームとしても、その先の展開としても、これから育っていく作品なので、ぜひ『オデスト』を遊んでください!

以上、座談会の模様をお伝えした。3人は同世代ということもあり、『オデスト』というひとつのストーリーに生きる「仲間」のような関係だという。今回の座談会でも和気あいあいとした雰囲気の中、各々の苦労やこの先の展望を話す姿が印象的だった。

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    第1特集:『ORDINAL STRATA -オーディナル ストラータ』
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    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2018年3月10日