ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は「猿」をつくっていく。

記事の目次

    現実の「猿」をポーズありきでつくり込んでいく

    今回は幻獣やクリーチャーではなく、現実の猿をクロッキー感覚で造形していきます。

    初めからポーズありきで造形していったので、シンメトリーでつくった後にポーズをつけるということは行いませんでした。なのでよりアナログ感覚に近い作業になるかと思います。このつくり方は、動きを意識した造形の練習にちょうど良いでしょう。

    主要な制作アプリケーション
    ZBrush 2021
    KeyShot 8
    Photoshop 2022
    Maya 2020
    Substance 3D Painter

    STEP 01:ラフモデルの作成

    SphereからDynaMeshを使用し、掘ったり伸ばしたりしながら造形を進めていきます。最初からポージングを意識して掘っていきます。

    シンメトリの方がもちろん作業はしやすいのですが、個人的にはシンメトリで作成したモデルはポージングの際に固さを抜くのが手間なので、最初から動きありきで制作することも多いです。主にコンセプトモデルなどはその手法で造形しています。

    【1】まずは大まかなアタリをとっていきます
    【2】少しディテールを加えていきます
    【3】顔まわりを造形していきます
    【4】身体のボリュームを整えていきます

    STEP 02:造形をブラッシュアップする

    大まかなボリュームができたので、より細かなニュアンスやディテールを足していきます。

    クロッキーのような造形の際には全体的に同じディテールを入れたり形を整えたりせず、あえて下半身はぬるい造形にしておくなどして、力を入れる場所、抜く場所を意識しておくと、メリハリが出て見やすくなり、時短にもなります。

    【1】首まわりを整えていきます
    【2】大きな修正は行わず微調整を進めていきます
    【3】顔のディテールを足していきます
    【4】やり過ぎず、適度に下半身の造形を整えていきます
    【5】造形のボリュームができてきました
    【6】顔周辺により目がいくように、大きめのディテールを足していきます
    【7】引きで見ながらディテールの入れ具合を確かめていきます
    【8】手前の手が少し大きく感じたので小さくします
    【9】これで造形は完成です

    STEP 03:レンダリング

    まず、KeyShotで造形の雰囲気を確認し、その後、Arnoldでレンダリングします。

    今回はSubstanceで色をつけるので、ZBrushのUVマスター機能でざっくりとUV展開します。その後、Substanceでテクスチャを作成しMayaのArnoldでレンダリングします。最終的にPhotoshopで少し色味を整えて完成です。

    【1】KeyShotで雰囲気を確認します
    【2】ザックリとUV展開します
    【3】Substanceでテクスチャを作成します
    【4】造形のディテールを際立たせるよう意識してペイントしていきます(ベースカラー)

    完成

    Arnoldでレンダリングして完成です。

    今回の作品では、いつもより「コンセプト」という感覚を強くもって制作しました。絵をクロッキーで描くと非常に良い練習になりますが、その要領でモデリングを行うと造形の良い練習になると思います。

    岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)

    デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
    www.artstation.com/artist/yuzuki
    www.villard.co.jp

    TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard)
    EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada