7月9日(金)と10日(土)の2日間に渡って開催された、CGWORLD主催のオンラインイベント「CGWORLD JAM ONLINE Vol.3」。開催初日の「3DCGメイキングセミナー TVアニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』『進撃の巨人』『呪術廻戦』」では、アニメ制作会社MAPPAのCGI部のスタッフが登壇。本稿では、劇場版の公開を控える『呪術廻戦』を中心にセミナーの模様をレポートする。
TEXT_高橋克則 / Katsunori Takahashi
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)
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モデル&セットアップ
『呪術廻戦』の3DCGディレクター・木村謙太郎氏は、TVアニメシリーズ第14話以降の京都姉妹校交流会編の舞台となった森を3DCGでどのように表現していったかについて解説。まず美術スタッフに美術ボードを描いてもらい、そのルックに近付けるよう森のモデリングを行なった。
▲美術スタッフによる美術ボード。これが見本となる
▲3DCGスタッフによるアセット
本作は作画がレイアウトを描いて構図やカメラワークを指定し、それを基に3DCGチームが作業するという方法を採っている。森のアセットもレイアウトの位置に合わせて配置していくが、その際にも美術を参考に木々が生えている間隔や量を調整した。配置する木は立体と平面を併用しているが、これは美術スタッフが描いた木と「質感の差」が生じて違和感が出ないようにするためである。
▲アニメーターによるレイアウト
▲木のアセットは平面と立体の両方を配置する
「レイアウト」と「3D背景を配置・使用したアニメーション」、「完成映像」の3パターンを比較。回り込むカメラワークに合わせて、3DCGの背景が動く様子が確認できた。また3DCGでは影や深度などの素材も用意して処理を加えることで、最終的な画面づくりに貢献している。
作画との連携&学生へのアドバイス
続いて第1話の校舎内でのアクションシーンを紹介。校舎は森とは異なり、簡易モデルのみを作成しカメラマップの手法を用いて完成させた。
▲校舎の簡易モデル
こちらもレイアウトを基に、背景に簡易モデルを配置。さらにマッピングする場所を示したチェッカーを付けて、歪みがないかを確かめる。テクスチャは見える範囲のみ用意するため、その抜けがないかも確認する。最後に素材を貼り付けることで、作画のキャラクターに3Dの背景が動くという、立体感のあるリッチな画面が完成した。
▲レイアウトと背景の簡易モデルを貼り付けた画面の比較
▲チェッカーを貼り付けた画面と完成画面の比較
配信中に視聴者から「カメラマップを使う際、動きに合わせてカメラのレンズを変化させることはありますか?」という質問が飛んだ。木村氏は「ものすごくやります」と同意し、特にアクションカットの際は作画に合わせて3DCGも嘘を付かなければならないため、細かな調整を加えているとコメント。またカメラマップを使うカットの制作期間は、マッピングの量にもよるが制作に1週間以上かかった場面もあるそうだ。
作画と3DCGの連携はアクションのような派手な場面ではなく、日常シーンにも見られる。例えば大量のモブが登場する街中のシーンは、「手前が作画」、「奥が3DCG」で表現されアニメーターの負担を軽減。
▲レイアウトにCGのモブを組み込んだ画面と完成画面の比較。完成画面では作画とCGの区別が付かないほど馴染んでいる
セッションの後半では、CGアニメーター志望の学生に向けてアドバイスを送った。アニメ『進撃の巨人』3DCGアニメーションディレクターの奥納 基氏は、優れたアクションカットを作るコツについて「参考資料やリファレンスをしっかり取ることが何よりも必要」とコメント。実際の人間には不可能な派手なアクションを作るときも物理法則を無視することはないため、学生のうちから「体がどのように動くのか」を研究することの大切さを伝えた。アニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』で3DCGディレクターを務めた黒岩あい氏は、キャラクターを生き生きと見せるためには「目線がポイント」と回答。どこを見ているのかをしっかりとわかるようにするだけでなく、キャラクター同士の目を合わせることで仲の良さも表現できる。特に『ゾンビランドサガ』のキャラクターは、実際は死んではいるものの元気いっぱいに歌う姿を見せられるように気を使ったと明かした。
なお『ゾンビランドサガ リベンジ』と『進撃の巨人 The Final Season』に関しては、本誌や別記事で特集している。こちらもぜひ参考にしてほしい。
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