新世代デジタルアニメーション『正解するカド』。2017年4月からの放送開始に向けて、先日メインスタッフとキャストが公開された。<世界の終わりと始まり。人類は「正解」できるのか。>と、謎めいたキャッチコピーが印象的だが、ストーリーの大半が未だ謎に包まれたままだ。そうしたなか、本作はひと足先にプレスコ(※:声を先に収録しそれに合わせてアニメーションを付ける制作方法)で収録が進められ、2016年12月には最終話の収録を終えた。まだまだ詳しくは明らかにできない部分もあるが、メインキャストたちに本作の見どころを語っていただいた。まずは外務省主席事務官である主人公・真道幸路朗役の三浦祥朗さんと、謎の存在・ヤハクィザシュニナ役の寺島拓篤さんの対談。そして真道の部下の外務省 国際交渉官・徭 沙羅花を演じるM・A・Oさんのインタビューだ。演じるにあたっての気持ちや印象に残る場面を語るキャストの口から垣間見える作品舞台やストーリーを想像し、放送を楽しみにしていただければ幸いだ。
※本インタビューは2016年12月下旬に実施したインタビュー内容に基づきます。
INTERVIEW_日詰明嘉 / Akiyoshi Hidume、沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
『正解するカド』PV第2弾
seikaisuru-kado.com
© TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI
<1>演者の自由な芝居を可能にしたプレスコによる収録 〜三浦祥朗(真道幸路朗役)&寺島拓篤(ヤハクィザシュニナ役)〜
ーー本作の世界観をどのようにご覧になりましたか?
寺島拓篤(以下、寺島):僕は『正解するカド』のように、まず物語の世界設定を聞いてから話の内容を想像して、台本を読んで答え合わせしていくのがすごく好きなんです。なので、まだ内容を知らない段階からスゴく楽しめました。それに、最終的に想像していた話とはまったくちがう結末にたどり着いた点もとても良かったです。
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寺島拓篤/Takuma Terashima
12月20日生まれ。石川県出身。アクセルワン所属。主な出演作は、『創聖のアクエリオン』(アポロ)、『セイクリッドセブン』(丹童子アルマ)、『うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%』(一十木音也)ほか。
三浦祥朗(以下、三浦):この作品で描かれている出来事は、何年か後に現実世界でも起こりえそうなことで、そういう意味ではあまり他にはないタイプのアニメーションですよね。自分たちの暮らしの中でも、実は目に見えてないだけで"何か"があるかもしれない......なんて想像を巡らせることができて、入り込みやすい作品でした。
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三浦祥朗/Hiroaki Miura
3月24日生まれ。長野県出身。青二プロダクション所属。主な出演作は、『ワールドトリガー』(歌川 遼)、『ドラゴンボール改』(ザーボン)、『ONE PIECE』(アブサロム)ほか。
寺島:最終回の収録を終えたときにキャストのひとりである中 博史さんが「人間の宗教観・哲学にも意識がいくような話になっている」とおっしゃっていましたが、ヤハクィザシュニナを演じた身としては、まさにその通りだと思いました。彼のような存在を通してそこまで想像が膨らむというのは面白いですよね。
三浦:そうですね。完全にSFというだけではなくて、もしかしたら宗教の発端にはSF的なものがあったのかもしれないという考え方もできる作品だと思います。
ーーどんな方に向けてつくられた作品だと思いますか?
三浦:SF作品ですので、女性の中には少しとっつきにくいかもと思いましたが、だからこそザシュニナだったり、花森 瞬(真道の部下の外務省官僚)という存在がフックになっていると思います。なので、ときには女性が身近に感じられる距離感で芝居をするよう心がけました。
寺島:最近、日本のアニメは何でもカテゴライズされることが多いですが、この作品はそれを飛び越えていけるポテンシャルをもっているのではないかと思いました。SF好きの人が『正解するカド』を観れば作品の謎について一歩、踏み込んだ想像をすることができるし、それ以外の人が観ても様々な想像をめぐらせることができる。そんな面白さがこの作品にはあると思います。
ーー役づくりはどのように行ないましたか?
