ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は「吸血鬼」を造形していきます。
TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.)
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)
中性的で美しい「吸血鬼」を造形
吸血鬼はメジャーなモチーフなので、ビジュアルに関しては人によって様々な解釈があると思います。今回は実在する動物「ウサギコウモリ」を参考に、生物的で「クリーチャー寄り」なデザインにしていきます。いつものような荒々しい造形ではなく、X-genderのように中性的な雰囲気にして、美しさを感じるよう仕上げていきたいと思います。
主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2021
・KeyShot 8
STEP 01:顔(頭部)の造形
今回も顔の造形から始めましょう。骨格を意識して、シルエットに重点を置いて進めていきます。
▲【1】顔を造形します
▲【2】頭蓋骨から首筋を意識します
▲【3】頭頂部のバランスも意識します
▲【4】さらにバランスを整えていきます
▲【5】耳を作成します
▲【6】耳を大きい印象にしていきます
STEP 02:身体の造形
身体の造形を進めていきます。パーツを足していくイメージで、身体→翼と作成していきます。ディテールはあまり気にせず、アナトミーを意識しましょう。また、想像ではなく、資料をしっかり観察します。資料をあまり参照せずに造形すると、慣れている骨格やバランスになりやすいからです。
▲【1】身体を作成していきます
▲【2】腕を作成します
▲【3】ディテールを入れながら筋肉を整えていきます。丁寧な彫り込みはまだしなくて良いです
▲【4】翼の軸を作成します
▲【5】軸のバランスを整えます
▲【6】一度、ZRemesherを使い身体のメッシュを整えます
STEP 03:中間ディテールの作成
全体的に造形ができてきたので、中間ディテールを作成していきましょう。綺麗で品のある雰囲気を意識し、彫り込みすぎないようにします。
▲【1】口を造形していきます
▲【2】歯を作成し、不気味さが出るように彫り進めていきます
▲【3】口元を彫り込んでいきます
▲【4】額や目元も調整していきます
▲【5】耳の造形を詰めていきます
▲【6】翼の膜を作成します
▲【7】腹部周辺は、女性の柔らかさが残るように彫り進めていきます
次ページ:
STEP 04:全体の造形を仕上げていく
〜詳細ディテールの作成〜
STEP 04:全体の造形を仕上げていく〜詳細ディテールの作成〜
アルファを使いながらディテールを足していきましょう。顔に視線が集まるようにしたいので、顔と身体との密度に留意しつつディテールを足していきます。
▲【1】細かいシワなどを足していきます
▲【2】口元を中心にディテールを足します
▲【3】血管なども足していきます
▲【4】お腹まわりには、あまりディテールを入れすぎないように注意
▲【5】最後に顔の角度を少し調整して、造形は完了です
▲【6】ZBrushでのレンダリング画像
STEP 05:レンダリング
造形が完了したので、KeyShotでレンダリングを行います。今回は、シンプルに造形とライティングのみで美しさを表現したかったので、テクスチャ作業は行なっていません。
今回は、これまで筆者があまりつくってこなかった、中性的で不気味さを感じるモチーフになったかと思います。シンプルに造形美を意識した作風も楽しいですね。仕事によっては求められる雰囲気が異なることもあるので、制作のスタイルをいくつか使い分けられると、仕事の幅も広がるのではないでしょうか。
Profile.
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岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp