リアルイベントでより深まるクリエイター同士の絆。「CGWORLD 2025 クリエイティブカンファレンス」全体レポート
2025年11月23日(日)に文京学院大学本郷キャンパスで開催された「CGWORLD 2025 クリエイティブカンファレンス」。今年は実に6年ぶりにリアルな場での開催となり、来場者数は約1,500人と大盛況となった。この6年の間はオンライン開催だったためクリエイター同士の交流はなかなか難しかったが、今回のカンファレンスの終わりには恒例の懇親会も実施され、リアル開催ならではの醍醐味が感じられたのではないだろうか。それでは当日の全体的な様子を紹介していく。
CGWORLD 2025 クリエイティブカンファレンス
開催日:2025年11月23日(日)
場所:文京学院大学本郷キャンパス
参加費:無料(事前登録制)
対象:CG制作に関わる業界の方、業界を目指す学生、その他CG業界に興味がある方
cgworld.jp/special/cgwcc2025
テーマは「創る人が、繋がる場所。」
クリエイティブカンファレンスは「創る人が、繋がる場所。」というテーマを基に、仁愛ホールで主に開催された、映画・アニメ・ゲームなど、制作プロダクションによるメイキング解説のセッションのほか、SubstanceやHoudiniといったツールのチュートリアル講座、著名クリエイターによるタイムアタック、学生作品のコンテストなど、バラエティに富んだ催しが教室ごとに展開された。
仁愛ホール Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3 ― 世界を揺るがすシーンの舞台裏
ほかにも、メーカーによる展示企画やボーンデジタルによる書籍販売、歓談用のフリースペースなどもあり、さながら学園祭のような雰囲気であった。来場者には入場パスに貼るステッカーが配布され、アピールしたいことや使用ツール、職種などがわかるようになっており、参加者同士が交流しやすいしくみも取り入れられている。加えて、デスクトップPCなどの豪華な景品が当たるスタンプラリーも今回初めて開催され、会場の盛り上がりに一役買った。
また、当日はキャンパスの中央広場にキッチンカーが初めて出店されたり、来場者の顔ぶれに若手や学生が増えるなどお祭り感にあふれ、過去の開催からの変化も感じられた。
CGWORLD編集長・池田大樹による「開会の言葉」
カンファレンスの口火をきったのは、CGWORLD編集長を務める池田大樹による、仁愛ホールで行われた開会の挨拶だ。ここでは、コロナ禍で途絶えたクリエイター間の縁を取り戻すことを目的とした本カンファレンスの開催意図が熱く語られた。
池田編集長によれば、コロナ禍以降はオンライン開催を5年間続けてきて、昨年は過去最高の7,208名が参加するなど、イベントとして一定の成果を挙げてきた。一方で参加者からは「クリエイター同士、直接会ってつながりをつくりたい」という声も多く寄せられていた。
さらに2025年1月、学生と企業をつなぐ「クリ博 ポートフォリオ相談会」に参加した際、地方から東京に来た学生と出会ったという。その学生は「3DCGを学べる」とうたう学科に在籍していたものの、実際には3DCGを専門に教えられる講師が不在で、学内で十分に学べない状況だった。池田氏はこのやり取りを通じて、直接会って話を聞かなければ見えてこない課題があること、そして対話の機会そのものをつくる重要性を再認識した。こうした背景を踏まえ、社内でも議論を重ねたうえで、会社として今回のリアル開催に踏み切ったという。
「今回のカンファレンスでは、技術セッションに加えて、参加者同士の交流を重視した『文化祭』のような企画を多数用意しています。この機会を活かして新たな仲間を見つけ、日本のCGの未来を共に創る仲間として積極的に交流してほしい」と池田氏は締めくくった。
Jaakko Saari氏によるSubstance 3Dセミナー
B館404教室では「Substanceによるゲーム及びリアルタイム環境デザイン」と題して、Substanceツール群をリアルタイムコンテンツでどのように応用していくのかというチュートリアル講座が1日通して行われた。講演はSonaGraf CGリアルタイムコンサルタントであり、Digital Hollywood Universityの特任教授でもあるJaakko Saari(ヤーッコ・サーリ)氏が登壇。
ヤーッコ氏セッションの様子
同氏の自己紹介に始まり、SonaGrafが作成したSubstance 3Dアセットを利用したSubstanceシリーズのワークフローなどが紹介され、午後のセッションではSubstance 3D Designerを使ったテクニックや活用術、Unreal Engineでの利用方法が解説された。1日を通したセッションであるにもかかわらず、立ち見が出るほどの盛況で、ジャンルを問わずSubstanceの需用が非常に高いことが窺えた。
多彩な企業ブースによる展示体験と個別セミナー
趣向を凝らした企業によるブースも賑わいを見せた。B’s Diningでは、デュアル水冷搭載PCのサイコム、今年多くの新製品ペンタブレットをリリースしたワコム、クリエイターの理想のデスク環境を再現したonesuiteが展示を行なった。
B館408教室では、クリエイティブラボと称し、最新のハードウェアやツールを自由に体験できるブースが用意された。
参加企業は、3D Gaussian Splatting(3DGS)を生成できるハンディスキャナ・XGRIDSを扱うアクティブリテック、ハイパフォーマンスPCを扱うGIGABYTE、新世代バーチャルカメラシステム「ジャンヌダルク」を開発したカヤック、高精細フルカラー3Dプリンタを使った小ロットフィギュア制作を提案するミマキエンジニアリング、クリエイター向けPCを販売するマウスコンピューター、最新ペンタブレット4製品を展示したXPPenなどが名を連ねる。
クリエイティブラボではこのような企業展示だけではなく、各企業が主催する特別セッションも開催された。カヤックの特別セッションでは、自社の事業内容と「ジャンヌダルク」開発に至った経緯などが紹介されたり、マウスコンピューターの特別セッションでは、Blenderのチュートリアル配信やCGキャラクターで人気のTom氏(@Txx_CG)による、ゆるキャラの制作フローなどが紹介された。
新たな才能が見つかる「NEXTクリエイターズ☆ステーション」
B館613教室は、「NEXTクリエイターズ☆ステーション」と題して、学生に向けた、新たな才能を発掘するための様々なセッションが行われた。
その中のセッションの1つ、「WOW Student Program トークセッション – 学生たちと語る「つくる力」–」では、WOWが主催する「WOW Student Program 2025-Ignite Your Creativity」プログラムで受賞した学生による作品発表と共に、WOWのクリエイターである、中間耕平氏、荒川健介氏、白石今日美氏が登壇し、プログラムの説明をしたほか、参加者からの質問にも答える和やかな会となった。
WOW Student Programは、映像制作・グラフィックスデザイン・インスタレーションUI/UXデザインなどを志す学生を対象としたクリエイティブサポートプログラムで、書類選考から企画レビューを経て、6週間で作品を完成させるという内容で、2025年8月〜 9月に実施された。
2025年受賞作品:『Last Pulse』/向後恵梨氏(武蔵野美術大学映像学科)
2024年受賞作品:『Before the Storm』/伊藤拓翔氏(武蔵野美術大学映像学科)
「Who’s NEXT」はCGWORLDが定期的に開催している学生向けのCGトライアル。年々参加者も増え、今回はキャラクター部門42作品、背景・プロップ部門110点が応募された。審査には11社の企業、12名のアーティストが参加し、会場では審査アーティストを代表してトランジスタ・スタジオの秋元純一氏とシニアコンセプトアーティストの宮川英久氏が、受賞作それぞれについて講評を行なった。
各受賞作と審査アーティストからのコメントは、背景・プロップ部門、キャラクター部門に掲載されているので参考にしてほしい。会場になった教室では受賞した学生も参加していたようで、直接アーティストから講評を聞けたのは良い機会になったのではないだろうか。
ボーンデジタルとしての新しい試み「CG部ネクストスターズ」
B館504教室では、ボーンデジタルとしての新しい試みであるCG部ネクストスターズの受賞者プレゼンテーションと審査員(かとうみさと氏、神戸雄平氏、牧野 惇氏、涌井 嶺氏、wanoco4D氏)による講評が行われた。CG部ネクストスターズは、中高生を対象に次世代のクリエイターを発掘する試みで始められた3DCG作品のコンテストで、与えられたテーマ(今回は「欲望」)に沿った15秒の動画もしくは静止画を作成して応募するというものだ。
当日は、応募者の中から選ばれた10名のファイナリストが自分の作品についてのプレゼンテーションを行なった。各自慣れないプレゼンテーションながら、自分の作品に対して明確な言語化がなされており、参加した学生、クリエイターにとってもおおいに刺激になったと見受けられる。またプレゼンテーションしたファイナリストたちにとっても、第一線で活躍するクリエイターやアーティストに直接講評してもらうことはなかなかない経験であり、良い機会になったのではないだろうか。
活況を呈した「The マウント」
B館410教室では「The マウント」と題されたクリエイターによるライブスカルプトが開催された。このセッションではZBrushを使った作品でお馴染みのトップアーティスト森田悠揮氏、NIKO氏、タンノハジメ氏、深山大輝氏の4名が参加。制限時間90分でテーマとして提示された「トナカイ」の造形にチャレンジした。
司会進行はフィギュア原型師のまさむね氏、Maxon Computerの成川大輔氏が担当。リアルタイムで進む4名のスカルプトを実況しながらセッションが進められた。人気クリエイターのライブスカルプトが解説付きで観られるということで、会場となった教室はすぐに満席となり、残念ながら聴講できなかった参加者も多かったようだ。会場ではその後、6名によるトークセッションが行われ、最後はZBrushユーザーの懇親会も同会場で行われた。
リアル開催ならではの懇親会
カンファレンスを締める最後のセッションとして、参加者による懇親会が開かれた。スタンディングパーティ形式で開催された懇親会には、事前登録制で約500名の人が参加し、会場がCGクリエイターで満たされた。6年ぶりの開催ということもあって旧知の知り合いと久しぶりに歓談する人たちや、セッションの登壇者と話す学生など、参加者それぞれが自由に交流を深めているようだった。
「CGWORLD 2025 クリエイティブカンファレンス」をふり返って
以上、かなりかいつまんだ紹介となったが、紹介したセッションのほかにも学生対象のポートフォリオ添削や、就活相談に加え、天草市、静岡市、熊本市、京都市、岡山市などの地方自治体によるクリエイターおよびプロダクション誘致など盛りだくさんな企画もあり、また仁愛ホールなどで行われたセッションも好評で軒並み満席となるなど、非常に活気のあるカンファレンスとなった。
今回のカンファレンスを通じて、この6年間でのCG業界における変化を目にみえる形で体験できたのは、参加した人にとって非常に良い経験になったのではないだろうか。これまでCG業界はある種特殊な分野の産業であったが、この6年間でかなりCGを扱う人たちの裾野が拡がったように感じる。この拡がりを活かし、今後のクリエイティブカンファレンスのさらなる発展を期待したい。
TEXT_大河原浩一(ビットプランクス)
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota、大沼洋平/Yohei Onuma
EDIT_藤井紀明/Noriaki Fujii(CGWORLD)