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    Sony Pictures Imageworksのアニメーターであり、オンラインスクールAnimationAidの講師も務める若杉 遼氏がTwitter上でお題に沿ったポーズ画を募集する「エイド宿題」。本連載では、その企画で集まった作品をピックアップし、若杉氏がドローオーバーによる添削とそのポイントを解説する。

    TEXT_若杉 遼 / Ryo Wakasugi(Sony​ Pictures​ Imageworks
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

    「エイド宿題」とは?

    今月から新しく連載を始めさせていただきます、若杉 遼です。この連載では、Twitterでの#エイド宿題という企画で皆さんが作ってくださったポーズにドローオーバー(画像の上からポーズの修正を描いたもの)を交えてポイントを解説していきたいと思います。

    「エイド宿題」はTwitterで始めたクリエイターの皆さんへ向けた新しい企画です。オンラインスクールAnimationAidのクラス内で出している「ポーズを作る」という課題を、Twitterでみんなでやってみようというとってもシンプルな企画です。

    ●参加方法とやり方

    ・毎週月曜日にTwitter(@ryowaks)でその週のお題を発表するので、そのお題に沿ったポーズを作ってみましょう。
    ・CGで作った、もしくは絵で描いたポーズにハッシュタグ(#エイド宿題)をつけてTwitterに上げましょう。
    ・ぜひハッシュタグで検索して、他の人が作ったポーズも見てみましょう。

    ●参考

    ・エイド宿題とは?
    https://ryowaks.com/what-is-aidshukudai/

    ・エイド宿題 これまでのお題
    https://ryowaks.com/category/aidshukudai/

    今回のお題

    1つめのお題は、9/24(月)~9/30(日)に実施した"退屈"です。TwitterとAnimationAidのクラスにて募集したなかから、2つの作品を選んで講評していきたいと思います。

    作品01:「退屈する」

    投稿作品

    説明がいらないくらいしっかりと「退屈」していて、(笑)パッと見た印象でとてもわかりやすく作られている良くできたポーズだと思います! 特に両手足の、ダランと垂れている具合が素晴らしいですね。この力の抜けている感は、「退屈する」の大きなポイントになると思います。

    力が抜けているか、入っているかは、感情の"種類"と"強度"によって変わってきます。この「退屈する」のお題の場合は、直感でもおわかりになると思いますが、基本的には、力が抜けている方向で大丈夫だと思います。

    ただし、ひとえに「退屈する」とは言え、"どれくらい"退屈しているか、ということが、どれくらい力を抜くか? に影響してきます。このあたり、力の抜け具合をしっかりと決めることで、逆に"どれくらい"退屈しているのかを自分で決めることができます。

    そのあたりを踏まえると、このポーズはかなりレベルの高い「退屈する」ポーズですよね。その方向性をどうしたらもっと誇張できるかな、と考えてドローオーバーを描かせてもらいました。

    ドローオーバー


    Point 1:つま先のポーズ

    まず最初に、先ほど触れた足が力なく垂れている感じが、つま先も巻き込んでもっと垂れている感じを表現できたら、もっともっと「退屈する」感が出るかなと思い、つま先を曲げてみました。

    Point 2:腰のもたれかかっている感

    次に、腰の部分。椅子にもたれかかったポーズを作るのは意外と難しいですよね。僕は、巻かれたカーペット的なものを椅子にもたせかけた感じをイメージします。

    背中の胸部分と骨盤部分で、ざっくりでいいので、このように折れた感じを出すと、力なくもたれかかっている印象になるかなと思いました。

    Point 3:首の回転

    最後に首ももっと後ろに回転させた方が、同じく力が抜けている印象をもっと誇張できるのではないかなと思いました。

    作品02:「退屈する」

    投稿作品

    2つ目も同じく1週目のお題から、ポーズを選ばせてもらいました。このポーズは、腕の置き方が本当に良いですよね。腕の背もたれへの乗せ方がとても雑で、「退屈する」感じを明確に表現していて素晴らしいです。少し内股になっている部分もこのキャラクターの女の子らしさを表現していて、感情表現だけでなくしっかりとキャラクター性も見ている人に伝えようという意識が感じ取れます。

    先ほどのポーズと大きくちがうのは、このキャラクターには顔があるので、表情が大事なポイントになるということです。最初に目がいくのはやはりキャラクターの顔なので、その部分をもう少しだけわかりやすく見せるパターンもアリかなという印象でした。

    ドローオーバー


    Point 1:腕の垂れ具合

    全体的に体のポーズはとても良くできていると思いました。特に右腕が垂れている感じは「退屈する」様子をわかりやすく表現していると思うので、その部分をもっとシンプルに、もっとわかりやすく見せるために、まっすぐ下ろしても良いでしょう。

    Point 2:まぶたと目線

    まぶたはもう少し閉じて、半開きくらいにしておくともっと「退屈する」感を表現できるかと思います。また、目線も、どこか別のところにもっていった方が、集中力が欠けている=「退屈する」という印象をより誇張できるのではという提案です。

    Point 3:口角を下げる

    最後に、本当に若干で良いので、少し口角を下げることでネガティブな雰囲気を出せるかな、と思いました(崩した体のポーズなど、全体の印象的に、ネガティブな雰囲気をもった「退屈する」ポーズを作ろうとしているのかなという印象があったので)。

    今回の添削はこんな感じです。最後に、いつもエイド宿題に参加してくださってありがとうございます! 皆さん本当に素晴らしいポーズを作ってくださるので、僕も勉強させていただいています。ぜひまた今後も参加してくださると嬉しいです!

    Profile.