11月7日(土)・8日(日)に「CGWORLD 2020 クリエイティブカンファレンス」がオンラインにて開催された。同イベントに登壇したebi tec laboは、サイバーエージェントのゲーム・エンターテイメント事業部が3D美少女の「かわいい」の表現力を向上させるために設立したクリエイティブチームだ。いわば「かわいい」をつくるための精鋭部隊である。ゲームはもちろんのこと、HoloLensをはじめとした最新デバイスと美少女キャラクターをかけ合わせて様々な試みを行なっている。そんなebi tec laboのクリエイティブディレクターの庄司拓弥氏、3Dディレクターの海老沼 宏之氏、モーションアクターの能登有沙氏の3名によるセッション『3D美少女キャラのモーションキャプチャによる「かわいい動き」へのこだわり』では、同社がこれまでに培ってきたモーションキャプチャを活用した3D美少女の制作ノウハウについて語られた。本稿ではその様子をお届けしよう。


TEXT&PHOTO_オムライス 駆 / Kakeru Omu-rice
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



ますます高まる「モーションキャプチャ」と「美少女」への需要

モーションキャプチャとは、モーションアクターと呼ばれる演者の身体各部にマーカーを着けた上で演技をしてもらい、そこで得られた動きをデータとしてフィードバックさせ3Dキャラクターの動きに反映させる技術だ。「これまでに演じたキャラクターは、おそらく100は超えていると思います。最近は美少女キャラクターが踊るシーンが増えてきたので、そういうお仕事も増えています」と能登氏が語るように、美少女キャラクターの需要はますます高まっている。

同セッションは、美少女コンテンツでモーションキャプチャを採り入れたい人、モーションキャプチャをディレクションしたい人に向けたものだ。講義を通して、「かわいい動き」のクオリティを上げるための視点や手法が存分に語られている。

▲能登有沙氏(左)、庄司拓弥氏(中央)、海老沼 宏之氏(右)

「ここ1~2年で、モーションキャプチャを使った収録がとても増えました。ただ、クライアントさんもモーションキャプチャを使った撮影が初めてだと言う方もいらっしゃいます」と、能登氏。業界的にもモーションキャプチャの需要が高まる一方で、そのためのノウハウをもたない発注者も少なくないというのが現状のようだ。そういったノウハウを知りたいという方、とりわけ3Dモーション、アニメーター、3Dディレクター、クリエイティブディレクターをされている方にとって、モーションキャプチャを用いた3D美少女制作のコツが語られる機会となったこのセッションは、貴重なものとなったのではないだろうか。


かわいい動きの学び方、かわいい動きの言語化

まずは「かわいい動き」のイメージを明確にして言語化し、それをアクターと共有することが重要だと海老沼氏は語る。モーションキャプチャは、最終的にはアニメーターがクオリティを上げていくものではあるが、その工程にいたるまではディレクション側とアクター側の共同制作によるアウトプットが必要だ。「だからこそ、アクターさんに指示する我々もかわいい動きについて理解を深めなければならないんです」(海老沼氏)。

また、ディレクションがはっきりしなければチームの意見が分散し、現場が混乱してしまうことにもなるという。イメージをきちんと伝え、チームで共有するためには、ディレクターが「かわいい動き」について理解を深めることが大切になってくる。そこで必要なのは、まず「かわいい動き」を学ぶことだ。しかし「かわいい動き」とひとくちに言っても、人の受け取る印象や時代などによっても異なるため、これが正しいと定義づけることは難しい。そんな「かわいい動き」はどうやって学べばいいのだろうか。

▲「かわいい動き」のイメージを明確にして、言語化することが大切

様々なキャラクターの「かわいい動き」を演じてきた能登氏は、「記録とインプットを大切にしています。自分の中でつくり上げてきたものもありますが、今流行っている『かわいい』もあると思うんです」と語る。そんな能登氏は、ドラマやバラエティ番組といったリアルな人間の動きを見て参考にしているそうだ。また、アニメやゲームも観るには観るそうだが、「その動き嘘だよね」と疑問に思う動きが多いという。「後はトレンドってありますから、例えば最近の女子高生が指でハートをつくるとき、私たちの時代とは形がちがうんですよ。そういったところでも年代のちがいを表現できたりします」と、自らの体験を交えて語ってくれた。

それでは次に、「かわいい動きを言語化する」にはどうすれば良いのだろうか。「3Dの美少女キャラクターは、年齢や性格など様々な細かい設定がされているので、キャラクターのイメージが人それぞれちがいます。なので、キャラクターの性格を設定から分類して動きを言語化することで、イメージを統一することになります」と海老沼氏。今回はわかりやすく「元気系」、「快活系」、「冷静系」、「清楚系」、「無機質系」の5つの性格に分類して、それぞれの動きのちがいについて語られた。

元気系は開放的に全身を大きく動かす小動物的な動き、快活系はボーイッシュだが女性らしさを残した動き、冷静系は斜を意識した動きで姿勢を良くする、清楚系はおしとやかで所作が丁寧な動き、無機質系は感情を動的に表さない控えめな動き、といった分類の紹介がなされた。さらに実際にはもっと細かく性格のちがいが出てくるので、これらの性格を混ぜたり中間と説明したりすることもあるそうだ。こうしてキャラクターのかわいい動きを言語化することで、チームの意見を統一することが可能になるのだ。

▲キャラクターの性格を5つに分類して、それぞれの動きのちがいについて説明していく


ワンランク上の「かわいい動き」を求めて

次のステップでは、これまで言語化した「かわいい動き」を、さらにワンランク上のものにするための手法が語られた。「ワンランク上のかわいい動きのために、我々ディレクターとアクターさんが協力して、演技にちょっとだけ演出を加えるんです。基礎となるアクターさんの演技は、必ずしも100%イメージが伝えられているものではありません。しかし、そのライブ感こそがモーションキャプチャの醍醐味でもあるので、アクターさんの動きにちょっとだけ演出を加えてみると、キャラクターの魅力がさらに増していくんです」と海老沼氏は語る。

今回は実際に架空の清楚系キャラクター設定を用意し、その設定に基づいて「よろこびワンアクション」というお題を設定して、まずは能登氏にその演技をしてもらった。その上で海老沼氏によって、「腕や足を体に近づけるポーズで上品に見せる」、「頭を傾け顎を引いて知的に見せる」、「体の部位の面を傾けるポーズで細く見せる」、「体全体、部位で曲面をつくって柔らかく見せる」などの演出が追加されていった。さらに、元気系のキャラについても同様の手順を踏んで、「腕や脚を体から離して元気に見せる」、「やや目線を上にしてポジティブに見せる」、「動きのバウンドを強めて小動物的に見せる」、「片足を上げて無邪気さを上げる」、「単純なポーズにして幼児的に見せる」などの演出が追加されていった。

▲モーションアクターの演技を基本として、そこに演出を追加していく


セッションの終わりに

今回、改めて「かわいい動きのイメージができるようインプットすること」、「チームの意見が割れないようにイメージを言語化すること」、「アクターさんにしっかりイメージを伝え共有すること」、「キャラクターに合わせてちょっとだけアクターさんの演技に演出を追加すること」といったこれらの意識が3D美少女の「かわいい動き」をつくる上で大切であることがわかった。これらのことを採り入れて、準備や本番の際にディレクション側とアクター側が双方で考えられる状態をつくり上げることが最も大切であり、そうすることでモーションキャプチャの現場はいい雰囲気になる。「そこからでなければ、かわいい動きは生まれないんです。今日の講義をぜひ参考にしていただいて、かわいいキャラクターづくりに活かしていっていただければと思っています」(海老沼氏)。