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DMM.futureworksが運営する世界初の3DCG常設ホログラフィック劇場「DMM VR THEATER」の特性を活かした映像コンテスト「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」が開催中だ。今回は、6月30日から同シアターで上演されている『【ふなっしーじー舞台】レジェンドオブふなっしー』のメイキングについて、制作を担当したダンデライオンアニメーションスタジオのスタッフにお話をうかがった。

INTERVIEW_佐藤カフジ / Kafuji Sato
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



▶HOLOGRAPHIC VR CONTESTへのエントリーはこちらから

※エントリーを行うとDMM VR THEATERの実寸劇場データ(FBX形式 ※サンプル画像はこちら)や作品制作のポイントなどの資料を送ります

『【ふなっしーじー舞台】レジェンドオブふなっしー』ティザームービー

世界でも類を見ない、大型ホログラフィックVRシアターDMM VR THEATER。透明なスクリーンに映し出される映像は、まるで"そこにある"かのような実在感をもって観客の前に現れ、これまでにない劇場型の映像体験を楽しめる施設だ。

6月30日から講演された『【ふなっしーじー舞台】レジェンドオブふなっしー』は、そのVRシアターの特徴を活かしきって制作された、ホログラフィックVR舞台劇だ。ふなっしーをはじめとする舞台上に映し出されるキャラクターを観客席から眺めれば、きぐるみを着た演者たちが本当にそこにいるとしか思えない臨場感がある。そこに、CG作品ならではの各種演出が融合することで、現実の舞台劇にはあり得ない、しかしもっと幻想的で印象的な舞台劇が完成する。

本作を制作したのはダンデライオンアニメーションスタジオ。プロデューサーの佐藤博之氏によれば、75分間にもおよぶ長編作品となる本作の制作は全体でおよそ半年。モーションキャプチャデータを撮り終えての実制作についてはわずか3ヶ月だったという。シーン構築およびレンダリングというタイトスケジュールを実現しつつ、DMM VR THEATERの特徴を活かしきるコンテンツを作り出す。その背景にある工夫やノウハウについて取材を行なった。

本作の制作を行なったスタッフはコンポジット、モデリング、セットアップ、アニメーターの各部門を合わせて総勢で10名ほど。ふなっしー等の3DモデルについてはDMM.futureworks側からの提供となった経緯はあるが、それでも75分という長尺のCG映像を3ヶ月で制作したとは信じられないほどの少数精鋭といえる。


  • 佐藤博之氏(スーツ)/プロデューサー


  • 遠藤 工氏/ディレクター、リードモデラー

CG作品の制作期間を大きく占めるのがレンダリングであることはまちがいない。本プロジェクトではそこにUnreal Engineを活用することで大幅な期間短縮を実現している。Unreal Engine上でのセットアップおよびレンダリングを担当したルックデベロッパーの木全俊明氏は、Unreal Engineを利用したことで、従来のノンリアルタイム系レンダラに比べてレンダリング時間が数百倍に高速化されたと語る。レンダリング解像度は4,800x1,440、さらに品質を高めるため200%程度のオーバーサンプリングをかけたとのことだが、それでも1秒で5フレーム程度のレンダリングが可能だったという。

<1>Unreal Engineを活用した制作パイプライン

Unreal Engine上でシーンのセットアップとレンダリングが行われている

キャラクターは実際の舞台に立っている配置。カメラは観客席のベストポジションから見た位置に設定されている

V-Rayでレンダリングされたキャラクターイメージ

Unreal Engineでレンダリングされたイメージ。従来のレンダラと比べても遜色のない見映えが確保されている

Unreal Engineでレンダリングされたのは、前景のキャラクター部分だ。煙や炎など各種エフェクト類はHoudini、Maya Fluid、After Effects等で制作し、コンポジットする。背景部分はMayaのmental ray等でレンダリングした連番の映像を用いる。通常のディスプレイ上での確認のためには前景・背景をコンポジットする必要があるが、DMM VR THEATERの実際の施設ではフロントスクリーンとバックスクリーンに分けて投影される。

