9月7日(金)に劇場版『フリクリ オルタナ』が公開され、28日(金)には『フリクリ プログレ』が公開される。ここでは『フリクリ プログレ』第5話で導入された、デジタル作画を用いた挑戦的な制作体制と表現について、SIGNAL.MDの中核スタッフに話を聞いた。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 242(2018年10月号)からの転載に加筆を加えたものとなります。

TEXT_永岡 聡(lunaworks
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

劇場版『フリクリ プログレ』作品情報
監督:荒井和人、海谷敏久、小川優樹、井端義秀、末澤慧、博史池畠/脚本:岩井秀人/キャラクター原案:貞本義行/CGディレクター:高柳 陽/撮影監督:田中宏侍/スーパーバイザー:鶴巻和哉/総監督:本広克行/アニメーション制作:Production I.G/配給:東宝映像事業部/製作:劇場版フリクリ製作委員会
flcl-anime.com
©2018 Production I.G / 東宝

  • 劇場版『フリクリ オルタナ』
    9月7日(金)公開
    劇場版『フリクリ プログレ』
    9月28日(金)公開

挑戦的とも言えるデジタル作画のワークフローを実践

『フリクリ』という作品は、2000~2001年にかけて全6巻のOVAでリリースされた、ガイナックス原作のオリジナルアニメーションである。随所に実験的とも言える予測のつかない演出が盛り込まれ、テンポの良いカット割りやダイナミックなアクションシーンは、大きなインパクトを与えた。そして本年9月、生みの親である鶴巻和哉氏をスーパーバイザーに迎え、Production I.G主導により『フリクリ オルタナ』、『フリクリ プログレ』という2本の新作劇場版が公開される。今回は『フリクリ プログレ』第5話のアニメーション制作を担当したSIGNAL.MD(以下、SMD)による、挑戦的なデジタル作画の取り組みを紹介しよう。

  • 左から、本多史典アニメーションプロデューサー、末澤 慧監督、寺田和生制作進行。以上、SIGNAL.MD
    www.signal-md.co.jp

第5話の話数監督を務めた末澤 慧氏は、絵コンテ・演出・作画監督・原画を担い、この実験的なデジタル作画のワークフローの立役者でもある。「映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』(2017)の経験を活かして、本作では紙を使用せず、デジタルでないと難しい表現に挑戦してみようと、オールデジタル作画に挑戦しています。その結果、各セクション間でまわしたものは、タイムシートとカット袋だけとなりました」(末澤氏)。「作画枚数は約7,500枚で、全カット分のタイムシートとカット袋はダンボール1箱の3分の2に収まっています。当初は新たな取り組みに迷いもありましたが、他の話数とはまるでちがうインパクトがある作品に仕上がったので、観た人にびっくりしてほしいですね」そう話すのは、制作進行を務めた寺田和生氏だ。SMDのアニメーションプロデューサー本多史典氏も「試験的なことや革新的なことにチャレンジして、会社としても宣伝となる良い作品に仕上がりました」と語る。デジタル作画の枠組みも大きく超えたワークフローを実践した本作の取り組みは、今後のアニメ制作の現場にも、作品同様インパクトを与えるだろう。

Topic01
デジタル作画だからこそできた、作画~仕上げ工程の垣根を越えた制作スタイル

従来の作画工程を大きく覆すワークフロー

本作でSMDが採ったワークフローは、今までの作画作業のながれを大きく覆す、原画・動画・仕上げをひとつのセクションとした体制であった。通常、原画は動画作業時に線を整えてトレスし、その動画を仕上げで彩色していく。本作ではデジタル作画で描かれた原画の画をそのまま動画とすることで、動画作業の原画トレスがなくなり、動画マンは中割り作業に集中でき、コスト的にも時間的にも無駄がなくなった。その結果、9割程度の動画を社内でまかない、残りも全て国内作画だけで仕上げたという。ラッシュ前にしっかり作画監督チェックを通すことで、ラッシュチェック時の作画リテイクもほぼ出なかったそうだ。さらに驚くことに、原画や動画時にアニメーターが担当カットの彩色をすることも多かったという。「従来であれば、原画は動画に渡ってクリンナップされ、仕上げが線を整えて彩色しますが、今回の方法であれば、原画で描かれたタイミングも画も色も動きも、そのままダイレクトに最終画に出せます。それにアニメーターが彩色まで行うことで、収入的にも潤いました。独自のワークフローシステムだったので、整理してみんなに伝えるのは大変でしたが、やりながら方法を見つけていったので、自主制作に近いやり方ですね」(末澤氏)。

