>   >  ゲームなら全国に地域の魅力を伝えられる! 『岐阜クエスト』、『まるがめクエスト』にみる「ご当地ゲーム」の今
ゲームなら全国に地域の魅力を伝えられる! 『岐阜クエスト』、『まるがめクエスト』にみる「ご当地ゲーム」の今

ゲームなら全国に地域の魅力を伝えられる! 『岐阜クエスト』、『まるがめクエスト』にみる「ご当地ゲーム」の今

コロナ禍で続く令和の鎖国状態。海外旅行は言うまでもなく、国内旅行ですら自粛ムードが高まっている。こうした中、全国に地域の魅力を発信する手段として、ゲームに新たな光が当たり始めた。地方自治体に加えて、インディゲーム開発者や一般ユーザーが地方を題材にゲームを開発し、アピールする時代になりつつあるのだ。本稿では、『岐阜クエスト』『まるがめクエスト~囚われの12姫~(以下、まるがめクエスト)』の取材を通して、「ご当地ゲーム」の現状と可能性について考える。


TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE




ゲーム黎明期から続く「ご当地ゲーム」の歴史

地方自治体が公費を投入してゲームを開発し、地域の魅力をアピールする。いわゆる「地方創生ゲーム」の広がりについて、CGWORLD.jpではこれまで2本の取材記事を公開してきた。産官学連携で開発された埴輪育成ゲーム『群馬HANI-アプリ』(2020、※1)と、有限会社井桁屋が開発する『地方創生RPGシリーズ』(2016、※2)の事例だ。このうち後者では、3月31日(水)に宮城県石巻市を舞台とした最新作『キズナファンタジア ~海辺の国の大聖典~』がリリースされている。

●参考記事
ゲームアプリで地域の魅力を発信! 『群馬HANI-アプリ』が実現した、産官学連携で進む次世代のゲーム開発
震災からの復興と感謝の意を石巻から。地方創生RPGに市が公費を投入する理由

もっとも「特定の都市や地方を舞台とする」、「地域の文化やコンテキストをテーマにする」といったいわゆる「ご当地ゲーム」は、ゲームの黎明期から数多くの例が見られる。国産アドベンチャーゲームの草分け的存在『表参道アドベンチャー』(1982)や、ドラクエシリーズで知られる堀井雄二氏の出世作『ポートピア連続殺人事件』(1983)は好例だ。電車の運転手を疑似体験する『電車でGO!!』(1996)シリーズなども、同じ文脈で捉えられるだろう。

その後、携帯電話にGPS機能が搭載されたことで「ご当地ゲーム」は新たな段階に移る。国内では『コロニーな生活』(2003)を草分けとする、いわゆる「位置ゲー」のブレイクだ。また、スマートフォンでのアプリ開発が可能になり、一気にゲーム開発者の裾野が広がったことで、地域を題材にした個性的なゲームが見られるようになった。群馬県の特産品を収穫しつつ、全国を群馬県にしてしまう『ぐんまのやぼう』(2012)は代表例となる。

▲『ぐんまのやぼう』公式ホームページより

もともとゲームの本質は「ルールの組み合わせ」であり、「地域性」は必須となる要素ではない。その一方で、地域のコンテキストがゲームに加わることで新たな魅力が備わることもある。実際、『ぐんまのやぼう』がファンタジー世界を舞台にしていたら、ここまで話題を集めることはなかっただろう。その上で降って湧いたコロナ禍だ。「ゲーム×地方」の組み合わせは、人々の移動が制限される中で改めて注目を集めているように感じられる。

こうした中、2021年に入って2本のRPGがリリースされた。岐阜県を舞台にした『岐阜クエスト』(2021)と、香川県丸亀市を舞台にした『まるがめクエスト~囚われの12姫~(以下、まるがめクエスト)』(2021)だ。共に公費ではなく、自分たちのリスクで開発されている点が特徴で、地元の魅力を全国に発信したいという気概に溢れている。こうしたムーブメントは何を意味するのだろうか。開発者への取材を通して、新時代の「ご当地ゲーム」について考えてみたい。



はじめに「マップありき」〜『岐阜クエスト』

「突如現れた魔物によって、岐阜県は滅びた。岐阜県民は心を折られ、魔物の支配に抗う者はいなかった」という衝撃的な設定でスタートするRPGが『岐阜クエスト』だ。ゲームは魔物に支配された岐阜県に、プレイヤーが新たな県民として召還されたところから始まる。ゲームの目的は42の市町村を魔物から救い、最高の岐阜県民を目指すこと。レトロ風のドット絵が特徴で、基本プレイ無料のアイテム課金モデルということもあり、多くのユーザーにリーチしやすい内容になっている。

  • みぃ/Mii
    brazeworks

本作を開発したスマホRPG『岐阜クエスト』製作委員会は、企画とデザインを担当したblazeworksのみぃ氏と、ゲーム業界を経て現在はIT系企業でエンジニアとして働くあき氏のユニットだ。みぃ氏がシナリオとビジュアル素材を制作し、あき氏が実装を担当。ゲームエンジンにCocos2d-xを採用したのも、あき氏が業務で使い慣れていたことが理由だという。

