ZBrushでもHoudiniでもなく、UE5とWorld Machineを用いたランドスケープ作成の基礎を何度かに渡って解説していきます。今回はPart 1です。

記事の目次

    「予想のはるか上」の利便性を発揮するUE5

    UE5は映像用途の「アセンブリ的活用」においても存分に力を発揮するツールであることは周知の事実かと思います。実際に使ってみても予想のはるか上を行く利便性を感じたので、まだまだ勉強中の身ではありますがこうして記事にまとめさせていただきました。今後もZBrushやHoudiniと連携して様々なアウトプットに活用していきますが、今回はランドスケープの解説から始めさせていただきます。ベースの地形デザイン用途では「World Machine」という安価なスタンドアロンアプリも使用していますのでまずはその解説から。

    【1】「World Machine」について

    World Machineというアプリケーションは、地形作成に特化したスタンドアロンソフトウェアです。パラメータによる地形形状の調節から、より直感的なレイアウトツールでの地形デザイン、河川の指向性や浸食なども調節することが可能で、最終的にはそれらをTextureとしてエクスポートすることができます。

    【2】World Machineを起ち上げる

    World Machineの解説から始めます。アプリを起ち上げると、まずは図のようなノードエディタが表示されます。左から右のノードへと処理が移行していき、最終的に一番右に位置する赤い四角のノード [HeightOutput] と [BitmapOutput] へ流れていくといった構造です。左上には小さくプレビューウィンドウが表示されています。

    【3】3Dビューで確認

    しっかりと結果を確認したい際は3Dビューで確認することも可能です。

    【4】 Advanced Parlinノード

    まず一番左にある 「Advanced Parlinノード」ですが、これは「ノイズの種類」のノードになります。Perlinノイズを地形のベース形状として使用しているような感じです。ノードをダブルクリックするとプロパティウィンドウが開き、ここに用意されてるパラメータを変更して地形のデザインを変更していくことができます。15種類のプリセットも標準で用意されているので、プリセットの中から適当なものを選び、その後にパラメータの数値を変えていくだけでもかなり様々な地形デザインの結果が得られます。

    【5】Curvesノード

    続いて「Curvesノード」です。名前の通り、カーブを用いて地形の高さと対応する形を決めることができます。

    【6】Curvesノードで地形を作成してみる

    Curvesノードの形次第でも様々な環境の地形を作成することができるでしょう。

    【7】Erosionノード

    「Erosionノード」は浸食を司るノードで、プロパティ内では浸食の年月や断崖の険しさなども調節可能です。浸食表現はフォトリアルな地形作成では欠かせない要素です。

    【8】QuickTextureノード(Macro)

    「QuickTextureノード(Macro)」では、地形全体の色味や標高によって変わりゆく質感のベースとなるテクスチャを決めることができます。これも8種類のプリセットがあらかじめ用意されており、さらにパラメータや色を設定することで様々なベースカラー表現が可能です。

    【9】SceneViewノード

    「SceneViewノード」は、文字通り最終的なルックをビュー上で反映し確認するためのノードです。

    【10】UE5にもっていく準備をする

    ここまで解説したこれだけのノードだけでも、十分に様々な地形をリアルに作成することが可能です。この他の細かいノードの解説などはまたの機会にするとして、これらをテクスチャとしてUE5にもっていく準備をしましょう。ここで一度、高解像度で最終的な地形を確認してみたくなると思います。まずは[Project Setting]を開き、その中の[Build Resolution→Resolutionパラメータ]でアウトプットするべきマップの解像度を決めておく必要があります。

    【11】プリセットを選択

    UEにもっていくために、[UE4 LandScape](実際に使うバージョンはUE5ですが、こちらで問題ありません)というプリセットを選択します。すると解像度が自動的にUEに最適化された比率に設定されます。

    【12】Buildする

    設定後は「Build」という作業が必要になります。[Build]は画像の一番右にある緑アイコンのボタンです。解像度によっては、Buildに少し時間がかかることもあります。

    【13】最終解像度での見映えを確認してみる

    (World Machine内で)最終解像度での見映えをビュー上で確認しましょう。

    【14】Height Mapをエクスポート

    問題ないようであれば、Height Mapを「Heigh Outputノード」の[Write To Disk]からエクスポートしましょう。今回はUE内でテクスチャとマテリアルを設定するため、カラーマップはエクスポート不要です。

    【15】UE5で作成したHeight Mapから地形を作成していく

    では、先ほどUE5で作成したHeight Mapから地形を作成しましょう。まずはランドスケープモードにして[管理→ファイルからインポート」に設定し、Height Mapを読み込みます。

    【16】マップを読み込む

    マップが正常に読み込まれると、マップの解像度に合った地形ジオメトリの解像度が自動で設定されるはずです(ここは任意で変更可能)。

    【17】マップから地形が作成される

    マップから地形が作成されます。

    【18】UEマーケットプレイスを活用する

    UEマーケットプレイスには優秀なアセットが多数用意されていますが、マテリアルも同様です。今回は「Auto Landscape Material」を使用しました。

    【19】マテリアルインスタンスを[Landscape]に割り当ててみる

    マテリアルインスタンスを[Landscape]に割り当てると、傾斜による自動的なテクスチャのブレンドが行われ、デフォルトでもかなり良い感じの見映えになりました。ランドスケープペイントツールで直感的に草原や岩場のマテリアルをペイントしていくことも可能です。

    【20】ロケハンをする

    後はこの広大な地形からロケハンをしていきます。次回は「Megascans」や「Folligeツール」を用いた植生や、UEでのカメラの設定等の解説を行う予定です。

    森田悠揮 / Yuuki Morita

    フリーランスキャラクターデザイナー/デジタルアーティスト/造形作家
    国内外問わずアート、映画、ゲーム、広告、デジタル原型など様々なジャンルで活動しているフリーランスのアーティスト。ZBrushでの生物や怪獣などのクリーチャーデザインを得意とする傍ら、Houdiniを用いた動画、アート制作なども行う。初の著書 『the Art of Mystical Beasts』ボーンデジタルから発売中。

    website: itisoneness.com
    Instagram: yuukimorita
    Twitter: @YuukiM0rita

    TEXT_森田悠揮 / Yuuki Morita

    EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura