米VFX制作スタジオ大手、デジタル・ドメインでリード・リガーを務めるJeremy YeoKhoo氏は5月22日(水)、自身のLinkedInにて、2023年11月にリリースされたHoudini 20の新機能を使った人体リグのテストを投稿し、話題を呼んでいる。投稿内には動画が埋め込まれている(閲覧にはログインが必要)。
YeoKhoo氏はMuscles & Skinシステムを使って人体の肩甲骨周辺のセットアップを実施。まだ最初のイテレーションということで、いくつかの筋肉や微細なほころびはみられるものの、「サードパーティ製ツールを使わなくても、高品質な解剖学的リグが実現できる」とコメントしている。
また、このシステムは実装が簡単なことと、Vellumソルバを利用しているためにパイプライン内で他のアプリケーションに拡張可能な点も評価。次のステップとしては、Vellumソルバーに準静的(Quasistatic)な微調整を加えることで、HoudiniのMLデフォーマに変形を焼き付けることを予定している。
投稿を見たLinkedInユーザーが処理スピードについて尋ねたところ、YeoKhoo氏は「3つのシミュレーションで、筋肉が1〜2秒/フレーム、繊維が3〜4秒/フレーム、スキンが1秒/フレームだった」と答えている。
なお、YeoKhoo氏の今回のテストで使用した筋肉と皮膚のモデルはCGCircuit内にあるAndy Van Straten氏のモデル。
Houdini 20 Muscles & Skinシステムとは
インポートしたポリゴンモデルのジオメトリから、リアルな筋肉の動きや皮膚のエフェクトを模倣した多層的なシミュレーションを生成するHoudini 20の新機能。シミュレーションは高解像度のジオメトリにエクスポートしてショットに統合することができる。
デジタル・ドメインについて
映画監督のジェームズ・キャメロンらが1993年に設立し、ロサンゼルスの本社を筆頭に、バンクーバー、モントリオール、ルクセンブルグ、ハイデラバード、北京、上海、深圳、香港に拠点を持つ大手VFX制作プロダクション。『タイタニック』、『奇蹟の輝き』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で視覚効果賞(Visual Effects)を3度、Track、Nuke、Storm、Fsimで科学技術賞(Sci-Tech)を4度受賞している。なお、Nukeの原型は同社内インハウス・ツールである。
Jeremy YeoKhoo氏について
ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス、Netflix系列のScanline VFXなどを経て、2021年3月よりデジタル・ドメインのリード・リガーとして、同社バンクーバー拠点で勤務。Scanline VFX在籍時には、『グレイマン』(2022)、『ゴジラvsコング』(2021)、『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)、『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019)などのリギングやVFXに携わった。
CGWORLD関連情報
●【Houdini 20.0 新機能紹介】Featherシステムを筆頭に新機能が盛りだくさん!
Houdiniアーティストの北川茂臣氏による、Houdini 20の新機能紹介記事。クリエイターの視点から注目すべき機能を掘り下げて解説している。
https://cgworld.jp/article/202312-Houdini20.html
●アニメの現場で活きるHoudiniの使い方 モンスターストライクPVメイキング ~CGWCC 2023(5)
「CGWORLD 2023 クリエイティブカンファレンス」内、YAMATOWORKSによるセッションのレポート。MODOからHoudiniへのデータの受け渡し、HoudiniによるアニメーションのTipsなどを紹介している。
https://cgworld.jp/special-feature/sycom-yamatoworks-cgwcc2023.html
●ボーンデジタル主催セミナー「キャラクターFXとAPEX」より、Houdini20 筋肉ワークフローについて
ボーンデジタル主催のNukeセミナー「Nuke Meetup Tokyo 2023 Summer」のレポート記事。商業作品でのNukeの活用事例が多数紹介されている。
https://cgworld.jp/article/202311-nuke-meetup.html