3月15日(金)、ミマキエンジニアリング五反田ショールームで開催された3Dモデル造形師集団「ウルトラモデラーズ」の展示会「ウルトラモデラーズ in TOKYO 『超色造形展』」の様子を紹介していく。

TEXT&PHOTO_安田俊亮 / Shunsuke Yasuda
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

3Dモデラーの作品をそのままリアルに再現!

「ウルトラモデラーズ in TOKYO 『超色造形展』」は、デジタル原型師・モデラーのアーティスト集団「ウルトラモデラーズ」による、ミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」で出力された造形作品を展示するイベントだ。業界の第一線で活躍する3Dモデラーの作品が世界最高峰レベルの発色、造形で展示されるとあって、今の3DCGモデルの最先端を体験できるイベントとなっていた。



  • 『Ric Camera』 作者:中野範章(以下、敬称略)


  • 『Virtual Sculptor』 作者:ジム



  • 『立体模写 黄道十二宮』 作者:加茂恵美子


  • 『この世界とあの世界の狭間でもなくそこにいる』 作者:福井信明

「3DUJ-553」の最大の特長は発色の良さにある。カラーインクを使用して造形するUV硬化インクジェット方式を採用しているため、造形後に着色するよりも美しい表現ができる。1,000万色以上のフルカラーが表現でき、見た目の発色も優れた造形となる。


「3DUJ-553」


出力直後のサポート材が付いた状態

プリントの精密さにも優れており、発色の良さと合わせると細かいグラデーションが非常に綺麗だ。サポート材には水溶性のインクが採用されているため、繊細なデザイン部分を手間なく除去できる。色味もデザインも、3Dモデラーのイメージをできる限りそのまま再現できる3Dプリンタとなっている。



  • 『歌川芳藤氏作 五拾三次内 猫之怪 立体図』 作者:谷岡和樹


  • 『密林の追跡者』 作者:和田真一

さらに、クリアインクを搭載しているため、透明なパーツも造形できる。3Dアーティストの福井信明氏の『森の果て。読書は沈む』という作品では、水の中に沈んだ家の室内が水泡のない綺麗な透明パーツで表現されていた。またクリア単体の表現だけではなく、小林武人氏の『シランパカムイ』のような表面にカラーを乗せた有色透明の表現も可能となってい る。



  • 『森の果て。読書は沈む』 作者:福井信明


  • 『シランパカムイ』 作者:小林武人

高さ30cmほどの作品では、出力にかかるのは40~50時間ほど。まだまだ時間がかかる一方で、表現の質としてはモデラーのイメージが、よりそのままの形で、色味も含めてリアルに再現できるようになっている。その技術の進歩には驚かされる。トップ3Dモデラーの頭の中身を、データ上ではなく立体作品として鑑賞できる迫力ある展示会だった。



  • 『PABLO PICASSO』 作者:吉本大輝


  • 『HARDBOILD CAT & WILD GEKKO』 作者:中野範章 原画:ヨシオカサトシ



  • 『Arnee アーニー』 作者:大上竹彦


  • 『Arnee アーニー』背面拡大



  • 『天道様』 作者:クッキー草 原画:ジョン平


  • 『celestial psicodelico -Kakusha 最終形態-』 作者:小林武人



  • 『Singularity』 作者:ワクイアキラ


  • 『Singularity』 拡大



  • 『不動明王』 作者:小林武人


  • 「八方睨み鳳凰図 3D」 作者:吉本大輝
    本作はCGWORLDにてメイキング取材を実施した。その際の記事はこちら

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会場満員! 榊 馨氏らのセミナーを実施

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会場満員! 榊 馨氏らのセミナーを実施

会場では、ウルトラモデラーズメンバーの加茂恵美子氏、株式会社Wonderful Works代表でデジタル原型師の榊 馨氏によるZBrushおよびZBrushCoreの使い方のコツを解説するセミナーが実施された。

加茂氏は2頭身キャラクターのモデルを作例として紹介。実際に頭、胴体、手足とモデルをつくりながら、ベースができたらつくり込みすぎないで次へ進むこと、髪の毛はブラシではなく「アクションライン」を利用してモデルを曲げることで上手く形づくれること、技術的なコツは知り合いから教えてもらうことが多く、Twitterなどを使って横のつながりを作っておくことなどが大事だと語った。


ウルトラモデラーズメンバーで3Dデジタル原型師の加茂美恵子氏

背面マスクを使って髪の毛の幅をつくっていくなど、モデル作成のコツを紹介していった

また『ZBrushフィギュア制作の教科書』などの著作をもち、CGWORLD.jpでも以前メイキング記事を執筆した榊氏からは、ZBrushに関するより踏み込んだ使い方が話された。榊氏の実感として、フィギュア原型師の中でデジタル環境を一部でも取り入れている人は6~7割ほど。榊氏のように、100%デジタルで原型をつくる人は3割ほどに留まるという。最終的には手で完成させたいという人が現段階では多いことが理由だそうだが、「今後はデジタルへとよりシフトしていくのでは」とした。


株式会社Wonderful Works代表でデジタル原型師の榊 馨氏

榊氏はフィギュア原型をつくるとき、ZBrushに標準搭載されている素体のマネキンを使うという。実際にはマネキンを2体用意し、モデルをつくるためのもの、ポーズを検討するものみ分けて作業に入る。ポーズ検討用のマネキンを用意するのは、なるべくモデルに手を加える回数を減らすことで、形が崩れることを防ぐため。

ただしこれはあくまで榊氏のやり方であり、例えばポーズの変更が容易なMayaなどを経由してポーズを決める方法もある。また一度手足のパーツを切り離し、再度くっつけるようにして変えていくのもひとつの方法で、人によってやりやすいものが良いだろうとした。

講演ではこのほか、DynaMesh機能の解説、3Dプリンタの性能のちがいなどが話された。榊氏のセミナーは特に人気で、会場の椅子が足りないほどの集客となった。ZBrushマスター榊氏の講演とあって、来場者にとって刺激的な場となったようだ。


足を切り離してポーズを変える方法を紹介


盛況となったセミナー会場