Framestoreで活動中の今川真史氏が解説する本誌の連載と連動して、メイキング動画とコラムをお届けする。
TEXT_今川真史 / Masashi Imagawa(Framestore)
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada(CGWORLD)
画面の情報量を増やすためにディテールを足す
今月は、前回から制作している宇宙船の着陸までのシークエンスの2カット目です。宇宙船が雲の中を進むショットで、宇宙船は3DCGで作成し、背景や雷、雲は2D素材を使って完成させました。
暗いシーンでカメラも速く動くカットなので、作業を始めた当初は、暗さとモーションブラーで画面の情報量が少なくなり、フラットな画になってしまいました。そこで、画面の情報量を増やすために「要素」を足していくことにしました。要は、ディテールを足していく作業です。
仕事をしていると、画面の情報量に驚かされます。現在参加しているプロジェクトは4Kなのですが、撮影素材のディテールがものすごいです。最近はキーイングの作業をしていて、髪の毛1本1本が鮮明に見えるので苦労しました。フルCGのショットも担当しているのですが、ライティングから送られてくるCGのクオリティも高くてびっくりします。マットペイントは8Kの素材を6枚組み合わせて作業するので、本当に精密なディテールがあります。
ただ、ディテールがあれば良いということではありません。逆にディテールがありすぎるという指摘をスーパーバイザーから受けて、コンポジットでディテールを意図的になくすときもあります。なので、最近はとにかくディテール=画面の情報量を増やし、最後に画面のバランスを見てディテールをなくし、画面の中のディテールのコントラストを意識してコンポジットしています。
今回は雷が鳴ったときのディテールを詰めました。最初はグローと光る雲だけでフラットだったので、反射する雨粒やレンズフレア、レンズのゴミ、宇宙船のスペキュラのディテールなどの要素を足して、さらに、それぞれのディテールを詰めました。雷自体にもNoiseノードを使って光の粒を追加し、ディテールを加えています。
先日、夜に散歩をしていて思ったのが、夜のビルの窓の光を再現しようとしたときに、1枚の白い四角で済ますのか、中の電球まで描くのか、反射しているインテリアまで描くのか、電球の光の芯まで描くのか、という具合にディテールを分けられるなと思いました。
現実世界のディテールは果てしないです。
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Profile.
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今川真史/Masashi Imagawa
Framestore/コンポジター
京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。大学1年次に受けた授業をきっかけに、ほぼ独学で3DCGを学ぶ。自主制作作品『THE SEABED』でKLab Creative Fes'17動画部門グランプリ受賞。MPC モントリオールを経て、現在はFramestoreに在籍
www.artstation.com/masashivfx321