ダイナミックな造形美で独特な作家性を発揮するVillard代表・岡田恵太氏。ハリウッドをはじめ、国内外の熱い期待に応え続ける岡田氏の生み出す作品は、洋の東西を問わず根強い人気を誇っている。Villard設立から早5年、連載「Villard スカルプティング・ラウンジ」が3周年を迎えた2021年。世の中が大きく変化する中、経営者として、そして第一線で活躍するデジタルクリエイターとして何を思い何を目指すのか。これまでの足跡をふり返りつつ、現在の思いを語ってもらった。
INTERVIEW&構成&EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)
「海外に出るか、会社設立か」
CGWORLD(以下、CGW):連載「Villard スカルプティング・ラウンジ」がついに3周年を迎えました。クライアントワークと並行して連載を続けるというのは、本当に大変だと思います。これまでをふり返っていかがですか?
岡田恵太氏(以下、岡田):「気がつけばもう3年」という感じです。早いですね。
CGW:Villard設立から5年目を迎えられたとのことですが、岡田さんがCGの世界で仕事をしようと思った経緯を聞かせてください。
岡田:物心ついたときから絵や工作が好きだったこともあり、高校を卒業して大阪ゲームデザイナー学院に進学しました。デッサンやアナログをしっかりと勉強させてくれるようなカリキュラムの多い学校で、入学当初はキャラクターデザインや絵に対する思考が強かったです。というか、CGの存在を知ったのは2年生の頃だったので、専門学校1年目はZBrushもMayaも知らない状態で。デッサンなど絵を描く基礎を中心に学んでいました。
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岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp
CGW:2年生からCGを学び始めたということは、専門学校でCGを学んだのは1年間だけだったんですね。ずいぶん効率的に学びましたね!
岡田:どうなんでしょうね(笑)。ただ、CGを学ぶ設備は他の専門学校と比べるとあまり整っていなかったように思います。もし、もう少し充実した設備だったなら、CGに対するアプローチももっとちがっていたかもしれません。専門学校では基本的にLightWaveを授業で使っていたので、そのときにZBrushなども学んでみたかったなと思います。
CGW:基礎をLightWaveで身に付けて、ZBrushは独学だったんですね。専門学校を卒業した後はすぐに就職されたのですか?
岡田:はい。卒業してすぐに大阪のゲーム会社に入社しました。ただ、自分が携わりたかったクリーチャーなどを制作する機会があまりなくて。やっぱり仕事でしっかりとクリーチャーの制作業務に携わりたかったことと、東京に出たいという気持ちが強かったので、1年ほどで会社を辞めて上京することにしました。
CGW:上京する際、すでに就職先は決まっていたのですか?
岡田:いえ、何も決まっていませんでした。そのときはまだZBrushを触り始めた頃で実力も足りていませんでしたし、お金もそんなにあるわけではありませんでした。身体を動かすことは好きだったので、1年ほど「とび職(厳密には荷揚げ屋)」のアルバイトをしながらZBrushを勉強していました。現場の仕事って朝早いんですよ。就寝時間は21時~22時と、とても規則正しい生活を送っていました。
CGW:そんな経緯があったんですね! 身体を酷使する建築現場でのお仕事とCGの勉強を両立するのは大変でしたね。睡眠時間を惜しんでZBrushの勉強をされたようですし。
岡田:ほとんど寝ずに現場に出て5連勤とかしていましたね。日勤・夜勤を同じ日に続けて入れるなど、よくやっていたと思います。今は9時間くらい寝ないとしんどいときが増えましたね(笑)。
CGW: その後、東京での就職はすぐに決まったのですか?
