2021年11月8日(月)から12日(金)にかけて、「CGWORLDクリエイティブカンファレンス」が開催された。本稿では、2日目の2021年11月9日(火)に行われたセッション「ローポリから学ぼう!キャラクターモデリングの基礎と面白さ」についてレポートする。

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TEXT_江連良介 / Ryosuke Edure
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamda

モデリングは一方通行ではなく、何度も行ったり来たりする中で質を高める

本セッションで登壇したのはゲーム会社で3Dキャラクターモデラーを務める高部氏。会社でキャラクターモデリング業務に従事しながら、Autodesk社が運営する3DCGサイト「AREA JAPAN」Mayaを使ったモデリングのコラム執筆も担当している。

今回のテーマとなる「ローポリ」については、明確な定義がない。そこで今回は、ポリゴン数が少ないこと、テクスチャとマテリアルが1つずつであることなどがローポリの要件とされている。実際に高部氏が手がけたローポリキャラを見てみると、思ったよりもポリゴン数が多いことがわかる。「このキャラクターはVR用につくったため、特に手は細かい作業をしています。VRは仮想空間の中で自分の手を見ることがよくあるんです」(高部氏)。

▲ローポリと言えど、キャラクターモデリングのポリゴン数は少なくない

▲VR用に精緻につくられた手

モデリングのながれは、資料集め、形状作成、UV展開、テクスチャ、スキンウェイトと進んでいくのが一般的だが、実際は一方通行に進むわけではなく、何度も各工程を往来しながら進めていくという。

資料集めはモデリング前だけでなく、モデリング中にも頻繁に収集する。資料は自分で描いたデザインだけでなく、ネットや書籍にある写真やラフ、三面図などを用いるという。

モデリングで重要なのは見る人がどう感じるか、錯視や影を上手に利用する

次は、形状作成の工程に移る。バランスの良いモデリングをするためには、最初は大まかに形をつくり、徐々に細部を整えていくことが重要だ。

「UV、スキンウェイトは一見、形状の調整と無関係に見えますが、早めに問題を解消するために重要な要素です。UVの自動展開でモデルの頂点がずれたり、手の指の形状がおかしいといった不具合は、この工程で早期に発見すれば、後から修正する手間が省けます」(高部氏)。

その後、テクスチャについての説明が行われた。この工程では、全体的な陰影を「アンビエントオクルージョン(AO)」、細かい部分の陰影を「上から光を当てる」ことが前提となる。アンビエントオクルージョンは今回、Mayaに標準搭載されているArnoldレンダラを使用する。使用の際はモデルの下にプレーンを設置し、テクスチャにベイクする。

高部氏は、テクスチャ工程では、「クレーター錯視」と呼ばれる人間の認知的特性を上手く利用することが鍵だと語る。人間は上から光が当たっているものを盛り上がっている、下から光が当たっているものをへこんでいると判断する傾向がある。この錯視を利用し、パーツの上の部分を明るく描くことで、上から光が当たっているように見せることが可能だ。

▲錯視を利用してよりリアルなモデリングを作成

さらに、モデリングしたキャラだけを見せたいときは、キャラに「落ち影」をつけることで設置感を演出できる。Photoshopなどで簡単に描くことができるため、ポートフォリオで自作モデルを見せたいときなどにおすすめだ。

モデリングで一番重要なのは「最後までつくりきること」

講演の後半では、高部氏によるモデリング全般のTipsが紹介された。高部氏によると、モデリングを学ぶ上で最も重要なことは、最後までモデルをつくりきることだという。「ローポリは完成するまでが早いため、そのメリットを活かして最後までつくりきることを意識することが重要だと思います。特に最初にご紹介した資料集め、形状作成、UV展開、テクスチャ、スキンウェイトは相互に関連する工程のため、最後までつくらないと内容がわかりません。最初は難しいと思いますが、諦めずに最後までつくりきりましょう」(高部氏)。

また、モデルのクオリティアップには最後のツメが肝心だという。特にモデルの用途を念頭に置き、顔のバランスや陰影の強弱、色味調整などを行い、クオリティを高める作業を経験することがモデリング上達のコツだ。

その他にも本講演では、モデリング時のメモのとり方やポートフォリオで使うキャプションの書き方など、モデラーに役立つTipsが多数紹介された。

▲メモ帳や赤ペンで工夫した点や反省点を書き残しておく