Epic Games社は6月4日(水)、ゲームエンジン「Unreal Engine 5.6」をリリースした。パフォーマンスの向上、アニメーションツールの強化、MetaHuman Creatorの統合とMaya・Houdini用プラグインの提供、ワークフローの改善など、多岐にわたる機能強化が図られている。
MetaHumanアップデート

Unreal Engine 5.6では、MetaHuman CreatorがUnreal Engineに統合され、新たに導入されたパラメトリックボディシステムによって体型の表現が柔軟になった。また、自作のMetaHuman対応グルームや衣装アセットをMetaHuman Creatorに直接取り込むことも可能になった。なお、これらの新機能を体感できるよう、新しいMetaHumanプリセットキャラクターも用意されている。

MetaHuman Animatorにもアップデートが施されており、Webカメラやモバイルデバイス、音声入力などのシングルカメラソースからリアルタイムでアニメーションを解析できるようになった。これはLive Linkと統合され、MetaHuman Creator内でのリアルタイムプレビューや、レベル内に配置したキャラクターへの適用が可能となっている。なお、Androidデバイス向けキャプチャ用アプリ「Live Link Face(ベータ版)」がGoogle Playストアで提供開始され、iOS用同アプリもアップデート。デバイス上でリアルタイムアニメーションを生成できるようになっている。


また、MetaHumanと対応アセットはFab上で売買可能になり、クリエイターとユーザーによるキャラクターとアクセサリの共有やマーケット活動が行えるようになった。

そして、MetaHumanとDCCツールを連携するためのプラグインとして、「MetaHuman for Maya」と「MetaHuman for Houdini」がFabから提供開始。
▲MetaHuman for Maya
Maya用はMaya 2022~2025に対応し、MetaHuman CreatorからエクスポートしたキャラクターをMayaに読み込むことが可能なCharacter Assemblerツール、MetaHumanキャラクターの顔の表情を細かく調整できるExpression Editorツール、XGenで作成したグルームをUnreal Engine内のMetaHuman Creatorで使用可能な形式に簡単にエクスポートできるGroom Exporterツールの3ツールが提供される。なお、Groom Exporterをサポートする「MetaHuman Groom Starter Kit for Maya」もFab上で配布されている。

▲MetaHuman for Houdini
Houdini用はHoudini 20.5に対応し、MetaHuman対応のグルームを作成するためのHDA(Houdini Digital Asset)として提供される。Maya用と同様、グルーム作成をサポートする「MetaHuman Groom Starter Kit for Houdini」がFab上で配布されている。

レンダリングパフォーマンスの向上
バージョン5.6ではLumenのハードウェアレイトレーシング(HWRT)が改善され、反射や拡散の計算が高速化。また、レンダラハードウェアインターフェイス(RHI)がリファクタリングされ、レンダリングスレッド全体のパフォーマンスが向上したほか、RHIにおけるバインドレスリソースの導入により、GPUプログラミングの柔軟性が向上し、より高度で複雑なシェーダやFXを効率的に実装できるようになった。
エフェクトシステムNiagaraは異種ボリュームが最適化され、PCだけでなく最新の第9世代ゲームコンソール機においてもパーティクルエフェクトのパフォーマンスが向上。また、バーチャルシャドウマップの改良により、影の忠実度と生成パフォーマンスが共に向上している。

アニメーションツールの改善
Unreal Engine 5.6のアニメーションツールセットでは、モーショントレイルの再設計、Tweenツールの刷新、カーブエディタのツールバーの再設計、シーケンサーのタイムライン制御力強化など、パフォーマンスと操作性向上に繋がる更新が施されている。


ワークフローの最適化
アセット管理ワークフローの効率を左右するコンテンツブラウザが再設計され、大量のアセットを扱う際のパフォーマンスが向上。また、ビューポートのツールバーから主要なツールへの素早いアクセスも可能となった。

Unreal Engine 5.6には多数の更新が含まれるが、本稿では3DCGやVFXに直結する部分のみを選定し紹介した。割愛した情報には、本バージョンに多数搭載されている実験的機能やベータ版機能も含んでいる。全更新内容については下記を参照してほしい。
■Unreal Engine 5.6 がリリースされました(公式ニュース)
https://www.unrealengine.com/ja/news/unreal-engine-5-6-is-now-available
■Unreal Engine 5.6 リリース ノート
https://dev.epicgames.com/documentation/ja-jp/unreal-engine/unreal-engine-5-6-release-notes
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「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2025 in TAAF」で東映アニメーションが講演した「UE5で開発した3Dレイアウトツールのご紹介」のレポート。
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