岡田: 1年ほどそういう生活をした後にカプコン系列の会社でリーダーの経験をさせていただき、クリーチャーをはじめとするZBrushを使った仕事をさせていただくことになりました。また、CGだけではなくいわゆる「管理系の仕事」なども任せていただけたので、基本的なメールの書き方や作法などクリエイティブ以外のことも多く学ばせていただきました。
CGW: 最初からいきなり色々と任されていたんですね。当時からすでに実力が開花していたのでしょうか。
岡田:いやぁ、タイミングが良かったんだと思います。就職活動で「この会社に行きたい」とがんばって応募しても、落ちてしまうことってあるじゃないですか。でも、落ちる背景には実は様々な事情があったりするんですよね。「開発中のプロジェクトに合った人材が欲しい」だったり「すでに席が埋まっている」だったり。そういう会社都合に依るものもあるので、必ずしも「実力がないから」とか「下手だから」という理由だけで不採用となるわけではないケースもあります。自分の場合は、ちょうどタイミグが良かったので色々と任せていただけたんだと思います。実は、この後にフロム・ソフトウェアで業務委託として働くことになるのですが、それまで2回落ちていますからね。
CGW: 会社は様々な事情があって募集をかけますからね。3回目のチャレンジで、ようやく念願叶ってフロム・ソフトウェアで働けるようになったわけですね。
岡田: はい、3回目の挑戦でした。面接してくださった方とは今でも関わりがあって、2回落ちたことは笑い話になっています。「そういえば、2回も落としてくれましたよね」って(笑)。
CGW: 今でこそ笑って話せることですね。ところで、「落とされた理由」はどのようなものだったのでしょうか。
岡田: 先ほど言ったように「プロジェクトの内容」や「タイミング」もあったのかもしれませんが、それでも自分の場合は、やはり実力が足りていなかったと今も思います。
CGW:Villardを設立される前は、フリーランスとして1年単位で業務委託のお仕事をされていたんですね。
岡田:そうですね、自分の場合はだいたい1年ほどで変わることが多かったです。数か月では短いかもしれませんが、1年いるといろいろと見ることができると思うので。
CGW: 特に若いときは、できることや目標がどんどん変わってきますからね。その後、Villardを設立されたのでしょうか?
岡田:はい、25歳のときにVillardを設立しました。
CGW:年齢的にもかなり早い段階で会社設立を決意されたんですね。
岡田:そうですね。実は、会社設立を考えると同時に「自分も海外に出よう」とも考えていました。海外はZBrushも盛んですし、やはり若いときは海外への憧れがありますからね。それで「海外に出るか、会社設立か」と迷った末、「会社設立」を選びました。
CGW:どちらも捨てがたい選択肢だったかと思いますが、最終的に「会社設立」を選ばれたのはなぜですか?
岡田:その方が「自分の好きなように色々とできるのではないか」と考えていたからです。あと理由として大きかったのが、経営やビジネスといった「クリエイター業以外のこと」も、実際にやってみないと見えてこない部分があるとも思っていました。お金のことだったり仕事を取ってくることだったり。会社勤めをしていると、現場の人たちがそういったことを知る機会はなかなかないものですが、自分は若いうちにそういったことを経験したいという気持ちがあったんです。
CGW:なるほど。多くの人は、十分にキャリアを積んで人脈を形成してから会社を設立しようと考えがちですが、若いうちに設立してしまうというのも1つの方法かもしれませんね。
岡田:そうですね。若さゆえかはわかりませんが、当時は「何とでもなるだろう」という 気持ちが強かったです。例えば、よく「300万円貯まったら会社設立しよう」とか「もっとスキルアップしてから」とかいろいろと耳にしますが、そう言っているうちは行動しないものですよね。当然しっかりと考えなければならない部分もありますが、「勢い」も大切なんじゃないかと思うんです。
CGW:会社設立で頭をよぎるのは、経理や税務などの不安かと思います。岡田さんはご自身でも勉強されましたか?
岡田:設立前に必要なことはひと通り勉強しましたが、細かい計算は好きじゃないし、そもそも「したいことをしたいから会社をつくる」という考えが根底にありますからね。経理や税務はプロに任せてしまった方が確実で早いだろうと考えて、お願いすることにしました。
CGW:苦手なことをわざわざ自分でする必要はありませんからね。時間は有限でそういった時間にもお金がかかっているわけですし。
岡田:そうなんですよね。モデラーの仕事をしていても、中には「クリエイティブではないパート」が含まれている依頼があるのですが、そういったものが含まれる場合は、可能な限りお引き受けしないと決めています。やっぱり、自分に合わない仕事はできないんですよ。
CGW:明確に線引きされているんですね。とはいえ「ここ(クリエイティブではないパート)まで引き受けてもらわないと困る」と言われたりしませんか?