作風について、通常の動画作業では、仕上げ時に彩色を容易に行えるよう、途切れた線は繋げて整える。しかし本作では、原画で繋がっていない線はそのまま繋げずに、勢いのある原画のニュアンスが残された。髪の線も塗りつぶせるように閉じるのではなく、サラサラと束が分かれて消えていくような線の表現をそのまま画面に出している。これは映画『かぐや姫の物語』(2013)で採用されたアニメーターの描いた線を活かす技法を、本作では若いアニメーターが中心にデジタル作画を用いて短時間でつくり上げたような手法だという。彩色もただ色をながし込むのではなく、筆で影やハイライトのタッチを直接描き入れることにより、線の繋がりを気にせずに手描き感のある画を動かすことに成功している。「SMDはTVPaint Animation(以下、TVP)をメインツールに使用しています。『フリクリ』という作品だからこそ、誰もやったことのない表現への挑戦も許してくれました。スタッフも面白がってくれ、この表現と作品との相性もすごく良かったと思います」(末澤氏)。

アニメーターが色を塗るために考えられたカラーモデル



  • 通常のカラーモデル



  • 第5話用のカラーモデル。アニメーターが彩色も担当するフローに対応するため、第5話専用のキャラクターのカラーモデルが用意された。「当初は通常の色で塗っていたのですが、白目もハイライトも白で、キャラクターの肌も白く、どの色を塗ったのか塗っていないかわからないミスが発生しました。派手な仮色で塗って、後から変更する方法もありますが、アニメーターは絵を描きながら色も見ているので、肌色が肌色でないと頭が混乱してしまいます。そこで色彩設計さんと色指定検査さんの協力の下、彩度や色相のコントラストを考えられた通常に近いカラーモデルをつくっていただき、作業がしやすくなりました」(末澤氏)。TVPのガイドラインでカラーモデルを表示し、その色をスポイトで拾って塗られている

デジタル化によって変わった作画素材の移動

オールデジタル作画で制作された本作。各セクション間でまわしたものはタイムシート【上】とカット袋【下】のみとなった

作画で彩色する挑戦的な作業スタイル

本作の作画作業のながれを紹介する

①基となる絵コンテ



  • ②レイアウト



  • ③レイアウトの作画監督修正



  • ④原画(線画)。初めから二値化した線で描くことで、そのまま動画として使用できる



  • ⑤背景が透けないようにベース色を塗る。アルファチャンネルとしても使用可能だ



  • ⑥原画の塗り



  • ⑦原画(線画)+原画の塗り



  • ⑧動画仕上げ。原画から通して描くことで、原画番号を動画番号に変え、眉毛を消すだけで仕上げ素材となった



  • ⑨通常色に置き換えた本番素材。影やハイライトがほしい場合、カラーモデルから色を拾ってさっと描き加えることで、容易に追加することができる

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Topic 2 特徴的なタッチと手描き感のある塗りの表現をデジタル作画で描く

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Topic 2
特徴的なタッチと手描き感のある塗りの表現をデジタル作画で描く

ワークフローや画のタッチを大きく改革したねらい

デジタル作画に欠かせないハードといえばタブレットだ。末澤氏はWacom Cintiq Pro 16を、他の原画スタッフはCintiq 13HDもしくは板タブレットを使用している。紙からデジタルに移ったスタッフは見えている場所に線が引ける液晶タブレットを好み、画を描きはじめた頃から板タブレットを使用している若いスタッフは慣れた板タブレットを使用しているようだ。板タブレットは手で画が隠れず、手元で描く線より長く画面に描けるメリットもある。作画サイズに関しては、作画用紙で使用するA4サイズをフルHDで表示する際に必要な解像度を求めた結果188dpiとなったという。レイアウトから仕上げまで解像度を統一することで、アンチエイリアスが途中で変わったり、点が消えたり滲んだりするミスが防がれている。

