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コンセプトアートの夜会ふたたび「CONCEPT ART NITE 02」レポート

コンセプトアートの夜会ふたたび「CONCEPT ART NITE 02」レポート

コンセプトアートをテーマにアーティストと観客が交流を深め、活況だった2017年の「CONCEPT ART NITE」。その第2回となるイベントが、11月27日(火)にWe Workオーシャンゲートみなとみらいで開催された。コンセプトアーティスト集団INEIが主催し、アーティストと観客がビールを片手に軽食をつまみながら語り合うビアバッシュスタイルで行われた同イベントには110名以上が参加。会場は熱気に包まれ、コワーキングスペースである同会場に集まる他業種のビジネスパーソンからも多くの注目を集めた。

今回のイベントには現場の最前線で活躍するクリエイター3名が登場。デジタルアーティストの森田悠揮氏、コンセプトアーティストの浪人氏、INEI代表の富安健一郎氏が、「ライトニングトーク(10分程度のプレゼンテーション)」を行い、様々な角度からコンセプトアート制作に役立つ話を展開。プレゼンテーションの後には質疑応答も活発に行われ、参加者にとって実りのある時間となった。ここではライトニングトークの内容を中心に、コンセプトアートの魅力が凝縮したイベントの様子をレポートする。

TEXT&PHOTO_水溜兼一 / Kenichi Mizutamari(Playce
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

会場の様子

ZBrushを使ったクリーチャー制作/森田悠揮氏

森田氏のプレゼンテーション画像


  • 森田悠揮氏

森田悠揮氏は、大学在学中からフリーランスとしてキャリアをスタートし、クリーチャーのスカルプターとして、TV、映画、ゲームに登場する生物のデザインなどのCG制作を中心に活動。さらにCMやミュージックビデオのディレクターも務め、最近は造形作家として自主制作にも力を入れている。

クリーチャーの制作において森田氏は、3Dで生物などを造形し、質感を付けてレンダリングをするCGワークを行っている。森田氏は造形の際にメインツールとしてZBrushを使っているが、コンセプトアーティストにも使用者は多い。トークではこのツールの機能や魅力について紹介。粘土を捏ねるような感覚で直感的に3Dモデリングができることが特徴で、覚えるべき操作が比較的少ないため、初心者でも扱いやすいと言う。生物のモデリングやキャラクターデザインに適していて、イマジネーションを自由に形にしていけることを強調した。

森田氏は、制作前にキャラクターのカギとなる質感などについては考えるが、他の要素は決め込まずに作品づくりを始めると言う。つくる過程を楽しみながらイメージを膨らませていくスタンスだ。参加者はスクリーンに映し出される作品を見ながら、森田氏の話に真剣に耳を傾けていた。

また、クリーチャー制作においてはディテールをどのように付けていくかもポイントになるが、森田氏は細かい皴などをつける前に骨格や関節の違和感がないかを確認し、生物として説得力があるかどうか判断することが大事だと伝える。もちろん、その判断を行うためには解剖学の知識をしっかりと蓄積しておくことも必要だ。

3Dデビューしたい人のためのコンセプトアートメイキング/浪人氏

浪人氏のプレゼンテーション画像

コンセプトアーティストの浪人氏は、ゲームメーカー勤務を経て、現在はフリーランスとして活動している。これまでに『NieR:Automata』(2017)、『ベヨネッタ2』(2014)などのゲームや、TVアニメ『INGRESS THE ANIMATION』(2018)のコンセプトアートやイラストを手がけた実績がある。

ライトニングトークでは、現在は2Dが主体だが今後3Dデビューしたいコンセプトアーティストに向けて、BlenderやUnreal Engine 4を使ったワークフローを紹介。自身が制作した宇宙船のメイキング画像を交えながら、ラフ、モデリング、レンダリング、加筆のながれを説明した。

浪人氏は、限られた時間の中でクオリティの高い作品をつくっていくための実践的な話を展開。モデリング時に3D特有のカクカクとした印象を抑える方法や、モデリング画像をUE4で読み込むとレンダリングの崩れがなくプレビュー性能が非常に高いこと、自分で撮影した写真を作品の背景としてPhotoshopで合成していく方法などを伝えた。さらに、モデリング時の「キットバッシュ」の話も興味深い。