岡田:そうですね、確かにそういうこともありますが、経営者として仕事をするようになって、考え方が変わってきたところがあるんです。設立当初の話ですが、初めて外注に出す立場になったとき、やはり「お金を払っているんだからここまでやってくれよ」という気持ちがあったように思うんです。支払う側としては「そこまでしてもらわないと困る」ので、受注側が問題なくできることであればお互いに「Win-Win」ですが、逆にそこまではできない内容であれば、「無理して引き受けなくても良いのではないか」と考えるようになったんです。受け取り方によっては感じが悪いように聞こえるかもしれませんが、そこまで理解して取引できるところに頼んだ方が、お互いに効率良く仕事ができるのではないかなと。
CGW:わかります。何でも引き受けるというのではなく、自分に合った仕事を引き受けるということですよね。
岡田:そうですそうです。そんな感じで仕事を任せても、結局「クオリティが低い」と発注側は文句を言うことになるし、受注側も「この値段でここまで引き受けてあげている」という思いがどこかにあるわけです。そういうのはあまり良い状態ではないんじゃないかなと。
CGW:「お互いにとってのベスト」をしっかりと考慮した上での判断ですね。とても大切なことだと思います。
岡田:何が何でもその仕事を引き受けないと会社を維持することができない、というのであれば、嫌でも受けなければならないかもしれません。それぞれの都合もあると思いますが、やはり「得意な人に頼む」、「得意なことを引き受ける」、「専門にしている人にお願いする」というのがベストだと思います。
CGW:確かにそのとおりですね。少し話が発展しますが、イギリスで暮らし始めて間もない頃、道に転がっていたビンを蹴飛ばしそうだったので拾って捨てようとしたら、「良い心がけだとは思うけど、清掃を生業(なりわい)にしている人の仕事を奪うことになる。どう思う?」と問われたことがありました。「世の中にはその仕事を専門にすることで生活している人がいる」という考え方で、それがたとえ善意であっても、無闇に関わると誰かの仕事や生活を奪いかねないということです。当時の私にはなかった考え方でした。
岡田:なるほど。そういう考え方は共感できるし、お互いにとって良いことではないかと思います。会社がいろいろとやらせたがる背景には「利益」などの「会社都合」があるわけですが、経営側からすると1人のスタッフが何でもできた方が仕事を任せやすいんですよ。一方、スタッフひとりひとりにも「やりたいこと」がありますよね。そこで会社が何でも押し付けてくる......、と悪者のように捉えるのではなく、だったら自分のやりたいことができるであろう環境に行くか、そういう環境を作れば良いんだと思います。
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「経験に勝るものはない」
CGW:Villardの設立当初はスタッフを雇われていたんですよね。
岡田:はい。今は1人でやっていますが設立当初は3名ほど雇っていました。今でこそ1人でこなせていますが、当時は色々とスタッフに助けてもらいました。ただ、自分がクリエイティブなことをしながらの経営では難しいと感じ、両方ではなく「経営かクリエイティブ」のどちらかに専念した方が良いと考えました。これまでの経験から、会社の在り方としてどのようなものが正しいのだろうと日々考えてきました。本当に沢山の経験をさせてもらったおかげで、今では自分なりの答えが出たように思います。後は、世間がまだコロナ禍で先が見通せないというのもありますし、しばらくは1人でやっていこうかなと思っていますね。
CGW:世界はどんどん変わっていきますし、岡田さんのお考えやスタイルも、世の中の動きに柔軟に対応されているんですね。もしかしたら、またスタッフを迎えようと思うことがあるかもしれませんし。
岡田:そうですね。そういうときがきたら、またご縁のある方と一緒にお仕事をさせていただくことがあるかもしれません。ただ、一緒に働いてみたいなと思うのは「自分で色々と経験された方」ですね。自分もまだまだ吸収することは多くありますし、またちがった刺激を感じることができる気がするので。何事も「経験に勝るものはない」と思っています。
CGW:岡田さんは、海外のお仕事も沢山されていますが、どういったかたちで依頼が入ってくるのですか?