本作でワークフローや画のタッチを大きく改革したねらいについて聞いた。「はみ出たような線をそのまま使いたかったので、彩色で色のながし込みはしていません。ビュッと勢いで描いた線によって良く見えている画など、ちょっとしたニュアンスで良い味が出ているのに、その部分を削ると途端に画が成立しなくなってしまいます。これは紙で描いているときから感じていました。画には残しておいた方が良い雑味みたいなものがあるので、今回はそれを成立させようと思ったのです。はじめの頃は普通のアニメっぽい画でしたけど、レイアウト修正の段階でタッチなどを入れ、勢いのある画にしてもらいました。"第5話は大丈夫か?"と最初はすごく不安視されましたけど、各話監督制ということもあって、ある程度自分に任せいただきました。自分たちが観ていた『フリクリ』はとても自由で、後にも先にもない感じがあったので、その雰囲気を再現 できていると嬉しいですね」(末澤氏)。

これまで動画マンは画を割っている作業的な意識が強かったが、本作では単なる線割りでは進められず、原画のニュアンスを汲み取りながら、原画と原画の間の画を自ら描いている感覚が強く、終始モチベーションが高かったという。末澤氏が今まで現場で感じてきた想いや疑問の解決策を、本作で積極的に実行した結果、『フリクリ』という自由な作品の性質とデジタルツールのポテンシャルが相まって、見事に独自のワークフローと表現力を成立させたようだ。

『フリクリ』のために作成された独特なタッチのブラシ

TVPのカスタムブラシを使って第5話専用ブラシが作成され、各作業者に配布された。「アンチエイリアスを切り、二値化した楕円を描いて作成しました。回転をランダムにかけることでまっすぐな線にムラが出て、ガサガサした鉛筆と筆ペンの間のようなタッチが出ます。二値化された線なので、そのまま動画データとしても仕上げデータとしても成立します。作業しながらブラシの太さや筆圧に対するインクの出方を改良していきました」(末澤氏)



  • タッチの参考画像



  • ブラシ参考画像

TVPのブラシ設定

異なるツールによるラインの調整

本作ではTVP、CLIP STUDIO PAINT(以下、CSP)、Adobe Animate CCの3つのソフトが使われ、作業担当者が使い慣れたソフトが選択されている。ひとつの作品を異なるソフトで描いているため、TVPとCSPでは似たようなカスタムブラシを作成して線のニュアンスが統一された。しかしAnimateはカスタムブラシを作成できなかったため、線のちがいが出てしまっている。そこで撮影時に線を太らせ、タッチの印象を合わせる方法を採りつつ、セリフや劇中のテンションの変わり目などでAnimateのカットを使用することで、そのちがいすら演出として盛り込まれた。



  • CSPによる原画



  • 同・動画仕上げ

同・完成画



  • Animateによる原画



  • 同・動画仕上げ

同・完成画(線調整済)

アニメーターの作業のしやすさを考えてアレンジされた設定画

第5話は線が筆ペンのように太く力強い。また作画で彩色することも考慮し、ディテールを減らした第5話専用のキャラクター設定画が作成された

マスラオの通常のキャラクター設定画

同・第5話専用のキャラクター設定画。影の描き方、線の本数や太さが大きく異なっている。例えば二重線のラインは、線の間に色を塗るため、4本の線を引かなければならない。1本1本の線の間隔は狭く、綺麗に引くのには時間がかかる。しかし第5話専用のキャラクター設定画では、太い線を2本引くのみとすることで、作画にかかる時間や労力が削減された。「作業時間もなく、このデザインでなければ終わっていませんでした。撮影さんも含めて、やりながらこうしたら良いと掴んでいった感じです」(末澤氏)

