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キーマンに率直に聞いてみた! オリジナル作品に力を注ぐNetflixの日本戦略とは?

キーマンに率直に聞いてみた! オリジナル作品に力を注ぐNetflixの日本戦略とは?

急速に動画配信サービスへの関心が高まっている。映像作品の質を重要視し、単に作品数を増やすことだけがミッションではない。Netflixのライバルは、全てのエンターテインメントであり、ビール一杯も、Netflixの強力なライバルであると言いきるNetflixの最高インターナショナル・デベロップメント責任者/INTERNATIONAL DEVELOPMENT OFFICERを務める、グレッグ・ピーターズ/Greg Peters氏に、日本市場への取り組みや日本の映像コンテンツ制作者に向けたメッセージを聞いた。

TEXT_安藤幸央(エクサ) / Yukio Ando(EXA CORPORATION
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



<1>日本独自の展開について

ーーほかの動画配信サービスに比べて、Netflixは日本上陸が遅かったと言われていますが?

Netflix最高インターナショナル・デベロップメント責任者/グレッグ・ピーターズ氏(以下、ピーターズ氏):期待の裏返しということですよね(笑)、がんばってますよ。Netflixは日本市場に大きな期待をしています。われわれは世界中でサービスすることを考え、北米、カナダ、南米、アジア圏では一番最初に日本でサービスを開始し、現在は、中国をのぞく、全世界でサービスを提供しています。どの国でも出来うる限り最速でサービスを開始したつもりです。Netflixとしても目指すところは、グローバルなサービスで、大事なことは、今現在世界中で、配信されているという事実です。

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  • グレッグ・ピーターズ/Greg Peters(Netflix)
    イェール大学物理・天文学部卒。Netflixの最高インターナショナル・デベロップメント責任者として家電メーカー、インターネットサービスプロバイダ、マルチチャネル動画配信会社などと世界的な提携関係を構築し、Netflixで映画やドラマを視聴できるデバイスやプラットフォームの拡大に取り組んでいる。2008年にNetflixへ入社、それまではMacrovision Solutions Corp.(後にRovi Corporationと改称)の家電製品担当シニア・バイス・プレジデントやデジタル・エンターテインメント・ソフトウェアの提供会社Mediabolic Inc.、Linuxとオープンソース・テクノロジーの提供会社Red Hat Network、オンライン事業会社Wine.comに勤務したキャリアをもつ。

ーーNetflix でしか視聴できない、あるいは初披露がNetflixといったオリジナルコンテンツに力を入れているように感じるのですが、その戦略は?

ピーターズ氏:おっしゃるとおり、Netflixではオリジナルコンテンツに力を注いでいます。それには、いくつかの理由があります。映画など、映像作品のライセンスを取得して配信する方式ですと、世界中の視聴者に同じタイミングで提供するのが難しくなってしまいます。Netflixが権利を持つオリジナルコンテンツであれば、世界中で同じ公開日に配信が可能になるのです。

ーーなるほど。

ピーターズ氏:もうひとつの理由は、世界中の優秀なクリエイターへ、ほかのメディアよりも映像制作のサポートできるということです。まずはクオリティ、制作費、資金的なサポート、技術的なサポート、 4K、HDRのサポートといった点です。

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家のリビングルームのような内装の応接スペースだ

ピーターズ氏:従来のテレビ番組には様々な制約がありました。例えば広告収入の場合は、スポンサーへの気づかいから、実現が難しい企画もありますよね。Netflixは、つくりたい作品がつくれる環境を提供する場なのです。優秀なクリエイターたちには、彼らが伝えたい物語があり、クリエイターたちに良い環境で映像つくりをさせてあげたい。それがNetflixならほかのメディアよりもできるのです。クリエイターがつくりたい作品を提供することができます。また、4KやHDRといった最先端の映像フォーマットを充実させていく、豊富なラインナップを揃えていくのもわれわれの目標です。

<2>Netflix独自のレコメンデーション技術

ーー日本に来て、電車に乗りましたか? 皆がスマートフォンを使っていて、驚きませんでしたか?

ピーターズ氏:もちろん乗りましたよ(笑)。われわれは実際にスマートフォンの利用状況を調査をしました。最初の予想は、スマートフォンのような小さいデバイスをもっている人は、ひょっとしたら短いコンテンツを観たいのではないかと考えていました。このような短いコンテンツのことを、ちゃんとした食事をする代わりに、軽いスナックを食べることに例えてスナッキング/Snackingと呼んでいます。

ーースナッキングですか、初めて聞きました。

ピーターズ氏:実際に調査をしたところ、結局は家でテレビで観ていた長編ドラマや映画の続きを観たい人が大多数で、携帯端末でもそういった長編作品を観ていることが多いことがわかったのです。これからも実験的なことをいろいろと試していきますが、今現在は、長編の作品を重要視しています。

ーー日本発の作品、また日本で制作を手伝っている作品などがありますが、日本発のコンテンツに関してどのようにお考えですか?

ピーターズ氏:日本のコンテンツクリエイターには、おおいに期待しています。彼らのつくるストーリーをこれからもどんどん世界の視聴者に届け、楽しんでもらいたいと考えています。例えば、プロダクション I.Gと制作中である『パーフェクト・ボーンズ』というオリジナル作品が挙げられます。また、ビーメディアとアクタス制作による『サイボーグ009VSデビルマン』(2015)はすでに世界に発信しています。

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ーー日本の作品に対する海外での評判はいかがですか?

ピーターズ氏:実際すでに、日本のクリエイターたちがつくった作品が世界の視聴者の心をつかんでいます。それは、自分たちの配信サービスが世界中に配信しているのも理由のひとつですし、レコメンデーション機能のおかげでもあります。レコメンデーション機能が、この視聴者はこういうものを好む、気に入るんじゃないか? という作品を推薦するの機能があります。アニメ作品を観たことがない人も、ある要素がその人にとって魅力的なものであれば、視聴者に作品を薦める仕組みにより、Netflixには新しいアニメファンを開拓する力を有しているのです。

ーーNetflixでは膨大な視聴ログを解析して活用していると聞きますが?

ピーターズ氏:Netflix ではレコメンデーションコンテストを開催し、世界中に人に推奨アルゴリズムを鍛えてもらっています。実際にわれわれは、視聴傾向、膨大なデータを解析し、どういうユーザーがどう楽しんで観ているのかを分析します。その作品をどのようなユーザーが楽しんでいるのかが解り、新しい作品がどのようなポテンシャルを持っているかもわかります。そして、クリエイターたちが、どれくらいの明確なビジョンをもっていて具現化したい内容が、これぐらいの人が面白いと思ってくれるはずとわかったときにオリジナルコンテンツをつくり、企画を進めることになります。

ーーNetflixの作品の選出はどのような仕組みでなされていますか?

ピーターズ氏:全員が賛同しなければ企画が通らないというものではなく、だれかひとりでも熱意あふれる人がいれば、その作品を取り上げるという仕組みになっています。そういう仕組みは大事です。 会社の中で NO というの答えを導くのは簡単ですが、YES と言うのは難しい。Netflixでは多くの人と、新しいことを試してみること、オープンな姿勢をもつことが大切だと考えています。

ーー日本ではテレビも、ブロードバンドもスマートフォンもとても普及していますが、実際にテレビをネットにつなげている人はそれほど多くありません。ネットとテレビに関してどのようにとらえていますか?

ピーターズ氏:どの国でもそういう傾向があります。私たちはそれを「コネクトレート」と呼んでいます。

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(左)シャープAQUOSのテレビリモコン/(右)ソニー製のテレビリモコン(写真提供:Netflix)。どちらにもNetflix専用ボタンが配されている

ピーターズ氏:テレビをネットに繋がないのはどの国も同じ傾向で、時間の経過とともに、いくつのデバイスをネットにつなげるか? 日本のデバイスメーカーと、視聴者の皆さんが簡単に見れるようにするためには、何ができるのかを探っています。現在Netflix推奨テレビプログラムという取り組みを始めていて、Netflixが簡単に観られるテレビを製造・発売してくれたメーカーには、その認証マークをつけるというキャンペーンをしており、常にユーザーが繋ぎやすい環境をつくりたいと思っているのです。

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▶次ページ:
<3>Netflixが自負する競合に対する優位性

Profileプロフィール

グレッグ・ピーターズ/Greg Peters(Netflix)

グレッグ・ピーターズ/Greg Peters(Netflix)

イェール大学物理・天文学部卒。Netflixの最高インターナショナル・デベロップメント責任者として家電メーカー、インターネットサービスプロバイダ、マルチチャネル動画配信会社などと世界的な提携関係を構築し、Netflixで映画やドラマを視聴できるデバイスやプラットフォームの拡大に取り組んでいる。2008年にNetflixへ入社、それまではMacrovision Solutions Corp.(後にRovi Corporationと改称)の家電製品担当シニア・バイス・プレジデントやデジタル・エンターテインメント・ソフトウェアの提供会社Mediabolic Inc.、Linuxとオープンソース・テクノロジーの提供会社Red Hat Network、オンライン事業会社Wine.comに勤務したキャリアをもつ。

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