岡田:ArtStationやInstagram、Pinterestの「作品の関連付け」から自分の作品を知ってもらい、依頼のメールが来るというケースがほとんどです。その後、メールやビデオ会議で打ち合わせをするという感じですね。
CGW:ゲーム、映画、CMと多方面で活躍されていますが、特にこの業界で仕事がしたいという希望はありますか?
岡田:自分の好きなものを優先して作りたいとは思っています。ただ、最近はゲームでもかなりの情報量を扱うことができますし、本当に表現の幅は広がったので、そういった理由もあり特に「どの分野の仕事がしたい」と固執はしていないです。ということで、もし何かやりたいことがあるのにどうしてもできないのであれば、思い切って環境を変えてみるのも良いと思いますよ。だって、やりたいことを実現したくて、この業界に入ってきたんだから。
CGW:今後、ご自身のクリエイティブ活動にどのように向き合って生きていこうとお考えですか?
岡田:ここ数年、時間の使い方や金銭感覚、色々な方との交流により若い頃より様々な価値観が変化しました。自分の若い頃って、「お金が欲しい」とか「美味しいものを毎日食べたい」ということよりも「もっと有名になりたい」、「自分を認めてもらいたい」といった承認欲求が強かったんです。今はそういった承認欲求よりも、自分の活動や「本当にしたいことは何か?」といった自分自身を見つめることが多いように感じます。もしかしたら一生探していくものかもしれませんね。
CGW:いろいろなものを手に入れようとしますからね。お金も、仕事も、家庭も、時間も、幸せも......と。しかも、それらを手に入れることが「当たり前」と考えていたり。でも岡田さんは、中途半端になるくらいなら望まない。自分の準備ができたらそのときに考える、というお考えなんですね。
岡田:そうですね。例えば、「あのクルマ羨ましいな」とか「あのクリエイターは成功して羨ましいな」とか思うことがあるじゃないですか。でも実際は、良い思いばかりしているわけではなくて、それなりにいろいろと抱えているものがあると思うんですよね。苦労なんて誰にだってありますから。そういったことも、自分で経験しないとわからないことですよね。
CGW:これまで多くの方にお話を伺ってきましたが、そういったデジタル・アーティストたちは皆、特別才能に恵まれているとか、一段飛ばし、二段飛ばしで調子よく昇り詰めたようにイメージされがちですよね。でも実際に詳しくお話を聞いていると、実はとても普遍的なことで悩まれていたり、思うようにいかなかった時期にとても苦しまれていたり。そういった問題を全力で乗り越えて来られたんだなとつくづく思います。
岡田:そうなんですよね。めちゃくちゃ努力してますよね。中には、努力と捉えずそういったものすら楽しんでいる人もいますけどね(笑)。そういう方々は本当に強いと思います。上達するための練習すら「生活の一部」として普通にやってのけるんですよね。心から凄いなと思います。
CGW:岡田さんはどちらのタイプですか?
岡田:自分は、若い頃は練習ですら楽しめていたタイプだったと思います。学生の頃はサッカーの部活が終わった後、美術部に顔を出して先生に絵を見てもっらったり教えてもらったりしていました。もちろん上達することを止めたわけではないのですが、最近は少し価値観が変わってきたように感じています。特にネガティブなわけではないです。
CGW:もしかすると、次のフェーズに向かっているということかもしれませんね。新しい景色を見ようとしている......とか。
岡田:そうかもしれませんね。自分の「次の在り方」というか。そのあたりをいろいろと模索している最中なのかもしれません。
CGW:岡田さんが見たい「次の景色」はどのような景色なんでしょうね。連載で掲載している作品においても、いろいろと模索をされていたりするのでしょうか。
岡田:そうですね。毎月作品のテイストがちがうかと思いますが、自分の強みや持ち味を保ちつつも、「こういうテイストはどうだろう」と探っていたりします。
▲連載に掲載している作品のテイストも様々。岡田氏自身も日々R&Dを繰り返している
CGW:ちなみに、月1のペースで連載を続けていらっしゃいますが、連載用のモデルを制作するのに毎月どれくらいの時間をかけられているのですか?