バックスクリーンに投影される背景の例

フロントスクリーンの映像をコンポジットしてプレビュー

このような特殊性があるため、DMM VR THEATERでどのように見えるかは現地で確認しないと完全に把握することが難しい。最終的なルックの決定を行うためには現地に足を運んでの確認と調整が重要だ。このため制作チームは何度も現地に足を運び、舞台照明が入っていない状態でスクリーンに投影することを試した。しかし、劇場の物理照明を組み合わせた演出については最終的に公演の1週間前から調整が始まったというので、時間のかかるオフラインレンダリングでは最終的なルックの調整を行うことが不可能に近い。

そこでUnreal Engineを使ったレンダリングの高速化が活きてくる。上演開始前の1週間、ディレクター/リードモデラーの遠藤 工氏と木全氏は現地に足を運び、劇場の照明や演出を担当するスタッフと相談しながら、実物の劇場での見映えを確認し、その場でレンダリングを再調整する......という形で試行錯誤を行なったという。実際の4分の1の解像度でレンダリングすると60fpsでの出力が可能で、10分程度の長いシーンでもすぐに投影テストができたということから、Unreal Engineによるメリットが非常に大きかったことがわかる。

劇場の物理的な照明と、CG内の色味を合わせた例。劇場全体を使った奥行き、立体感が生まれる

背景や小物類といった3Dアセットは遠藤氏ら2名のモデリングチームが担当したが、納品3日前に新しいアセットを追加するという離れ業をやってのけている。ふなっしーが奥行き方向に高速に移動していくシーンで、劇場の特性から「地面に立っているより空中に浮いているほうが面白い」という理由で、ふなっしーが乗る飛行マシーンを追加したのである。これにより該当シーンの再レンダリングが必要となったが、公演にはしっかり間に合ったというのも面白い話だ。

納期間際に追加された飛行マシーン。シーンの特性を考慮し、ギリギリで追加された

飛行マシーンでキャラクターが浮くことで、VRシアターならではのシーン演出が効果的に行われている

▶次ページ:
<2>シアターの特徴を最大限に活かすライティングとシーン構築の工夫

Info.

  • 「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」エントリー受付開始!
    主催:DMM.futureworks
    共催:CGWORLD
    <各賞と賞金>
    グランプリ 50万円(1作品)
    準グランプリ 10万円(1作品)
    特別賞 CGWORLD定期購読1年分(2作品)
    <審査員> ※敬称略
    鈴木おさむ(放送作家)
    白A(次世代型エンタテイメント集団)
    福原慶匡(DMM.futureworks執行役員プロデューサー)
    沼倉有人(CGWORLD編集長)
    <審査基準>
    ・誰でも楽しめる芸術性やエンターテインメント性があるか
    ・VR THEATERの特徴を活かした表現ができているか
    ・3DCGなどの技術を駆使して立体的な映像になっているか
    提出物:Holographic VRを活用した映像作品
    エントリー締切:2016年9月9日(金)

    「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」特設サイト
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<2>シアターの特徴を最大限に活かすライティングとシーン構築の工夫

DMM VR THEATERのスクリーン構成は特殊だ。基本的なスクリーンはホログラフィック映像を表示するフロントスクリーンと、通常の映像を表示するバックスクリーンに分かれていて、奥行き方向に3メートルほどの距離を置いて配置されている。バックスクリーン上の映像とフロントスクリーン上の映像の視差が発生することで、より実在感のある立体的な映像が得られるしくみだ。

フロントスクリーンに投影されるキャラクターと、バックスクリーンに投影される背景がVR的な立体感を生む

本作では前述のように、基本的にはフロントスクリーンにUnreal Engineでレンダリングされたキャラクターを、バックスクリーンにMayaやmental ray等でレンダリングされた背景映像を表示し、物理的な舞台劇の構成をCGで再現するというアプローチをとっている。こういったスクリーンの特性上、理想的な映像のルックを実現するためには特有のコツといったものが複数ある。

見た目にはリアルな舞台劇でありながら、CGならではのエフェクトが加わることで独特のルックが実現

ひとつはキャラクターライティング。高品位のCG作品では通常、大域照明等を用いてキャラクターやオブジェクトに重厚なライティングを与えることが多いが、それだとDMM VR THEATERではあまり立体感が出ないという。むしろ、光源1つで陰影を強く出したほうが立体感が出た、というのが木全氏の結論だ。このため本作ではほとんどのシーンで1つの光源のみを使用するというアプローチを取っている。