三浦:僕の場合、基本的にオーディションと同じように収録に臨んだのですが、話が進むにつれて真道の人間味が出てきたり、なぜ彼が様々な才能を有しているのかが判明してくるので、人間としての厚みを出せるように役をつくっていきました。
寺島:僕は音響監督の長崎行男さんと別の現場でご一緒したときに「オーディションで寺島が一番人間っぽくなかったから採用した」と言われて(笑)。なのでザシュニナという役は、人間っぽくない存在でありつつも、人間とコミュニケーションをとっていくキャラクターなんだなと考えました。人間とコミュニケーションをとる際に、「空気の振動=音で言葉を伝える」ということを、彼は理論立てて行なっています。そうしたプロセスをザシュニナとして自分の中で、一度反芻してから芝居に落とし込んでいきました。
ーーおふたりは物語の序盤において、どのようにお芝居のやり取りをされていましたか?
三浦:ザシュニナは未知の存在なので真道にとっては恐怖の対象でもありますが、真道は未知に対する探究心も抱いています。ですので、最初の頃はザシュニナに対してある程度の距離感+興味を抱いていたのですが、その距離は物語が進むに連れて変わっていきます。その様子は観てほしい部分のひとつです。
寺島:ザシュニナの場合は意思をもって真道の前に登場したわけですが、彼個人に対して意思をもっているわけではないんです。なので、真道との距離感を作為的に計っているというわけでなく、段々と自然に変わっていくというながれでいました。役者としては「意識していない」ということを"意識して"演じてましたね。喋り方も徐々に崩していってるので、最初と最後ではまったく別人のような感覚でした。毎週ご覧になっていくなかで、「ザシュニナってだんだんキャラ変わっていってないか?」と感じていただければ、それが"正解"なのではと思います。
ーー収録はどんなペースでしたか?
寺島:最初の収録はいつだったっけ? ......というくらい、時間が経っていますね(笑)。
三浦:第1話の収録はたしか2016年の5月か6月だった気がします。はじめの3話くらいは毎週収録して、そのうち隔週での収録になりました。
寺島:途中ずいぶん間が空いて、最終回までは隔週での収録でした。半プレスコだったので、声を録ってから画面をつくるためのスケジュールに余裕をもたせていたのだと思います。
ーー半プレスコということでしたが、収録において通常のアフレコとのちがいはありましたか?
寺島:画のことはあまり気にせず、こぼして(※)もかまわないよと言われました。
※:キャラクターの登場カットを過ぎてもセリフを喋ること。演出意図があるものを除いて一般的にはNGとされる。
三浦:3カットくらいこぼれたりとか、逆に「巻きでお願いします」と指示されるキャラもいました。
寺島:序盤は特にその傾向が強かったですね。
三浦:後半は、一般的なアニメーションと変わらなかったです。画がしっかり出来上がっていたということもありますが。
寺島:普段は映像にセリフのタイミングを合わせるのが普通なので、ある程度出来上がっている画に対してわざとこぼしたり早く上がるというのは、なかなか体に馴染まない感覚はありました。ですが、素直にお芝居をしていけばそうなるな......と考え方を変えることで、上手くシフトしていけたと思います。
ーーその意味では、演技の自由度は高かったのですね。
寺島:そうですね。すごく高かったです。最終回が終わった時に監督は「セリフから画がどんどん膨らんでいった」とおっしゃっていましたので。我々の仕事で世界が広がっていったのであればありがたいですね。
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<2>演者も期待を寄せる、"辞書にない"作中アイテムの3DCG表現
<2>演者も期待を寄せる、"辞書にない"作中アイテムの3DCG表現
昨年12月に行われた、最終話のプレスコ収録後のキャスト集合写真
ーー本作はアニメオリジナル作品ということで、先の展開がわからないなか、演じるというのはどんなお気持ちですか?