岡田:だいたい1〜2日で作ると決めていますが、半日で作るときもあります。「やばい、原稿の提出は明日だ! やらなきゃ〜!」って(笑)。
CGW:クライアントワークが忙しい中、毎月本当にありがとうございます(泣)。少しでも楽しんで制作していただけたらと思います。何よりも身体が一番大切なので、くれぐれも無理をされないようにお願いします。
岡田:ありがとうございます。とび職をしていた頃からジムに通い始め、今でも週3で身体を鍛えにジムに行っていますし、風邪もしばらくひいていないし。いたって健康ですね。
CGW:かなり身体を鍛えられていらっしゃるようですね。
岡田:服が好きなので、きれいに着こなすためにも身体を鍛えているんです。
CGW:本当に毎日お忙しいかと思いますが、連載にしてもジムにしても、休まずコツコツと継続するのはかなり大変だと思います。やる気はあっても続かないものですからね。
岡田:なかなか続かない人は、完璧を求めすぎてるのかもしれません。ジムのトレーニングでも同じなんですが、1週間とか2週間続けたからといって何も変わらないんですよ。続ける秘訣は、「0か100か」ではなくてどうしても気持ちがのらないときでも「50%で良いからそれでもやる」なんですよ。連載も同じで、月によってはクオリティにばらつきがあると思うんです。100で作る月もあるし、すごく忙しくて50くらいの月もあります。でも50でも良いから見映えがするラインまでは作って提出する。「絶対に毎回100%の作品でなければならない」というルールがあれば別ですが、ある程度任せていただけるので、そういう感じでコツコツと続けていくのが良いのかなと思っています。
CGW:どうしても面倒に感じるときは誰しもありますが、「とりあえず50%クリアでOKとする」と考えると余裕が生まれますね。
岡田:あと自分は形から入るタイプなので、本格的なものをとりあえず揃えて、そこから気分を上げてスタートします。自分が良いと思ったものを身につけたり使ったり。何にしても、自分が「良い」と思ったらそれで良いんじゃないかなと。
CGW:モチベーションを維持する術(すべ)を知っておくことも重要なポイントですね。そのためには自分のことをよく知っておかなければならないわけですが。
岡田:例えば経営に関することにしても、いろいろとアドバイスをもらったりいくら言葉で教えてもらっても、アドバイスを自分で噛み砕くところまでなかなかいかなくて。自分で痛い目をみたり、自分で失敗したりしないとわからないんですよ。その結果、損失を被ることもありますが、自分で実際に体験してから吸収することが多いんです。「だから言ったじゃん」って言われますが、「いやいや、自分でやらんとわからんし」って。
CGW:聞いているだけだと納得感を得にくいし、やはり自分の経験だとリアルさが段違いですからね。やはり「経験に勝るものはない」ですね。
岡田:CGの勉強をするにしても、チュートリアルや本を見ると「自分でもできる」と思うし、確かに方法は理解できるかもしれません。でもいざ自分で作ってみると全然思い通りにいかないことが多いはずです。だから「体現する」ことが大切なんだと思います。恋愛でも同じじゃないですか。他人の意見を聞いたところで、絶対にその通りにはいかないですよ。ただ、「だから言ったじゃん」と後で言われるかもしれませんが(笑)。
CGW:おっしゃるとおりです! 本当にそうですよね。実際、3年間の連載を通してご自身で改めて気づいたことはありますか?
岡田:やはり「荒々しいもの」を作るのが好きなんだなということです。丁寧に作ってみるなどして手法をいろいろと試しましたが、「未完成な部分があるものに魅力を感じる」ことを改めて実感しています。連載で作るモデルも、荒削りなところがあったり、少し欠けているところがあったり。絵にしても描き殴ったものやラフなものが好きだったり。仕事となると未完成ではダメなので、きっちりと作らなければなりませんが、自分の作品として認識され評価されているのは荒々しさを感じる作品なので、それが自分の作家性なのかなと思うようになりました。
CGW:最後になりますが、今後の目標をお聞かせください。
岡田:自分の作家性を改めて認識することができたので、原点回帰ではありませんがもっと追求していこうかと考えています。Substance PainterやMARIなどの便利なツールがあるので、それら習得したスキルを駆使して、かつて制作した「未完成な感じの作品」のクオリティを上げるのも面白そうですね。今後も「自分のテイスト」をしっかりと出して行こうと思います。
CGW:岡田さん、今日はありがとうございました! これからも連載を楽しみにしています。