Visual Computing 〜CGや視覚情報処理の研究〜
Visual Computingでは、プロシージャルモデリング、質感表現、アニメーション、画像処理などの研究を進めています。また、コンテンツ制作支援技術や視覚感性情報処理などにも取り組んでいます。
プロシージャルモデリングに関しては、手作業での制作に多大な時間を要する大量の幾何形状をプロシージャルに生成することで、制作支援を目指す研究を行なっています。本稿で紹介する研究事例では、ユーザーがほしい形状や模様の概略を手動で指定すると、細部が自動生成される手法を提案しています。
▲手作業での制作に多大な時間を要する大量の幾何形状をプロシージャルに生成することで、制作支援を目指した研究事例です。【左】任意の構成要素を指定した形状に凝集させたモデル/【右】3D歯車集合体モデル。歯車をひとつ回転させると、全ての歯車が互いにかみ合い回転する状態にあります
▲【左】大規模工場の景観シミュレーション/【右】加賀友禅のデザイン支援
質感表現に関しては、漆工芸品のビジュアルシミュレーションの研究などを行なっています。アニメーションに関しては、複雑な軌跡を描くミサイルの表現や、自由落下現象のリアルタイム生成の研究などを行なっています。
▲漆工芸に用いられる金箔、および漆の波長ごとの反射率の計測データを用いた素材表現の例。金箔は表面の微細なシワによって質感が大きく左右されるため、レーザー変位測定器で実際の金箔を測定した結果を基に、金箔のシワの凹凸を表現しています
視覚感性情報処理に関しては、カラーパレットの評価モデルを機械学習させ、与えられたパレットの色調に合う追加色を提案する配色支援の研究や、フォント特徴量を対話型遺伝的アルゴリズムと類似検索に適用することで、効率的なフォント検索を支援する研究などを行なっています。
▲本研究では、大規模なカラーパレットの評価データセットを用いて、カラーパレットの評価モデルを機械学習させ、未知のパレットに対しても美的評価が可能な予測モデルを構築しています。さらに与えられたパレットの色調に合う追加色を提案することで、配色支援を目指しています
以上のように本研究室では、映像制作の支援技術や、産業界での実利用に直結するテーマを中心に研究を進めています。
Fun Computing 〜デジタルメディアによる楽しみの創出の研究〜
Fun Computingとは、人を楽しませるためのメディア技術の応用法を意味する造語です。Fun Computingは、エンターテインメント分野のみならず、身体トレーニングやリハビリテーションなど、活動への動機付けが必要とされるほかの分野も研究対象に含んでいます。例えば本稿で紹介する「Spider Hero」「風景バーテンダー」「積み木キャッスル」などの研究事例は、様々な分野での活用を視野に入れています。
▲CGで構築した都市空間を、スパイダーマンのようにクモの糸を使って自由に飛び回ることができるVRアプリケーションです。本アプリケーションでは、張力提示システムを用いて、クモの糸で引っ張られる感覚を体験者に与え、スパイダーマンがもつ超人的な能力を使用する楽しさを提供しています。これにより、幅広い年齢層の人が楽しみながら身体を動かすことを可能にしました
▲カクテルのアナロジーを用いて、岩や樹木、水などの風景の要素を材料とし、それらをシェーカーで振り混ぜることで風景のCGを制作します。風景CGはシェーカーを振ることでリアルタイムに変化するため、体験者は風景画像を制作している感覚を味わうことができます
人が生み出してきた価値を活かし、新たな価値を生み出す
CG技術はすでに生活の中に深く浸透している基幹技術でもあるため、遍在する表現技術、インターフェイス技術としてさらに発展していくことでしょう。今後は、ごく当たり前のものとして使われている技術を、どのような場面に応用し、人々の生活にどのように貢献していくかを考え抜くことが重要であると捉えています。
本研究室では、技術偏重の教育ではなく、「人」の役に立つにはどうすればいいのか、どのような問題があり、どのように解決するのか、といった知識創造を重視した教育を目指しています。技術そのものを学ぶこと以上に、人が生み出してきた価値を活かし、新たな価値を生み出すための学びの場の提供に注力していきたいです。