寺島:僕は、ザシュニナというキャラクターの役割から、先の展開がわかっていた方がより説得力を持って演じることができると思い、先行してシナリオを読ませてもらいました。先の展開を知らないまま演じることもできますが、わかって演じるのとでは気持ちが変わってくるのでそこは意識して演じた部分ですね。説得力を出す表現についてはかなり悩みました。ザシュニナは全てわかった上で行動しているけれども、全てを説明せずに人類に考えさせる。その"何かわからないけれどもスゴイもの"だという説得力を芝居で表現できるかどうか。加えて、自分の知覚できる範囲の外で、自分自身が変化しているという微妙な変化、そのさじ加減が難しかったですね。その点については音響監督とも密に相談をして臨みました。
三浦:僕も先のシナリオをいただいたのですが、あえて読みませんでした。交渉人として相手に対して意図や目的と言ったものを聞く立場なので、先の展開を本当に知らないというリアルさを出したかったんです。物語の中でザシュニナがもたらすものがいくつかあります。そうした中で、次はどんなオーバーテクノロジーなものが登場するのかというのはとても興味をそそる部分です。そしてザシュニナはその先に一体何を考えているのかを早く知りたくなるところに、この作品の物語の牽引力があるのではと思います。
ーーそうした作品づくりの環境やキャラクター性など、本作は役者として新しい経験となったのでは。
寺島:そうですね。僕は頭で考えるタイプなんですが、今回のザシュニナというキャラクターは、いかに緻密にキャラをつくって表現できるかと点がチャレンジだったと思います。
三浦:ものすごく個人的なことを言うと、僕は声優の世界に入ってからCMやナレーションの仕事が多く、あまりアニメで演じてこなかったんです。そんななか、この作品で初めて主演を務めさせていただきました。主役として、そして座長として作品に向かうということが、一番難しいことだったかもしれません。(寺島さんに向かって)そんな僕に付き合ってくれてありがとうね(笑)。
寺島:いやいやいや(笑)。僕、三浦さんが真道役だと聞いたときに、これは面白い現場になるぞと思いましたよ!
ーーでは、これから放送を楽しみにされている視聴者の方にメッセージをいただけますか。
三浦:僕たちもこれから作品に登場するアイテムが、3DCGでどのように表現されていくのかわからないので楽しみにしているところです。オンエアになったときは驚くと思いますので、そのときに演者と気持ちを共有して楽しんでいただければと思います。
寺島:SF的なワードがたくさん出てくる作品です。"フレゴニクス"というものが出てくるのですが、調べてみると辞書にも載っていない言葉なんです。つまり、本作はそれを初めて映像化する作品でもあるわけです。いつかその言葉が本当に辞書に載るような時代になったら、それを同時体験した者としてすごく面白い経験になるのではと思います。そして3DCG主体のデジタルアニメーションということで、際限のない映像が組み上がっていくことにも非常に期待を寄せています。また、音楽もフルオーケストラで録るとのことで、様々な部分でこれまでにない作品になると思います。役者陣もオンエアを楽しみにしていますので、ご覧の皆様もぜひ毎週期待していただければ嬉しいです。
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<3>毎週見逃さず、1週間かけて味わい尽くしてほしい作品 〜M・A・O(徭 沙羅花役)〜
<3>毎週見逃さず、1週間かけて味わい尽くしてほしい作品 〜M・A・O(徭 沙羅花役)〜
『正解するカド』 予告第2弾 : Concept Trailer
ーーまず作品世界について、徭 沙羅花を演じられたM・A・Oさんはどのように感じられましたか?
M・A・O:本当にしっかりしたSFだと感じました。そして、広い意味での異文化コミュニケーションの作品でもあり、それがある種の道徳的な物語なのかなと、すごく考えさせられました。じっくり観ていただきたい作品ですね。
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M・A・O
2月1日生まれ。大阪府出身。イエローキャブNEXT所属。主な出演作は、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(ラプター283/ワシピンク)、『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』(ナビルー)、『デジモンアドベンチャー tri.』(八神ヒカリ)ほか。
ーー徭 沙羅花を演じるにあたってどのように役柄を組み立てていきましたか?
