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第8回:白井暁彦先生(神奈川工科大学)

第8回:白井暁彦先生(神奈川工科大学)

日本における3DCG・映像教育の現状と課題を探るため、教育現場と制作現場、双方での経験をもつ方々に話を聞く本連載。今回は、神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科の准教授で、ゲームやVRなどのエンターテインメントシステムを専門とする白井暁彦氏にご登場いただく。2000年代初頭、Criterion Softwareでゲーム開発用ミドルウェアのRenderWare開発に携わったのを皮切りに、VR・映像・テーマパーク・展示物など多彩なエンターテインメントシステムの研究開発に携わってきた白井氏は、2010年に神奈川工科大学の"先生"へと転身した。つくることに自ら邁進する人生から大きく方向転換し、"つくる人をつくる"人生を歩みはじめた白井氏に、その仕事の真髄を語ってもらった。

ユーザの"おもしろい"というサインを感じとり、ほかの人に水平展開する

本連載の取材にあたり、筆者が白井氏を訪問した1月末は、同大学における学士論文の提出締切直前だった。白井氏が指導する6人の大学4年生たちは時間を惜しんで論文執筆に励んでおり、研究室は熱気と緊張感に満ちていた。"ミュージアムのための多重化サイネージシステムの提案" "マンガ没入型VRエンターテインメントシステムの長期展示を通したプレイヤデータの集合知化" "笑顔認識技術を利用したエンターテインメント体験の客観評価手法"など、彼らの論文テーマは驚くほどに多様だった。「大学生活を通して、学生たちは様々な経験を重ねていきます。例えばゲームを開発して、東京ゲームショーに出展する人もいる。そういった作品やコンテンツの制作も価値ある経験ですが、4年間の集大成である学士(工学)に値する学位論文を書かなければ、うちの大学は卒業できません」。

論文執筆を通して、0から1を生み出す経験をしてほしいと白井氏は語る。「10を100にすることは、サラリーマンになったらいくらでも経験できます。だから論文執筆では、なるべく0に近いところからつくる経験ができるよう指導しています」。自分の世界観を0から構築し、誰もやったことのない、誰も提唱していない考え方や手法を生み出し、プロトタイプをつくり、論文を執筆し、プレゼンテーション用の動画もつくり、発表し、レビューを受ける。その経験を通して修得したメソッド(方法)は、就職後もきっと役立つと白井氏は語る。「学生の多くは"とにかく就職したい" "就職できれば良い"と考えています。ですが、その先10年以上食っていけるような、簡単には陳腐化しない力を自ら発芽させ、根づかせることが私の仕事であり、その力の修得こそが大学で学ぶ価値だと思っています」。

白井氏が重視する力は、論文だけでなく、ゲーム、映像、展示なども含めた、あらゆる分野のものづくりに活かせるという。「論文執筆を通して伝えたいメソッドは多々ありますが、一番重要な要素は"感じること"です。例えばゲームやエンターテインメントシステムのプロトタイプをつくって、ユーザにプレイしてもらったとします。人は、できなかったことができるようになったり、理解できなかったことが理解できるようになると、"おもしろい"というサインを出すのです。そのプレイヤの頭上にビックリマーク" ! "が出現するようなイメージです。そのサインを敏感に感じとり、プレイヤをすかさず捕まえ、何がおもしろかったのかを対話して聞き出し、言語化し、他の人たちに水平展開して伝えられるようにする。おもしろいエンターテインメントを開発するためには、その力が大変重要です。最近のエンターテインメント開発は複雑すぎて、1人では手に余りますからね」。

「先生に聞く。」第8回:白井暁彦先生

白井氏がRenderWare開発に携わっていた2000年代初頭、日本のゲーム開発者は美麗なグラフィック表現のための技術開発にとりわけ力を入れていた。しかし、どれだけグラフィックが綺麗になっても、ゲームがおもしろくなるわけではないと気づいた白井氏は、その開発姿勢に疑問を感じたという。「今もその思いは変わりません。おもしろいゲームを開発したいなら、ユーザの"おもしろい"というサインを感じとり、解析し、測定し、言語化して開発メンバーに伝えられる人が必要ではないでしょうか」。

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