アニメ制作技術の総合イベント「あにつく」。今年開催された「あにつく2020」は、コロナ禍の影響からオンラインでの開催となった。本稿では9月27日(日)に実施された「生徒をアニメータードラフト会議で上位に押し上げる神戸電子専門学校の取り組み」から、主にクラウドフィードバックツールの「Brushup」を採用した取り組みについてレポートする。

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TEXT_真狩祐志 / Yushi Makar
EDIT_江連良介 / Ryosuke Edure、山田桃子 / Momoko Yamada

Brushupの採用で指導方法が改善

同セッションで登壇したのは神戸電子専門学校の松岡秀樹氏(業界連携グループプランナー)、山本梓司氏(3DCGアニメーション学科長)、田中佑弥氏(同学科アニメーション担当教員)、サンジゲンの瓶子修一氏(取締役)。

同校の紹介が行われた後、Brushupを採用した指導方法に話は移った。同校でBrushupを導入したのは2018年から。まずは瓶子氏が田中氏と山本氏に、導入のメリットなどを訊ねた。

田中氏は「誰が更新作業を進めてるのかわかりやすくなった。提出まで進捗が進むたびに、静止画や動画を学生に上げてもらい、チェックするかたちで行なっている」という。おとなしく受け身で、直に声をかけづらい学生でも、オンラインにアップするのであれば、指導を比較的にスムーズに行えるメリットがあるそうだ。

一方で山本氏も「Brushupを導入してなかったときは、サーバにアップしてもらって教員が確認するだけだった。しかし現在は、直接サムネイルで全てを見ることができるという点が大きい」と述べた。わざわざムービーファイルをクリックして開く必要はなく、ビジュアルも確認しやすくなったようだ。

さらに、Brushupは生徒同士でもお互いの提出物を見ることができる。この点について、瓶子氏から田中氏、山本氏に質問があった。それに対して田中氏は「嫌がる学生もいるが、自分がつくっているものに自信をもってやってもらう。最終的に業界に入って作品を人に見られることが仕事になるので、恥ずかしがらずにどんどん出すように伝えてある」、山本氏は「他の学生が指示されているところを見て、自分も直さなければとなり、クオリティが上がっていくという二次効果がある」と答えた。

また、同校では絵コンテの内容を理解するよう徹底的な指導があり、課題の提出までに10回以上のチェックがある。

瓶子氏は、その点に関心をもっており「先生がどんどん口を出してほしいと思っている。学校は教育という部分に強みを感じていて、学生の自主性や個性を大事にしたいということもあるが、とにかくまず指導をしないと、なかなかプロになれない」と述べた。

現在活躍する多くのプロも、ベテランのアニメーション監督や3DCGのディレクターから制作のセオリーを教えてもらった過去がある。

瓶子氏は、「守・破・離でいきなり"破"の部分をねらってしまう学生が多い。最初は教えを守る。真似するのがおかしいなどということはなく、素晴らしい人たちの真似をするなかで自分が出てくる」と説いた。瓶子氏によれば、5年目、6年目で先輩の真似ができるようになったときが、作家として自分のやり方を模索するタイミングだという。

瓶子氏は、結果として同校がアニメータードラフト会議で上位を席巻するようになったのは、こうした一連の取り組みにあると分析していた。

また、瓶子氏は"企業の本音"として、「卒業年度のチーム制作作品が、本当にポートフォリオになるのかどうか考えてほしい。チーム制作でもアピールできる学生はいるだろうが、そうではない学生は、自分がどの部分を担当したのかをアピールすることが難しい。大きな会社でもチーム制作は軽んじて見るところが多いと思う」と、学校におけるチーム制作の是非を問いかけた。

最後に瓶子氏は同校について「アニメータードラフト会議以外のコンテストにも出している傍ら、それ以外はずっとポートフォリオ制作という就職特化型のようなカリキュラム。そういう意味では、かけたコストを回収するのによい学校だなと思う」と評価し、講演は終了した。