ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は人型のクリーチャーを制作していく。

記事の目次

    アンバランスさが異形感を演出するクリーチャー

    今回は、人型にも見えるクリーチャーのコンセプトモデルを制作していきます。

    パワー系のクリーチャーというだけでなく、下半身が極端に小さく、首元にぶよぶよしたものがぶら下がっているなど、造形を工夫し異形感を出せたらと考えました。アンバランスな感じは、クリーチャーを制作するときに好きな表現の1つです。

    主要な制作アプリケーション
    ZBrush 2022
    KeyShot 8
    Photoshop 2023

    STEP 01:頭部のラフモデルをつくる

    クリーチャーのイメージを固めるため、まず頭部から造形していきます。異形な感じを目指しているので完全にアナトミーに沿っていなくても大丈夫です。まずは雰囲気を出していくことを重視します。

    【1】SnakeHookブラシなどを使いながら、頭部を造形していきます
    【2】首あたりに、「袋」や「できもの」のような形を加えていきます

    STEP 02:肩から腕をつくる

    編集しやすいよう、関節ごとにパーツを分けて作成していきます。

    【1】肩の元になるパーツを加えていきます
    【2】伸ばしながら腕を作成します。このとき、ある程度のディテールを加えながら腕のバランスを整えていきます
    【3】前腕のパーツを追加します
    【4】力強い前腕になるよう、バランスを調整します
    【5】足の役割を担う、手のパーツを追加
    【6】関節部分を整えます

    STEP 03:下半身を作成していく

    足を中心に下半身を作成していきます。

    【1】太もものパーツを追加
    【2】ふくらはぎも追加します。ここでも後からバランス調整しやすいよう、関節ごとにパーツ分けしておきます
    【3】アンバランスな感じを意識します
    【4】アングルを変えて足のボリュームを確認します

    STEP 04:造形を整えながらポーズをつける

    パーツが揃ったので、分かれていたパーツの調整を行いバランスを整えたら、DynaMeshで結合します。その後、再度スカルプトして描くパーツを整えつつ、ディテールも追加します。詳細は追加せず、大まかな形を意識して進めました。

    【1】DynaMeshで腕のパーツを結合してディテールを入れる
    【2】指を整えていきます。手でしっかり身体を支えるよう意識します
    【3】足の造形も同じように整えていきます
    【4】全体のバランスを確認
    【5】少し動きを出すため、軽くポーズづけします
    【6】腕で歩いたり、走るイメージを確認します
    【7】下半身が少し大きく感じたので、小さく修正しました
    【8】これでZBrushによる造形は完了です

    完成

    造形ができたので、レンダリングを行います。

    コンセプトモデルの造形がシンプルでわかりやすいよう、レンダリングしてみました。また、ざっくりですが色味のイメージもPhotoshopで作成しています。

    今回制作したクリーチャーは、気持ち悪い感じと、力強くも美しい感じが上手く出せたと思います。

    今後ディテールを追加し、より雰囲気を整えてみたいですね。

    岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)

    デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。株式会社Villard代表取締役。
    国内外の造形に関わる仕事をメインに活動しており、カプコンフィギュアビルダー クリエイターズモデル『モンスターハンター』シリーズのフィギュア原型や『バイオハザード:インフィニット ダークネス』『ELDEN RING』を始め、『シャザム!〜神々の怒り〜』『65/シックスティ・ファイブ』などにも参加している。ジャンルを問わず映像やゲーム、CMなどの主にクリーチャーのコンセプトアート、モデル作成などを多数手がける。
    www.artstation.com/artist/yuzuki
    www.villard.co.jp

    TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard)
    EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada