第1回第2回に続き、11月5日に開催された「CGWORLD 2017 クリエイティブカンファレンス」の模様をお届けする「CGWCC 2017」レポート。第3回目となる本稿では、ウサギ王のセッション「CUTE'EM ALL ~カワイイキャラクターだけで生きていく人生~」の模様を紹介する。

TEXT_真狩祐志 / Yushi Makari
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

<1>お金よりゆとり、時には妥協も!?


セッションの本題は「イマイチの人が生きていくには」?

講演者であるウサギ王の代表取締役・うもとゆーじ氏は、これから3DCGに触れる人を対象とした書籍『LightWave★Beginners』『3ds Max★Beginners』の著者としてもおなじみ。同セッションは主に「業界でユルく生き残っていくための秘訣」が語られるという、一風変わったものとなった。

  • うもとゆーじ/Yuji Umto
    ウサギ王株式会社、代表取締役。ゲーム制作会社、デザイン会社を経て、ウサギ王を設立。
    usagiou.net

神風動画さんのように"妥協は死"なんて言って仕事に取り組むと、うちの場合はすぐ死んじゃうので......ある程度は妥協してます(笑)」と語る、うもと氏。さらに「お金より休みです。休みたい人は休めばいい」と、驚くほど"ユルい"同社のポリシーが紹介された。具体的な例として、以前、同社に在籍していたスタッフに「平日なんですけど、ディズニーランドに行きたいんです!」と言われたうもと氏は「行けばいいじゃん」と許可したこともあるのだとか。


ウサギ王では、ゆとりある職場環境が目指されている

「忙しい時は忙しいんです。最近だと、土曜日に電話がかかってきて"月曜日までに納品"って言われたこともあります。スタッフに"やってもやらなくてもいいんだけど、どうする?"って聞いたら"やる!"って言うから引き受けました(笑)。出社時間に関しても自由で、中には16時に来て会社に泊まっていく人もいます。それと、きまぐれにボーナスも出ます。夏と冬と3月決算で、基本的には2.5回分かな。スタッフから"冬のコートが買えない"なんて言われたら、ちょっと盛ったりして。ただそんなに儲かってるわけでもないので、出ない時はホントに出ません」(うもと氏)。


お金よりゆとり。とは言え、ボーナスも出る時はちゃんと出る

このように、良い意味でユルくアットホームな職場は、新人にとって場数を踏んだり、技術力を伸ばしやすい環境にもなっているのだとか。ちなみに現在、ウサギ王はスタジオななほしと共に、文化庁の若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2018」にて『えんぎもん』というアニメ作品の制作も行なっている。

「下手な人は上手い人と組んでください。とりあえず上手い人と組むと自分の実力がどのくらいなのかを実感できるので、すごく勉強になります」と、うもと氏は若手アーティストに向けてメッセージをおくった。

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<2>「使えるものは何でも使い、どんどんつくる」業界で生き残っていくための仕事術

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<2>「使えるものは何でも使い、どんどんつくる」業界で生き残っていくための仕事術


『がんばれ!ルルロロ』のメイキング画像。「シンプルなつくりで、難しいことはしていません」(うもと氏)
©BANDAI/ルルロロ製作委員会

近年のウサギ王の仕事としては、2013年から続くショートアニメ『がんばれ!ルルロロ』のほか、2015年から制作しているショートアニメ『ラララ ララちゃん』などがある。この『ラララ ララちゃん』は監督をウサギ王が、IKIF+PiconaSpooky graphicケイカFlyingship Studioが各話制作演出を担当し、10月からは第3シリーズがキッズステーションではじまっている。

『ラララ ララちゃん★ウチュ~にムチュ~★』トレーラー映像

「ウチがメインで使ってるLightWaveの代理店にいた方が、ララちゃんを展開してるイオンファンタジーさまを紹介してくれました。キャラクターをブランディングしたいというオーダーだったのですが、まずイオンファンタジーさんに笑ってもらいたいと思い、"ララちゃん自身が変わりたい"と訴えるマンガを描いてプレゼンしたんです。キャラクターごとの性格付けを明確にして、ララちゃんの世界をまるっとお任せくださいと伝えました」(うもと氏)。

ほかにも、2015年に制作された全4話のショートアニメ『ふなっしーとゆかいな兄弟』のメイキングについても紹介された。「第2話では、ロボごろー二号機が3DCGで制作されてます。腕利きの渡辺哲也氏に依頼したら、夜、頼んで朝にはもう上がってきた(笑)。このロボが登場する場面では、ロボごろー2号機に合わせていたピントを手前に動かし、カメラをパン・ダウンさせています。下にいるキャラ達は左右に揺らしているだけですね」(うもと氏)。キャラクターについている葉っぱを揺らす時などには、うもと氏が「めっちゃ使えます」と語るAfter EffectsのプラグインRubberize It!AutoSwayを使用しているという。

『ふなっしーとゆかいな兄弟』第2話。ロボごろー2号機は2分7秒から登場
©ふなっしー


ロボごろー2号機、登場シーンのメイキングより
©ふなっしー

うもと氏は、ウサギ王がこれまでの仕事で会得した"生き残り術"について「『ふなっしー』の時は、2分半の映像を2週間でつくる必要がありました。だからAfter Effectsのプラグインだけじゃなくて、素材集や手持ちの素材はどんどん使っていきました。それに、上手い人にも助けてもらった。それだけすれば、大体のことは切り抜けられます」と語った。また最後に「ファイル名に2バイト文字は使わない」、「オブジェクト・ボーン・マテリアルにも名前をつける」、「上書き保存禁止」など、仕事上、注意している点を付け加え、セッションを終えた。



  • 「CGWORLD 2017 クリエイティブカンファレンス」
    参加費:無料 ※事前登録制
    開催日:2017年11月5日(日)
    場所:文京学院大学 本郷キャンパス(東京都文京区向丘1-19-1)
    主催:ボーンデジタル、文京学院大学 コンテンツ多言語知財化センター
    機材協力:マウスコンピューター、TSUKUMO(ツクモ)
    cgworld.jp/special/cgwcc2017