引き画のクオリティと効率のバランスをとる



  • 線画のみの原画。線だけだとディテールが足りなく、周囲からも不安視されたカット。「最近はアニメにおける遠近の表現が難しいです。デザインが細かくなってきているので、引きのカットでは拡大作画で対応していますが、現実世界は遠くの人の表情はわかりません。近くに来て、やっと怒っているとか泣いているとかがわかります。そこで本作では、遠いカットは簡単に描いてディテールを省略しながら、誰がどこで何をやっているかがわかることを大事にして描きました。決められたサイズの中で描けるディテールを目指したのです」(末澤氏)



  • 彩色された原画

完成画。塗り終えて背景が入った画は、省略具合も線の太さとマッチして非常に良いバランスに仕上がっている

特徴的なタッチや塗りを徹底して貫く

仕上げ注意事項が書かれた指示書。第5話は原画を活かした作画になる方向性を明記し、線画修正や色トレス修正が不要であることなどが書かれている

修正指示書に使用した原画を仕上げた完成画。不要なゴミは消されているが、原画のニュアンスはそのまま残されている

シャワーの中の雲雀弄ヒドミは末澤氏がTVPのカスタムブラシで直接描いたものだ。髪の色も塗られた原画で、塗りと線の中間のような描き方となっている。「このカットは本当に早かったです。キャラクター自体は止メ1枚でしたが、レイアウトですでに色を付けていて、通常の作業工程を3つくらい飛ばして、いきなり仕上げが終わったようでした」(寺田氏)。強弱や途切れのある線、はみ出した色など、この話の特徴がよく出ている

別のカットの完成画。「影やハイライトは、綺麗な線ではなくタッチで描き、画に色気を足すことを意識しました。作画監督チェックでは、修正というより、描き足していくという感じが多かったです」(末澤氏)。繋がりすぎている線はわざと切ることもあったのだとか

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Topic 3 加速するデジタル制作~AI作画の最前線~

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Topic 3
加速するデジタル制作~AI作画の最前線~

AIを導入! 原画トレスと動画中割りの手応えとは?

前頁までは、本誌『CGWORLD vol.240』の掲載内容をご紹介してきたが、当時はまだ掲載できなかった取り組みがあったため、ここで追記しお伝えしたい。

作品に参加した動画スタッフには、TVPaint Animationアニメーター、デジタルアニメーターに加え、ドワンゴが開発した「中割りAI」と「原画トレスAI」の2名が参加していたという。なお原画トレスAIの開発には、アニメーターとSMDが協力している。

本作では、「このAIは、普通のアニメーションの処理に使うものとして開発しているので、『フリクリ』のような特徴的な作品では活躍できませんが、AIを試す話が出て、使えるカットを探してみました。まだAIのできることは少ないので、AIに合わせてお膳立てをして、サポートしてあげないといけません。今はまだ、助かる部分と余計にかかる手間を合わせたら、±0みたいな感じです。でも、だんだん人間がお膳立てしなくちゃいけないことが減って、彼ら(AI)ができることが増えていくと思います。今考えているのは、AIが原画トレスや中割りをして、ニュアンスが足りないところや明らかに失敗を直している部分を人間が修正する方法です。完全に任せるのは無理だと思いますが、このようなことができたら理想的なので、協力していけたら良いですね」と末澤氏は話す。

数年前から、中割りの自動生成技術は話題に上がっている。本作のようにAIを積極的に現場へ導入することで、ディープラーニングによる学習が進み、本格的な実用化も近い将来訪れるだろう。それと同時に、仕事がAIに取って代わられる危機感をもつ方もいるかもしれない。しかし、作品の完成に必要な、時間のかかるシンプルな作業をAIに任せられれば、よりクリエイティブを生み出す作業に限られた時間と人的リソースを活用できるようになる。これは業界にとって福音となるのではないだろうか。

姉弟・時季ヶ原 埋&写、誕生!

