7月13日(金)より全国ロードショーとなる『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。本作の製作総指揮と脚本を担当した、コリン・トレボロウ氏へのインタビューをお届けしたい。トレボロウ氏は、前作の『ジュラシック・ワールド』(2015)で脚本・監督を務め、2021年に公開が予定されている第3作でも製作総指揮・脚本・監督を担当する、まさにシリーズの要となる人物だ。
TEXT_大口孝之 / Takayuki Oguchi
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
2018年7月13日(金)全国ロードショー
www.jurassicworld.jp
© Universal Pictures
Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc.
and Legendary Pictures Productions, LLC.
J・A・バヨナ監督の魅力が十分発揮できるような脚本を書いた
前半最大の見せ場となる、噴火した火山島(『ジュラシック・ワールド』)からの脱出シーンより
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――『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(以下、『/炎の王国』)ですが、最初から最後まで非常に楽しめました。これは決してお世辞ではありません。
コリン・トレボロウ氏(以下、トレボロウ):どうもありがとう。
――最初の質問ですが、私は前作『ジュラシック・ワールド』を観たとき、『ジュラシック・パーク』(1993)の原作者であるマイケル・クライトンが、自ら監督したSF映画『ウエストワールド』(1973)を連想しました。『ウエストワールド』の内容は、「未来のテーマパーク"デロス"において謎の故障が生じ、園内のアンドロイドたちが観客を殺戮し始める」というものですが、『ジュラシック・ワールド』はそのアンドロイドを恐竜に置き換えたストーリーとも読めます。実際、意識されたりしていたのでしょうか?
トレボロウ:たしかにクライトン原作の『ジュラシック・パーク』も『ウエストワールド』も、ストーリー的には重なる部分が多いですね。ただ『ジュラシック・パーク』は子供が主体ですが、『ウエストワールド』は完全に大人を対象にしていて、そこが大きくちがっている点でしょうか。人間が欲のために科学を利用し、自然に干渉してしまうことの危険性を訴えている点は共通しているとは思います。
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Photo : Kazuhiko Okuno
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コリン・トレボロウ/Colin Trevorrow
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』では、脚本&製作総指揮を務める。大ヒット映画『ジュラシック・ワールド』(2015)で監督と脚本を担当。同作は夏公開作品として歴代興行収入1位を飾り、ジュラシック・ブランドとして見事な復活を遂げた。監督としての近作に、ナオミ・ワッツ主演『The Book of Henry(原題)』(2017)。2012年公開の『彼女はパートタイムトラベラー』(未)はサンダンス映画祭でウォルド・ソルト脚本賞を獲得、グランプリにもノミネートされた。アンブリン・エンターテインメントの待機作『IntelligentLife(原題)』で製作と脚本を務める予定。また、2021年全米公開予定の『ジュラシック・ワールド』第3作では、再び監督と脚本を担当する。
――ちなみにクライトンは、やはり監督作品である『ルッカー(原題:LOOKER)』(1981)という映画を手がけたとき、CGを担当したジョン・ウィットニー・ジュニアとの対談で、恐竜をCGで蘇らせる可能性についても語っていたのですが、ご存知でしたか?
トレボロウ:いや、それは初耳ですね。時代的に『トロン』(1982)の頃でしょうか?
――それよりも1年前です。
トレボロウ:では、CGはワイヤーフレームみたいでしたか?
――いえ、スーザン・デイという女優を、当時では珍しいほどリアルなシェーディングで表現していました。CGスタッフ(トリプルI が担当)は『トロン』とも共通していて、ディズニーが『トロン』の制作にGOを出したきっかけになった映画でもあります。
トレボロウ:その映画、DVDは出ていますか?
――ワーナー・ブラザースから発売されています。クライトンの演出はかなり野暮ったいのですが、登場するガジェットのアイデアが素晴らしいです。
トレボロウ:へえ、バヨナにも教えてやろう(笑)。
本作でもリードVFXスタジオは、ILM(Industrial Light and Magic)が務めている
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――『/炎の王国』に話を戻しますね。この映画の前半は、まるでスピルバーグ本人が演出したみたいなテンポの良さや、カメラアングルで、非常に驚きました。J・A・バヨナ監督は、もっと陰性なイメージだったのですが、彼がこういう面を有することは新しい発見でした。このことには早くから気づいておられたのですか?
