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No.006:北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 宮田研究室

No.006:北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 宮田研究室

RESEARCH 2:積み木キャッスル

・研究目的

本研究では、子供の創造力や認知力の向上に有効であるとされている積み木を題材としたインタラクティブなおもちゃを提案しました[1]。本研究の体験者は、現実世界で積み上げた積み木が、CGで演出された世界で、装飾を施した城へとダイナミックに変化する様子を楽しむことができます。単純な積み木が複雑なCGへと変化する様子は、遊びに対するモチベーションを高めることにつながると考えました。


・関連研究

遊びの体験を拡張する研究は、これまでにも報告されています。AR技術をコマ遊びに適用したEnhanced interaction with physical toysでは、ビデオゲームの要素を加えることで豊かなインタラクティブ体験を提供でき、コマの動きの観察が、物理現象の理解の支援にもつながるとされています[2]。またRope Plusでは、小型のフォースフィードバック機構に操作用ロープを接続したタンジブルインターフェイスを介し、縄跳びや凧揚げなどのロープを用いた身体運動を伴う遊びを遠隔地間で楽しめます[3]。


・本システムの概要

本システムには、内部を5×5の縦長の升目に分割した透明アクリル製のケースが設置されており、体験者は4種類の異なる形状の積み木ブロックをケース内に自由に落とし入れ、任意の形状へと積み上げていきます。ケース内に積み木ブロックが落ちると、ケース底面に設置した照明システムが積み木ブロックを照らし出し、CGの仮想世界にも、現実世界と同じ形状、同じ配置の積み木ブロックが出現します。さらに仮想世界の積み木ブロックは、リアルタイムにCGの城を構成するパーツへと変換されます。

▲本システムは、インターフェイスモジュール、センシングモジュール、シーン生成モジュールで構成されています。インターフェイスモジュールは体験者が積み木ブロックを積み上げる部分で、透明アクリル製のケース(図内【a】)と2台のプロジェクタを設置したテーブルで構成されています。ケース内は5×5の縦長の升目に分割してあり、各升目の中に積み木ブロックを積み上げていきます。また、積み木ブロックを落とし入れるたびに、プロジェクタと鏡を使った照明システムがケース底面から動的に積み木ブロックを照らし出します。なお、積み木ブロックは種類によって重さが異なります。センシングモジュールは、レーザーアレイ(図内b)とデジタルスケール(図内c)で構成されています。前者は積み木ブロックが積まれた位置を検出し、現実世界と仮想世界の位置情報を合致させます。後者は積み木ブロックの重さを測ることで、積み木ブロックの種類を検出します。シーン生成モジュールは、Unityを用いてCGの城と周りの風景をリアルタイムに生成します


以上の過程を経て、体験者は、単純な形状の積み木ブロックを積み上げるという現実世界の遊びを、仮想世界でCGの城を構築する遊びへと拡張することができます。ただし、一度落とし入れた積み木ブロックは体験終了まで取り出せないため、自分の望む城を創造するには、積み木ブロックをどう配置すれば良いか注意深く考える必要があります。無作為に積み木ブロックを配置すると、城の基盤となるパーツが屋根の上に出現したりして、奇妙な城が生成されることになります。

城をつくり終えたら、あらかじめ用意された風景パターンの中から任意の風景を選び、好きな角度から自分が制作した作品を鑑賞できます。また、積み上げたお城を崩す爆破機能もあり、創造する楽しみと、破壊の爽快感の両方を味わえます。

本研究における体験をデザインする上では、体験者が違和感なく直感的に楽しめることを一番重視しました。そのために、現実世界の積み木ブロックが、CGの城へと変換されるタイミングに留意しています。本研究のシステムでは、ケースを仮想世界の入り口とみなし、体験者がケース内に積み木ブロックを落とし入れるタイミングで、CGの城が出現するようにしました。

▲【左】インターフェイスモジュール。ケースの外寸は250mm角×高さ350mmで、間仕切りの間隔は35mm角です/【右】積み木ブロックを落とし入れるタイミングで、CGの城が出現します


▲【左】フランスで開催されたLaval Virtual 2013にて、本システムを体験する来場者の様子。アンケートに回答してくれた70名全員が、「本システムは楽しかったか」という質問に対し「楽しかった」と答えました。一方で「イメージ通りの城ができたか」という質問に対しては、約6割が「いいえ」と答えました。イメージ通りにできないことが、再挑戦の動機になっているように見受けられました/【右】本システムによって生成されたCGの城と周りの風景。センシングモジュールから送られた文字列のシリアルデータをUnityで読みとり、ケースのセルに対応する5×5の配列に格納し、CGの城を構成するパーツへと変換します


▲積み木キャッスルの紹介映像


・今後の展望

体験者が実際に遊ぶ様子を観察したところ、未就学児は、ケースに積み木ブロックを落とし入れること自体に夢中になり、でたらめに積み木ブロックを積み上げて楽しんでいる事例が多く見られました。それとは対照的に、小学生以上の子供は、自分の望む城を創造するため、積み木ブロックをケース内にどう落とし入れるかを吟味し、表示されるCGの城を常に確認している事例が多く見られました。

本システムではケース内の間仕切りによる物理的な制約から、どのように積み木ブロックを積んでもバランスが崩れて崩壊することはありません。この点は、現実空間での積み木遊びとの決定的なちがいであり、楽しみながらも物理現象を自然に学べるという設計にはいたっていません。一方で、一度積み上げたブロックを再配置できないという欠点は、パズル的な要素を含んでおり、構造物を計画的につくり上げるプロセスを楽しむことができます。

今後は、子供の創造力をさらにかきたてるため、例えば下方に空間がある橋のようなパーツの積み上げも可能にするなど、遊びのバリエーションを増やしていきたいと考えています。

・参考文献

[1]J. Nagai, T. Numano, T. Higashi, M. Tessier, K. Miyata, "TSUMIKI CASTLE: Interactive VR System Using Toy Blocks", Proc. of VRIC2013, #26, pp.1-7, 2013.
[2]Yasushi, M., Toshiki, S., and Hideki, K., "Enhanced interaction with physical toys", Proceedings of the ACM International Conference on Interactive Tabletops and Surfaces, pp.57-60, 2011.
[3]Yao, L., Dasgupta, S., Cheng, N., Spingarn, J., Rudakevych, P., Ishii, H., "Rope Plus -bridging distances with social and kinesthetic rope games", CHI 2011 Extended Abstracts, pp.223-232, 2011.



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