シンプルなライティングによりキャラクターに強めの陰影をつけ、立体感を強調している

そこで問題になるのが、キャラクターの暗部が"透けて"しまうという現象。ホログラフィックとして投影されるフロントスクリーンと、通常の映像として投影されるバックスクリーンが重なるとき、光学的には明るさが足し算される形になるが、このとき、フロントスクリーンの映像が暗すぎる/バックスクリーンが明るすぎるという組み合わせになると、フロントスクリーンに投影された映像を透かしてバックスクリーンの映像が見えてしまう、という形になる。

これを避けるため、本作ではバックスクリーンを気持ち暗めに出すようにしたほか、フロントスクリーンに表示されるキャラクターの陰部分をUnreal Engine上の環境光やAfter Effects上のポストエフェクト的な手段で持ち上げ、透け現象を最小限にとどめた。特に劇中に登場する大型のキャラクター「ドラゲー」は、面積自体が大きい上、赤い部分が透けやすいという特性があった。このため回避策として赤い部分のみ、不自然にならない程度に明度を上げるという手法も採っている。

逆光表現を用いたため透けやすくなったシーン

暗部を持ち上げる調整を行い、透過を防止した例

また、DMM VR THEATERならではの課題として、スクリーン枠をはみ出してキャラクターを描画する際の"見切れ"をいかに違和感なく演出するか、というものがある。例えばキャラクターが舞台袖から出てきたり、逆に出て行くとき。あるいはキャラクターがジャンプして上方向に消えていくとき。スクリーンからはみ出した際にバッサリ見切れてしまうと、途端に平らなVR感が損なわれるという問題がある。本作ではこれを緩和するため、いくつかのシーンでフロントスクリーンの各方向にグラデーションマスクを配置し、キャラクターがジワリと消えていく演出を加えている。その上で炎などのエフェクトをマスクよりも前面に描画することで、スクリーンよりも前に出てきているかのような立体感を演出するといった工夫も光る。

画面端に配置したグラデーションマスクにより、見切れる部分がなめらかに描画されている。また、炎のエフェクトはマスクよりも前面に描画され、立体感を増している

ドラゲーがジャンプして画面から出て行くシーン。劇場ではフロントスクリーンの上端がバックスクリーンの上端より低いため、やや低めの位置でキャラクターをフェードアウトさせている

バックスクリーンに明るい映像を出したい場合はどうするか? というところにもひと工夫。例えば、バックスクリーンで爆発が起きるシーンでは、キャラクターたちが立つ画面下部は煙のエフェクトで暗くしつつ、画面上部に明るい爆炎を配置、という画づくりを行うことでキャラクターの透けを回避。また、時間差でフロントスクリーンに火の粉や破片が落ちてくるという演出で、さらに画面の奥行き感や臨場感を高めたという。こういったフロントスクリーンとバックスクリーンの連動も、DMM VR THEATERの特性を活かすための重要な工夫と言えそうだ。

バックスクリーンに描画される爆炎の下部に煙をかぶせることで、手前のキャラクターが透けて見える現象を抑止

▶次ページ:
<3>VRコンテンツならではの苦労点はアニメーション

Info.

  • 「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」エントリー受付開始!
    主催:DMM.futureworks
    共催:CGWORLD
    <各賞と賞金>
    グランプリ 50万円(1作品)
    準グランプリ 10万円(1作品)
    特別賞 CGWORLD定期購読1年分(2作品)
    <審査員> ※敬称略
    鈴木おさむ(放送作家)
    白A(次世代型エンタテイメント集団)
    福原慶匡(DMM.futureworks執行役員プロデューサー)
    沼倉有人(CGWORLD編集長)
    <審査基準>
    ・誰でも楽しめる芸術性やエンターテインメント性があるか
    ・VR THEATERの特徴を活かした表現ができているか
    ・3DCGなどの技術を駆使して立体的な映像になっているか
    提出物:Holographic VRを活用した映像作品
    エントリー締切:2016年9月9日(金)

    「HOLOGRAPHIC VR CONTEST」特設サイト
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<3>VRコンテンツならではの苦労点はアニメーション

Unreal Engineの採用等で効果的に省力化が図られた本作の制作だが、各制作担当パートのうち、通常以上のマンパワーを必要としたのがアニメーション部分だ。モーションキャプチャはDMM VR THEATERの舞台と同じサイズのスタジオで実施し、各キャラクターを担当するアクターが実際に舞台上に集まって演技をするかたちで収録。キャプチャデータが納品されたのは開演の3ヶ月前となる。