コンセプトアートの役割は、作品のコンセプトをわかりやすく伝えることにある。そのためには、必ずしも全てをオリジナルで描き起こす必要はなく、ディテールを既存の3Dキットを使って構築する「キットバッシュ」と呼ばれる手法を用いることもあると言う。プラモデルの部品のような形状の3Dキットを使えば、積み木やブロックを組み立てていくような感覚でクオリティの高いモデルを制作できることから、最近は3Dのコンセプトモデリングの領域でも使用されている。

作品に応じて勉強を欠かさないという浪人氏は、仕事を始めるときは資料集めに力を入れている。資料をたくさん集めることで自分はどういうものが描きたいのかが見えてくるそうだ。様々な資料に目を通して勉強を重ねることで美意識が高くなり、最初はすごく良いと思った自分の作品も、もっとクオリティを上げられるのではないかと感じることがあると言う。プレゼンテーション全体を通して、創作に対する浪人氏の貪欲な姿勢が伝わってきた。

ワールドビルディングっていいね/富安健一郎氏

富安氏のプレゼンテーション画像


  • 富安健一郎氏

富安健一郎氏は、ゲーム会社のデザイナー、フリーランスのアーティストなどを経て、2011年にコンセプトアートのスペシャリスト集団「INEI」を立ち上げた。現在は代表を務めつつ、国内外で大規模なプロジェクトを手がけ、映画、ゲーム、CMなどのエンターテインメントコンテンツ、都市計画、大型施設などのコンセプトアートを提供している。

コンセプトアートは作品づくりの初期段階で制作されるが、どのようにコンセプトを引き出していくのか。その手法のひとつとして富安氏は、「ワールドビルディング」を紹介した。ワールドビルディングとは、アーティストとクライアントがブレストを行い、物語の世界観を細部まで構築していく作業だ。

例えば溶岩でできた惑星を舞台にした作品をつくる場合、なぜ溶岩の惑星になったのか、惑星は太陽からどれくらい離れているのか、惑星にはどんな階級の人がいるのかということや、人々の服装、食べ物、仕事、娯楽などをひとつひとつ詰めていく。ワールドビルディングで考えるべき要素は、地理、歴史、政治、文化、テクノロジーなどかなり幅広い。

作品の世界がしっかりと出来上がっていると全体が想像しやすくなる上、視聴者やユーザーの目に触れる部分以外の物語の成り立ちも考えておくことで、作品の深みが増す。制作者にとっては、ワールドビルディングが、作品をより深く理解し、作品の魅力を深めていく工程そのものになる。富安氏は、ワールドビルディングを通してクライアントのアイデアや思いを引き出していくことも、コンセプトアーティストの重要な仕事のひとつだと語る。

富安氏は、ワールドビルディングを行いながら、クライアントと共につくり上げていく絵をその場でPhotoshopなどで描いていくライブペインティングも行なっている。ビジュアルを組み合わせてブレインストーミングを行うことでイマジネーションの可能性が爆発的に膨らむ。富安氏は、この手法を「ビジュアルブレインストーミング(VBS)」と名付けて提唱していきたいと語った。

コンセプトアーティスト業界が活性化するイベントをこれからも!

アーティストと観客という垣根を排して全員が参加者となり、活発なコミュニケーションが行われた「CONCEPT ART NITE 02」。イベントを主催したINEIの富安健一郎氏は、コンセプトアート業界の横の繋がりを深めるためにこのイベントを企画したと言う。当日は来場者同士が情報交換を行う姿や、アーティストにポートフォリオを見せてアドバイスをもらう場面、アーティスト同士が語り合う姿が見られ、参加者は大いに刺激を受けたようだ。富安氏は「このような取り組みを重ねていきたい」と話す。コンセプトアートについて理解を深められる今後のイベントにも注目したい。



  • 「CONCEPT ART NITE 02」

    開催日:2018年11月27日(火)
    開催時間:18:00~20:30
    会場:WeWork オーシャンゲートみなとみらい
    定員:100名
    主催:INEI Inc.
    ineistudio.com/tag/concept-art-nite/

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