M・A・O:沙羅花は交渉官なのですが、そうした職務に選ばれるからにはまず頭が切れる人物だろうし、相手の話を聞きながら交渉にも入るというやりとりがちゃんと表現できるかどうか、不安もありました。しかし、ふとした瞬間の意外に可愛い一面も描かれるので、気負ってばかりいなくても大丈夫という安心感もありましたね。
ーーストーリーについてはどのような印象をもたれましたか?
M・A・O:最初の段階だと、ヤハクィザシュニナさんへの対処に振り回されるなか、一所懸命ついていくという感じでした。先のお話の展開はまったく予想がつかなくて、第3話あたりで終盤手前までの展開を教えていただいたのですが、そこで一気に沙羅花の人物像がハッキリしましたね。そのおかげで、地に足をつけて演じさせていただくことができたという感じです。
ーー沙羅花を演じるにあたって難しかったところはどんなところでしょう?
M・A・O:交渉官として物怖じせずハキハキ喋ったかと思えば、ふとした瞬間に動揺してしまうこともあるというギャップをどこまで表現するかという点ですね。交渉官としてだけではなく彼女のプライベートな部分も「もっと(演技に)出してきていいよ」と言われました。あとは、人類を代表する交渉官としての存在感を表現できるよう、考えながら演じさせていただきました。
ーー登場人物が多い作品ですが、アフレコ現場の様子はいかがでしたか?
M・A・O:その話ごとにみなさんで作品についての解釈や考察など、いろいろとお話していました。毎話登場する役の方以外は、次の登場までずいぶん間が空いていることもあり「えっ! 今どういう状況なの!?」と驚かれていました(笑)。視聴者のみなさんも毎週見逃さず、1週間かけてじっくりと楽しんでいただきたいですね。
ーーこの作品はプレスコでつくられていますが、一般的なアニメ収録であるアフレコとのちがいは感じられましたか?
M・A・O:プレスコは時々させていただいているので、そこにあまり戸惑いはありませんでした。これから表情がつくのを想像しながら演じさせていただくのは楽しかったです。それに、カットこぼしについても比較的寛容で、芝居のながれを優先してセリフを発することができ、とてもやりやすかったです。真道さんと喋るときも、言いたいときの気持ちをそのまま芝居にのせることができました。収録後に編集されたものについては、より生っぽさが出ているんじゃないかと思います。収録を終えて、監督から「皆さんのお声をいただいてキャラクターたちがより表情豊かになり、とても助けられました」という言葉をいただけたときは本当に嬉しく思いました。沙羅花もより豊かに表現していただけるということですので、完成がさらに楽しみになりましたね。
ーー最終話まで収録を終えて、沙羅花はどのような役でしたか?
M・A・O:あまりないタイプの役柄でしたので、毎回新鮮な経験でした。沙羅花の人々を想う気持ちが本当にあふれたセリフ回しになっていますので、そこを感じとっていただけたら嬉しいです。収録を終え、これから3DCGの映像がどうなっていくのか、色や音を含めすごく楽しみです。ストーリーの主軸はもちろんですが、そうした映像や効果の部分についても存分にひたって『正解するカド』の世界を楽しんでいただければと思います。
info.
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『正解するカド』
2017年4月より、放送開始!
<放送>
TOKYO MX1:4月7日より、毎週金曜22:30~
MBS:4月11日より、毎週火曜深夜3:00~
BSフジ:4月11日より、毎週火曜24:00~
<配信>
Amazon プライム・ビデオ:4月6日(木)より、見放題独占配信!(第0話 独占配信 / 第1話 先行配信)
第2話以降:毎週金曜 TOKYO MXでの放送後 配信予定
総監督:村田和也
シリーズディレクター:渡辺正樹
脚本:野﨑まど
演出:りょーちも・齋藤昭裕・田辺泰裕
キャラクターデザイン:有坂あこ
アニメーションキャラクターデザイン:真庭秀明・りょーちも・黒岩園加
CGディレクター:カトウヤスヒロ
キャラクタースーパーバイザー:宮本浩史
リードキャラクターモデラー:岩本千尋
リードアニメーター:安田祐也・牧野 快
アニメーション制作:東映アニメーション
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