開発はみぃ氏の発案で始まった。都内在住で主婦業と子育てに追われる日々を送りつつも、ゲーム好きだったことが高じてオリジナルのゲーム開発を夢見てきた。その後、あき氏が岐阜県出身だったことから軽い気持ちでフリー素材を組み合わせ、岐阜県のマップを制作してみたと言うみぃ氏。これがあき氏から大絶賛され、ゲーム開発に心が動いたという。

▲『岐阜クエスト』ゲーム画面

その後、岐阜について書店、図書館、インターネットなどで資料を集めてみたところ、岐阜県の出身者でも知らないような様々なエピソードや情報が集まった。ここから「ゲームのストーリーを市町村の単位まで掘り下げれば、子供から大人まで楽しめるだけでなく、岐阜県の魅力を全国に発信できるゲームになる」と発案。このアイデアをチームメンバーが共有したことから、本制作が始まったのだ。

つまり、本作はみぃ氏にとって「初めてのゲーム制作」となる。マップを構成する2Dグラフィックやサウンドなどはフリー素材を活用したが、モンスターや主要キャラクターはゼロからデザインし、ひとりでドットを打った。使用したツールはマップエディタがTiled、ドット絵エディタがAsepriteだ。コロナ禍により、子供の学校が休みになったときは作業が数ヶ月間中断することもあった。このように紆余曲折もあったが、あき氏のフォローもあり2年かけてゲームが完成した。

▲Tiledで描かれた岐阜県マップ

▲Tiledで描かれた揖斐川町マップ

「最近のグラフィックが綺麗なゲームも素敵ですが、私には3DCGはできませんし、人に頼むにしても制作費がかかります。コスト削減もさることながら、レトロなドット絵でも十分に魅力が伝わると思いましたし、フリー素材が豊富な点もメリットでした。また、初めて遊んだRPGがスーパーファミコンの『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(1992)で、ドット絵のゲームが好きだったという背景もありました」(みぃ氏)。

「岐阜県が滅びた」という設定も、あき氏と相談しながら決めていった。「最初にわかりやすく『世界を救う』という目的を決めて、そこから『一度滅びた世界を少しずつ復活させていく』ようにアイデアを膨らませていきました。その際、広大な岐阜県マップ上をプレイヤーが自由に動けるようにするとゲームがわかりにくくなるので、順番に町を救いながらゲームを進めていけるよう配慮しています。大勢の人に遊んでもらうために、わかりやすさにこだわりました」(みぃ氏)。

ご当地ゲームらしく、本作には岐阜県出身者の琴線に触れるしかけが多数散りばめられている。岐阜県の情報を集めるとキャラクターが育つ、「ぎふりょく」システムは好例だ。モンスターを倒すだけでなく、歩き回る、町の人と会話する、観光スポットを見つけるといった行動でも獲得でき、岐阜への知識も深められる。インディゲーム『UNDERTALE』から着想を得たという、アクション性を備えた独自のバトルシステムも本作ならではだろう。

デバッグやテストプレイなどで、地域のボランティア団体などからも協力を得た。これにより地元目線でのブラッシュアップができ、リリース後の口コミにもつながった。自治体などに1つずつ許諾を取り、岐阜県にゆかりのある武将やご当地キャラクター、ご当地アイドルも全48体登場させた。当初は理解が得られず38体に留まったが、リリース後にゲームの評判を聞き10体が追加されたという。ゲームの魅力が各自治体に伝わったというわけだ。

▲Asepriteで描かれたキャラクター

本作はクラウドファンディングで開発費を集めたことでも話題を集めた。支援金額は13万5千円だったが、みぃ氏は「資金調達よりもプロモーションが主な目的だったので、ネットを通して話題になり良かった」とふり返った。新しいことに挑戦することが好きで、自分がやりたいと思ったことはすぐに実行してしまうというみぃ氏。本作の開発もその1つだ。クラウドファンディングを行うことで得られた知見もあり、今後に活かしたいと語っている。

「岐阜県の人たちに楽しんでもらいたいのか? それとも他の地域の人たちに岐阜県の魅力を知ってもらいたいのか?」この質問に対して、「どちらの目的も重要」だと語るみぃ氏。いずれにせよ、舞台となる地域について調べることがゲームの面白さを高める上で重要だと指摘する。その地方ならではの方言や民話、伝承、妖怪などだ。その上で前述の通り、地元の人たちにチェックしてもらうことがクオリティを高めるために重要だという。

リリース後の反応も上々で、開発して良かったと語るみぃ氏。2021年2月にリリースされたばかりだが、すでに次回作の開発にも着手済みだ。「次は三重県を舞台にする予定です。今回開発したメインプログラムを流用して、早くリリースしたいですね。アイテム課金と動画広告の売上から考えて、5作くらい開発すればリクープできるのではないかと。その後も47都道府県クエストを目指して、ゲームを開発し続けたいと思っています」。



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