3月18日(火)、Blender 4.4が正式にリリースされ、公式サイトからダウンロードが可能となった。安定性の向上、アニメーションワークフローの改善、ビデオシーケンサーの機能強化、モデリングとスカルプトツールの追加、コンポジット機能の強化など、多岐にわたる更新が施されている。

アニメーションワークフローの改善

新たにアクションスロット(Action Slots)が導入され、オブジェクトの位置やマテリアルのプロパティ、合成エフェクトなどの複数の要素を一緒にアニメーションさせたり、オブジェクト間・プロジェクト間でのアニメーション共有がしやすくなった。

また、グラフエディタでは新しいFカーブモディファイアー(F-Curve Modifiers)アルゴリズムが利用可能になったほか、アーマチュアの対称化を行った際にボーンコレクションのメンバーシップがミラーリングされるようになるなど、細かなアニメーションワークフローの改善が施されている。

ビデオシーケンサーの編集機能向上

ビデオシーケンサー(Video Sequencer)はテキスト編集機能が向上したほか、H.265/HEVCコーデックに対応。動画はBT.709カラースペースでレンダリングされるほか、動画再生時のYUV・RGB変換もより正確になった。

また、10bit・12bit/チャンネルの動画をサポートし、レンダリング中にサポートするコーデック(H.264、H.265、AV1は10bit、H.265、AV1は12bit)の色深度を10bitか12bit に設定できる。

その他、全般的な処理の高速化が図られ、画像シーケンスのプロキシ構築、float/HDRコンテンツのプレビュー、テキストストリップの背景塗りつぶしの「ボックス」処理、カーブ・色相補正・ホワイトバランスなどの処理がスピーディに進行するようになった。

▲プレビュー時にテキストストリップを編集できる
▲複数行のテキストストリップの文字揃えを左・右・中央から選択可能

モデリング関連の新機能

■ポールカウントから選択(Select By Pole Count)

「特徴で全選択」(Select All by Trait)のオプションとして「ポールカウント」(Pole Count、頂点が接続しているエッジ数)が追加され、4つのエッジを持たないポールを簡単に見つけられるようになった。

■「三角面を四角面に」でトポロジーの影響を制御可能に(Triangles to Quads:Topology Influence)

「三角面を四角面に」(Triangles to Quads)でトポロジーの影響(Topology Influence)を指定できるようになり、値1.0では完全に四角ポリゴンを優先したトポロジーが作成できる。

■頂点とエッジの溶解(Vertex & Edge Dissolve)

エッジの溶解(Dissolve)時の動作が見直され、選択と溶解が行われたエッジに属する頂点のみに対して処理が行われるようになった。

その他、カスタム法線やシャープエッジ使用時の再生速度が最大15%高速化したほか、Nパネルでの正規化(normalization)が複数の頂点グループのロックに対応、カーブ編集モードで は「Pick Linked」(Lキー、Shift+Lキー)がサポートされた。

Planeスカルプトブラシ

既存のFlattenブラシ、Fillブラシ、Scrapeブラシを一般化した「Plane」ブラシが追加。高さ(Height)、深さ(Depth)、反転(Inversion)モード、そしてノーマルとプレーンのスタビライズ(Stabilize)オプションなどが利用できる。

▲Planeブラシのオプション

コンポジターの書き換えによるパフォーマンスの大幅な向上

CPUコンポジターはソースコードが書き換えられ、パフォーマンスが大きく改善。フィルターノードは2〜10倍高速になったという。また、静的リソースのキャッシュが可能になったほか、ピクセル操作に関わるノードのセットアップにおけるメモリ使用量も削減。さらに、グレア(Glare)ノードが大幅に刷新され、コントロールと使いやすさが向上した。

▲CPUコンポジターの刷新によるパフォーマンス変化(左)、グレア(Glare)ノード(右)

なお、Blender 4.4の全ライブラリはVFX Reference Platform 2025に準拠している。

■Blender 4.4 Release Notes(Blender Developer Documentation、英語)
https://developer.blender.org/docs/release_notes/4.4/

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