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No.010:東京都市大学 情報工学部 画像工学研究室

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「可視化による役立つCG」「楽しいCG」の研究に努める

ここからは、私のゼミで行なっている研究をご紹介します。学生たちは私が学生の頃から一貫して色彩と画像処理の研究を行なってきたことを知った上で配属を希望するので、類似の研究テーマを選ぶ人が多いです。これに関しては次項で詳しく解説するため、そのほかの研究テーマについて簡単にご紹介します。「百聞は一見に如かず」という言葉は、CGのメリットを伝えるときによく用いられます。せっかく視覚による刺激的な情報伝達ができるというメリットがあるのですから、「可視化による役立つCG」「楽しいCG」の研究に努めています。

まずは「可視化による役立つCG」の研究事例を2つご紹介します。レゴに代表されるブロック玩具は、ブロックを自由に組み立てて想像力を膨らませられる点が大きな魅力ですが、組み立てキットが多く販売されていることからわかるように、ある程度精巧なモデルをつくるには設計図が必要になります。しかしながら、販売されているキットの種類は限られています。そこでつくりたいモデルの組み立てを可能にするため、任意のポリゴンデータから、レゴの設計図を自動生成する方法を提案しました[3]。現在は本手法を拡張し、複数色のブロックを用いることで元データの模様なども表現できる設計図の生成や、少ない数のブロックで組み立てる場合でも足先などの細いパーツが統合されたり消えたりしない設計図の生成も試みています[4]。

[3]Sumiaki Ono, Alexis André, Youngha Chang, Masayuki Nakajima, "LEGO Builder: Automatic Generation of LEGO Assembly Manual from 3D Polygon Model", ITE MTA, Vol.1, No.4, pp.354-360(2013)
[4]石毛勇哉, 張 英夏, 向井信彦, "小規模ブロック作品のためのボクセルモデル低解像度化手法", 映像情報メディア学会, 12A-2(2018)

▲ ポリゴンデータからレゴの設計図を自動生成した例[4]。【左上】入力ポリゴンモデル/【右上】出力された設計図の一部。設計図は積み上げる層ごとに順番に表示されます/【左下】従来手法によるポリゴンデータのボクセル化。低解像度でボクセル化したため、像の足先の部分が統合されています/【右下】提案手法によるボクセル化。像の足先の部分が分かれて表現されています


数学の学習において、3次元図形分野は苦手意識をもたれやすいことが知られており[5]、特に展開図から立体を想像することが難しいという問題が指摘されています。頭の中で想像することが難しい場合には、展開図を印刷し、紙を切り、実際に組み立ててみることで理解を深めることができますが、時間と手間がかかります。そこで、任意の展開図を撮影して入力すると、その組み立て手順を自動推定し、可視化してくれる学習支援システムの研究も行なっています。

[5]杉中佑砂, "なぜ数学が嫌いになるの?---好きな人と嫌いな人の意識の違い", 東京工芸大学 講義課題レポート(2019年参照)


「楽しいCG」の研究では、のっぺりしたフェルト筆を使い多彩な色のグラデーションによって花文字と呼ばれる縁起物の文字を描く花文字描画シミュレータの研究[6]、ARシステムのための光源推定を行う研究、ARを使った記念撮影システムの研究など、基盤技術から応用技術まで、幅広い研究を行なっています。

[6]村治能博, 張 英夏, 向井信彦: 対話的描画のためのフェルト筆シミュレータの構築, NICOGRAPH 2017, pp.41-47(2017年)

▲【左上】 花文字の描画に用いる筆。花文字の描画では、フェルトでつくられた独特の筆を用います/【右上】フェルト部分の拡大図。大量の毛が絡み合っていることがわかります/【左下】花文字描画シミュレータで実装したフェルト筆。筆の内部での混色や、インクの移流などを再現しています/【右下】花文字描画シミュレータによる描画の例。筆に複数のインクをつけ、グラデーションを生成しながら描画しています。本シミュレータは、実時間でインタラクティブに動くように工夫しています。なお、この図案は日本花文字の会の山本卓二先生の作品の一部を模写したものです

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