時季ヶ原姉弟初期画。AIは擬人化され、キャラクターとして確立されている。2名のAIにはそれぞれ名前が付けられた。原画トレスを担当する弟の「時季ヶ原 写(うつす)」(右)と中割りを担当する姉の「時季ヶ原 埋(うめる)」(左)だ

ベーシックスタイル(起動時)のデザイン画

埋&写の設定画
(キャラクターデザイン:謎のアニメ団)



  • 埋の全身設定画
    ©DWANGO Co., Ltd.



  • 埋の表情設定画
    ©DWANGO Co., Ltd.



  • 写の全身設定画
    ©DWANGO Co., Ltd.



  • 写の表情設定画。擬人化したこともあり「スタッフが愛でていました」とアニメーションプロデューサーの本多氏は話す
    ©DWANGO Co., Ltd.

原画トレス(写くん)

左から、原画・原画トレス・動画検査修正後の原画トレス

写を使用した原画トレスの事例を紹介しよう。最新版は進化して良くなっているそうだだが、当時はまだ作品の中でトレスした線をそのまま使用することはなかった。「AIは何回もやって学習していくので、目などのニュアンスが必要なところは1回やらせただけでは思った結果が得られませんでした。そこは手直しして使用しています」(末澤氏)。【左】は原画、【中】は写が描いた原画トレス、【右】は動画検査修正後の原画トレス。一見すると良いように見えるが、それぞれを比べてみると、【中・原画トレス】は線としては離れていてほしい部分が繋がっていたり、細部が潰れて省略されていたり、原画のニュアンスを拾い切れていない部分がある。またAIが描いた線は、通常やりとりしているデータとしてそのまま同じように使用できるのか聞いたところ、「AIが割った線はアンチエイリアスがかかるので、二値化する作業は制作進行が担当しました。まだ意外と手間がかかりますね」と寺田氏は当時をふり返る

地面のひび割れ(埋ちゃん)

埋が担当した事例の1つ目は、地面のひび割れカットである

原画

埋が担当した中割り(原画6~7の間の動画のみ)

動画検査修正後の本番素材(原画6~7の間の動画のみ)

本番カット。「まずは地面のひび割れの中割りを担当してもらいました。自分が原画を描き、AIがリニアのながれを見つけて割ってくれています。AIの中割りは線が出たり消えたりしていましたが、気持ち悪い感じにバキバキなってほしかったことと、ひび割れだったら大丈夫じゃないかと、そのままやらせてみました。計算を多少失敗してしまい、ちょっとガタッと変化する箇所もありますが、演出的には問題なかったです」(末澤氏)。途中、上手く原画と原画の真ん中を見つけられない箇所があり、そこは指示を出したわけではないが、結果的に「前ツメ」、「後ツメ」となったという。そこはご愛敬といったところだ。AIが割った動画は末澤氏に戻され、最終的に色が塗られ仕上げられていく

煙(埋ちゃん)

埋の事例2つ目は、最後のカットの後ろの煙だ

原画

埋が担当した中割り(原画4~5の間の動画のみ)

画検査修正後の本番素材(原画4~5の間の動画のみ)

本番カット。「若干変な動きをしている、ゆっくりと動く煙がAIによる動画です。後ろの位置でサイズが小さく、画面の主題は他の背景とキャラクターなので、失敗しても大丈夫だと思い、試しにやらせてみました。途中を見ると、割りやすい原画番号の部分だけ綺麗に割られていて、煙は謎のもやもやしたものが描かれていて、なかなか上手くいかなかったですね。それから2日くらい経つと、線がハッキリしてきてピントが合ってくるというか、線が割られて、最終的に7日くらいでできました。これ以上は改善が見込めないところまでやって、動画検査さんにまわし、少し直してもらっています。時動画検査さんが"この中割りは失敗しているけど、これ以上直すとこの子の良さがなくなってしまう"と言って可愛いがっていました。AIは、人間が割る動画とは全然ちがう割り方をします。それを人間が割るような動画に戻してしまうと、今回AIでやった意味がなくなってしまうので、失敗はしていますが、個性を残しています。不思議な感じでしたね」(末澤氏)



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    第1特集:UE4プロフェッショナルへの道
    第2特集:デジタルアーティスト×インタラクティブアート
    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2018年9月10日