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vol.007:龍珠 / 「S字」を味方につける

vol.007:龍珠 / 「S字」を味方につける

画にプラス要素を。

画には法則があります。
それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。
そして願わくば貴方の人生に+画を。

今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Turorials』と連携してお届けします。



TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



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龍珠 〜如意宝珠〜

「龍珠」というのは、龍が手に持っているアレですね。正式名称は「如意宝珠」という仏教において霊験を表すとされる宝の珠のことで、サンスクリット語では「チンターマニ」と呼ばれるそうです。

意のままに願いをかなえる珠......、「ドラ〇ンボールじゃん」って言われたらそうなんですが、「龍珠」は特に7つである必要はなさそうです(笑)。

昔からこの手のお話はどこにでもありますよね。 不老長寿や黄泉帰りなど、何でも願いを叶えてくれるという、そんなお話。昨今流行している「異世界」などのお話も、未来では「そんな信仰があったな」などと語られているのかもしれません。いつの時代も人は「そこより別のさらに良いところ」に憧れるものです。そういった進化の心が人類の発展に貢献してきたのでしょう。

ところで、なぜ今回は「龍珠」なのかというと、連載『画龍点睛』の頃から「この時期には龍をモチーフに」と作品を創ることを心掛けているからです。

同じモチーフの制作も、年数が重なっていくと「そのときに考えていたこと」や「社会情勢」といった歴史的なことが感じられます。自画像でこういったことをされる方が多いですね。名画でも、自画像が年代別に変わっていくところを解説されていたりなかったり。

今回はモチーフの通り、「もうそろそろ願いよ叶え」といったところでしょうか。
世の中がより良い方向に進みますように。




<画創の法則>
「画創のS」

さて今回のお話は、連載開始から度々登場し「何ぞや?」と思っている方もいらっしゃるかと思われる「画創のS」について。

ところで「S」って?

これが不思議な形で自然界じゃなかった、画界とでも言いましょうか。画界には「Sの字」がとても多く存在しています。この「文字に例えて使う表現」は「T字路」とか「S字カーブ」といった具合に、様々ありますよね。

S字の流れを作ると格好良く見えるものですが、ここで改めて「自然界にあるS字」について考えてみましょう。

某有名ヒーロー映画のタイトルでも、某メーカーのロゴでもありませんが......。

過去の作品ですが、この鯉の動きや流れは単調で真っ直ぐでも良かったかもしれません。しかしあえて「ねじれるようなS字」にした方が、急流を登っているような「のぼり鯉」や「登竜門」といったイメージが強く出てきます。

生き物だけではなく、こういったメカ作品にも応用できます。レイアウトのバランスにこの「S字」を用いることで、単調ではないまさに「ちょっとひねったような画」に動きを与えることができます。

実は、画龍のキャラクターである白龍もこの法則を使用しています。この事例の場合は上の方しか見えませんが、「逆S字」を意識したポーズになっています。世の中に疑問をなげかける「?(クエスチョンマーク)」の形も意図しています。こういった「モチーフに意思を込めた形」をもたせるといった手法を聞いたことがあるかと思います。「サブリミナル」の一種ですね。これに関しては様々な議論を呼んでいますが。

この「S字」は、実はパラメータなどの中にも隠されていたりします。メジャーな例では「トーンカーブ」ですね。カラコレで最も使用するツールです。

いじりだすと、こういった複雑な形状になりがちです。

このようにすっきり整理して「S字」にするだけで、見映えがとても良くなります。

シグモイド(英: sigmoid)とは、ギリシア文字シグマ (σ) の語末形(ς)に似た形のこと。S字形ともいう。特に各種グラフに現れるシグモイド曲線 (英: sigmoid curve) を指す。このようなグラフは個体群増加や、ある閾値以上で起きる反応(例えば急性毒性試験での死亡率)などに見られる。

......とまあ、世の中にはいろいろと名前がついているものですねと(笑)。これは、実は「仕上げの法則」にある「S字補正」の方法になるのですが、ほとんどの画が「S字」を使用することで、見映えが良くなるという魔法の形です。

このように、一見ぱっとしないグレートーンな画像も、S字を使用するとコントラストの効いた画になっていきます。

こういったモヤっとした画にも効果ありです。
これは写真などのカラコレツールでごく当たり前のように使用されていますが、CGはリニアなので平坦になりがちです。この平坦さをS字を使ってひねりあげることで、画のバランスが格好良く整っていきます。というわけで、今回の作例のどこに採り入れられているかというと......

くるっと後ろから見てみると、ありましたね「S」が。
今回はこのS字を使って「珠にからみつくポーズ」を作成しています。

ポーズについては「これが正しい」というわけでなくいろいろと考えられると思いますが、やはり単調になってしまうのは否めません。

かといってあまり複雑にしすぎてもごちゃごちゃしてしまい、肝心のモチーフが見えにくくなってしまいます。

その点、「S字のポーズ」はどの方向から眺めても異なった表情を見せてくれる 「万能ポーズ」とも言えるでしょう。

このように7つ置いても、回転させても「コピー感」が薄くなります。

シーンのレイアウトについては、いろいろと悩んだ挙句、王道的に円系レイアウトの変形 数の7で「7角形」にしました。これは最終画像のアウトプットが正方形であることも考慮に入れています。これが画角のちがうものであったら、レイアウトも大きく変更しなければなりません。

例えば、HDサイズのような横長であれば円形では左右が余ってしまうので、横長のレイアウトの方が落ち着くでしょう。

縦長であれば、これもまた変形レイアウトの方が見映えがしますね。図は北斗七星をレイアウトの基準にしてみました。「北斗神拳」な感じです。

ここでレイアウトについてですが、なかなか悩んで上手くいかないときは「王道のパターンを模写する」方法が良いでしょう。特に図形は良いパターンになると思いますし、デザイナーなどは「いにしえの絵画のレイアウト」を参考にしたりしているものです。「よく見ること」が「よく描けること」の第一歩になるということです。

次に画についてですが、そういえば昔、「何をつくったら良いのか?」とか「どう調べたら良いのか?」といった質問を受けたことがあります。これらは、そう言われてみると私も先輩などに指導されながら、知らず知らずのうちに身に付いてきたことのように思います。

そんな私なりのものの考え方や調べ方をチュートリアルムービーでお話していますので、ぜひご覧ください。


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Composite

「眼の常識」と「観察眼」

今回はコンポジットというほどの解説ではないのですが、

ちょっとレンダリングに失敗してしまい、計算終了した画像を読み込んだら真っ白に。こういったガッカリ感は、このお仕事をされていれば何度か遭遇することになるかと思うのですが......

露出を下げたら出てきたので、本当「32ビット様様」ですねえ。

今回効いているのは被写界深度ですね。これはどのような画像でも効果はテキメンかと思います。実際、カメラで撮影すればほとんどの場合このような被写界深度は発生するので、 私たちの「眼の常識」としてインプットされているのでしょう。

今回お話したS字構造は、「毎日の慣れ」のようなところもあるので、例えば日常の散歩や通勤、家の中などでも良いので、「S字」を探してみると面白いかもしれません。これを「観察眼」というのですが、「画の眼」を鍛える方法の1つと推奨しています。

観察眼についてはどこかでご説明しようかと思ってますが、私の講演ではすでに何回かお話させていただいてます。不定期ですが、現在はWebで講演もしておりますので、TwitterやFacebookで告知を見かけたら、ぜひご参加ください。


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