トレボロウ:僕は、バヨナが素晴らしい映画を創ってくれると信じていましたし、優れた監督としての手腕の持ち主であると見抜いていました。そして、彼の魅力が十分発揮できるような脚本を僕は書いたのです。つまり、彼のこれまでの作品......1.子供と怪物の物語(『怪物はささやく』(2016))、2.自然災害を乗り越える家族(『インポッシブル』(2012))、そして3.幽霊屋敷(『永遠のこどもたち』(2007))という3つの要素を、全て盛り込んだストーリーが今回の『/炎の王国』だと思っています。
本作では、ヴェロキラプトルの中でも特に高い知能を有する重要キャラクター「ブルー」の幼体時代も描かれる
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――私は複数の大学や専門学校でVFXについて教えているのですが、自然災害の描写について説明する時、教材としてこの『インポッシブル』と、クリント・イーストウッド監督の『ヒア アフター』(2010)を必ず用います。どちらもスマトラ島沖地震による大津波を題材としていますが、『ヒア アフター』の津波はCGによる流体シミュレーションで描かれており、襲って来る海水が完全に透明で、いかにも"頭で考えました"という印象です。一方『インポッシブル』では、巨大なウォータータンクに人工濁流を発生させ、そこに俳優たちを実際に流すという、かなり危険な撮影を試みています。当然、水は濁り、様々な浮遊物も流れていて、映像に恐ろしいほどの現実感をもたらしています。
トレボロウ:そう。ミニチュアモデルとかも使っていましたよね。
――だから一見ローテクな技術でも、ああやって実際にモノを造るということが、映像にリアリティを出す上で非常に重要だとわかります。
トレボロウ:そうです。だから今回の映画では、アニマトロニクスを用いる場面を数多く用意しましたし、CGに頼らないで撮影現場で行うプラクティカル・エフェクト(特殊効果: SFXなども同様の意味)の場面も多く設けました。バヨナは、こういった技術を的確に使い分ける手腕が素晴らしく、彼にその才能を存分に発揮してもらいたかったのです。おそらくプラクティカル・エフェクトと3DCGの組み合わせにおいては、スピルバーグと同じぐらいのセンスの持ち主なんでしょうね。
――先日、『/炎の王国』でアニマトロニクス・スーパーバイザーを務めたニール・スカンラン/Neil Scanlanにインタビューした際にも、「バヨナ監督は、アニマトロニクスを含めた造形物の経験も豊富だし、何より直観が鋭いんですよ。打ち合わせ中に、『ここはプラクティカル・エフェクトでいこう』『ここはCGだ』ということが、瞬時に決めていける人なんです」と語っていました。またバヨナ監督本人に『怪物はささやく』でインタビューしたときも、「アニマトロニクスなどのプラクティカル・エフェクトと、最新のCGなど、複数の手法を組み合わせることが、よりリアルなビジュアルを創り出すカギだと思うんだ」と語っておられました。
トレボロウ:なるほど。
恐竜のアニマトロにクスに対するカメラアングルを確認するバヨナ監督
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Giles Keyte
――また最近、スカンランと彼のチームは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)などでもアニマトロニクスやパペットを手がけていて、プラクティカル・エフェクトへの回帰はまちがいなく始まっているように思います。また、アナログ技術の復権という意味では、最近フィルム撮影へ戻る監督が増えてきたようにも思われるのですがいかがでしょう?
トレボロウ:撮影メディアの選択は、監督によってバラバラですね。僕はフィルム主義者で、スピルバーグやJ・J・エイブラムス、クリストファー・ノーラン、クエンティン・タランティーノなんかも同様です。これは僕が彼らと肩を並べるという意味じゃないですよ(笑)。でもバヨナは、デジタル撮影(本作では、ARRI ALEXA 65を使用)を選びました。それでもエフェクトに関しては、着実にアナログ技術が復権しているように感じます。実際スカンランたちは、この『/炎の王国』を撮っていた英国のパインウッドスタジオで、『スター・ウォーズ』のシリーズも同時に手がけていました。こうしたアナログ技術が、映画表現をより拡げているのは明らかです。
――前作におけるアニマトロニクスの出番は、瀕死のアパトサウルスの表現ぐらいだと思いますが、今回のように実際に造形物が存在している方が、俳優たちもその世界をイメージしやすかったと思われますが、どういう反応でしたか?
トレボロウ:たしかに恐竜に触れるというシーンでは、実際の造形物が存在している方が演技をしやすいです。前作では、おっしゃったアパトサウルス以外にも、ヴェロキラプトルを教育している場面で少し使っています。でも今回は、檻に入れられているT-Rexやブルー(物語の重要キャラクターであるヴェロキラプトルの1頭)など、アニマトロニクスの登場場面を大幅に増やしました。
――スカンランさんは、「舞台劇のように作っていった」とおっしゃっていました。「俳優たちがアニマトロニクスだということを忘れ、本当の恐竜のように錯覚するまで徹底的に慣らさせていく段階を踏んでから、本番撮影を行う」ということでした。
トレボロウ:そうですね。例えば、ブルーの輸血シーンがありますよね。あの場面は、ブルーを操作する10人ほどのパペッティアたちが床下に隠れて、ロッド(棒)を使って操っているんですけど、あの輸送車のセットは中に入ると映画を撮っている感じがなくなってしまう、特別な空気が流れる空間になっていました。それで子供たちをあのセットに連れて行って、ブルーに噛みつくような動作をさせると、彼らの目が輝くんですよね。
負傷したブルーへ輸血を試みるシーンより
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――物語の最後は、展開があまりにも拡がり過ぎてしまい、「いったいここからどう収束するんだ」と心配になるんですが、次回のストーリーはどうなるんでしょうか(笑)?
トレボロウ:もちろん今ここで、それを明かすことはできません(笑)。自分としては、バヨナがつくった映画を観て、人々が「次はどうなるんだろうね」と話題にしてくれることが重要なのです。逆に「ああ、なるほどね。ふーん」と、大した関心を抱いてもらえないのは最悪なので、皆さんに期待をもっていただけるのがもっとも嬉しい反応です(笑)。
――本日は、ありがとうございました。
info.
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『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
2018年7月13日(金)全国ロードショー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、コリン・トレボロウ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー、ベレン・アティエンサ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
脚本:デレク・コノリー、コリン・トレボロウ
監督:J・A・バヨナ
VFX制作:Industrial Light and Magic、Important Looking Pirates、One Of Us、Scanline VFXほか
配給:東宝東和
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