キャラクターアニメーションは、劇場と同サイズのスタジオで全アクターが実際に演技をしてモーションキャプチャデータが制作された

こうして作られたキャプチャデータは非常に長尺だが、そもそもアクターと各キャラクターのサイズや骨格がかなり異なるため、アクターに関節の可動範囲等の指示を加えたうえでも、手作業による調整作業が大量に発活する。しかもVRコンテンツならではの特性として、キャラクターは常時全身くまなく映っている。通常の映像作品のように"見えない部分を省略"するわけにもいかない。

調整作業が膨大になってしまう影響を最小限に留めるため、いくつかの工夫がある。なかでも、揺れものには、自動化するインハウスツールを使用。ツールとしてはシミュレーションに近いもので、より簡単に調整ができ、動作が軽いシステムだという。ツールを使用して揺らした後に、リグにアニメーションをベイクしてキーフレーム化した。そうすることで、揺れもののリグをキャラの挙動に合わせて動かし、アニメーターの作業量を減らすことができた。その後は、めり込みなどの不具合のみを手で修正するという手順をとることで、セカンダリアニメーションの作業量をグッと減らすことができたという。

それらの工夫があった上でも、ディレクター/リードアニメーターの田村和弘氏は「作業量がすごいことになり、本当に終わるのかなと不安になりながら制作しました」とふりかえる。


  • 木全俊明氏/ルックデベロッパー


  • 田村和弘氏/ディレクター、リードアニメーター

ふなっしーのセットアップ。モーションキャプチャ用の骨(mocapGrp)の動きを継承し、リグが追従するしくみ

揺れものにはインハウスツールを使用。手付けでの調整は要所にとどめて工数を削減したという

モーション調整前の状態。足や剣が地面にめり込んでいる

調整後。ほとんど全身くまなく調整されている。全シーンの全ての瞬間でこういった調整が必要

<4>DMM VR THEATER向けコンテンツのポイント

『レジェンドオブふなっしー』で採られた工夫の数々は、DMM VR THEATER向けのコンテンツで広く共有できる知見が多い。最後にそのポイントをまとめてみよう。

・ライトはしっかり当て、立体感を出す
・フロントスクリーンの暗部を持ち上げ、透過を避ける
・バックスクリーン用の映像は暗めに調整
・バックスクリーンに明るい画を出す際はフロントのキャラクターに被らないようにする
・画面端の見切れ感を低減する工夫をする
・バックスクリーンとフロントスクリーンの連動で奥行き感を演出する
・劇場でのルック調整が重要であるため、高速なレンダリング手法を用いる

そのほか、フロントスクリーンに投影されるキャラクターや人物の影がバックスクリーンに投影されるような表現を行うと立体感が向上する(本作ではごく一部のシーンで使用)。コンテンツによっては、フロントスクリーンの透過を逆手に利用した演出手法も試す価値がありそうだ。

ホログラフィックVRというこれまでにない表現を楽しめるDMM VR THEATER。従来の映画館とも、実物の舞台ともちがった、全く新しい映像表現の領域が大きく広がっていることはまちがいない。

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※エントリーを行うと「DMM VR THEATER」の実寸劇場データ(FBX形式 ※サンプル画像はこちら)や作品制作のポイントなどの資料を送ります

Info.

  • 「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」エントリー受付開始!
    主催:DMM.futureworks
    共催:CGWORLD
    <各賞と賞金>
    グランプリ 50万円(1作品)
    準グランプリ 10万円(1作品)
    特別賞 CGWORLD定期購読1年分(2作品)
    <審査員> ※敬称略
    鈴木おさむ(放送作家)
    白A(次世代型エンタテイメント集団)
    福原慶匡(DMM.futureworks執行役員プロデューサー)
    沼倉有人(CGWORLD編集長)
    <審査基準>
    ・誰でも楽しめる芸術性やエンターテインメント性があるか
    ・VR THEATERの特徴を活かした表現ができているか
    ・3DCGなどの技術を駆使して立体的な映像になっているか
    提出物:Holographic VRを活用した映像作品
    エントリー締切:2016年9月9日(金)

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