>   >  デジタルアーティスト、デザイナーとして、ひたむきに"オンリーワン"を追求する。(森田悠揮)
デジタルアーティスト、デザイナーとして、ひたむきに"オンリーワン"を追求する。(森田悠揮)

デジタルアーティスト、デザイナーとして、ひたむきに"オンリーワン"を追求する。(森田悠揮)

CGWORLD本誌での連載「Observant Eye」が3年目に突入した森田悠揮氏。弱冠 26歳ながら、リアリティのあるクリーチャーやキャラクターデザイン、スカルプティングを駆使した造形技術などで他の追随を許さない、孤高のCGアーティストだ。そんな森田氏の連載をベースにした初の著書『The Art of Mystical Beasts ZBrush、Photoshopほか、デジタル技法で描く幻獣アート』の出版を記念して、クリエイターとしての原点をふり返ってもらった。

INTERVIEW_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



<1>祖母の部屋にはテレピン油の匂いが染みついていた

ーー月並みの質問ですが、現在おいくつですか?

森田悠揮(以下、森田):26歳です。

ーーよく「3年・10年・30年」などと、言いますよね。

森田:そうなんです。ちょうどプロとして商業活動をはじめめて3~4年が経過して、ある意味岐路に立っている感じです。

ーーえ!? われわれから見れば、順風満帆に思えるのですが?

森田:んー......。



  • デジタルアーティスト、デザイナーとして、ひたむきに"オンリーワン"を追求する。(森田悠揮)
  • 森田悠揮/Yuuki Morita
    1991年生まれ、名古屋市出身。2014年、立教大学現代心理学部卒業。在学中からフリーランスとしてキャリアをスタートし、卒業後の現在はフリーランスのデジタルアーティスト、キャラクターデザイナー。TV、映画、ゲーム、CM等に登場する生物や怪獣のデザイン、CG制作を中心に活動中。月刊CGWORLDにて「Observant Eye」連載中。

    www.itisoneness.com


ーーデジタルアーティストという芸術系の道に進まれたのは、お母様の影響が強いそうですね。

森田:僕が子どもの頃、母親はWebデザイナーだか何かをしていました。今はアクセサリーを作ったりしてます。その影響で、子どもの頃からPhotoshopとかペイントソフトなどを触って遊んでいました。

ーー母親がWebデザイナーとは、まさに「平成」という感じですね。

森田:ただ、うちの家系で言うと、お婆ちゃんが最強でした。油絵を描いていたんです。3歳くらいから、その姿をずっと見ていました。子どもの目からみても上手いというか、味がある絵だったんですよね。絵やピアノも小さい頃、お婆ちゃんに教わったり。芸術系のことはひと通り、お婆ちゃんと一緒に遊びながら楽しんで。それが原点だった気がしますね。僕も3歳くらいから小学校4年生くらいまで、めちゃめちゃ絵を描いていました。

ーーアトリエみたいなものがあったんですか?

森田:いえ、祖母の自室をアトリエ代わりにしていました。部屋に入ると油彩特有のテレピン油の匂いがしていて、その匂いをかぐと、今でも当時のことを思い出します。うちは母子家庭なのですが、幼い頃、父親にもポケモンの絵を描かせたことがあって、けっこう上手かった記憶があります。母の弟も、バリバリ現役の漫画家で活躍してますし、少しでもそういう遺伝子を受け継いでいればいいなあ(笑)。

ーー学生時代の部活動などは?

森田:その影響もあって、まったくスポーツに興味がない子どもに育ちました。小学校時代もゲームをやったり、絵を描いたりと、インドア派でしたね。スポーツ系の部活動なども、バスケとかサッカーを一瞬だけやったのですが肌に合わなくて、、、すぐ辞めるということをくり返していました。

ーーすごくスポーツをやっていそうな、恵まれた体型ですが......。

森田:いやいや、かじったくらいで、スポーツの熱意はまったくない子どもでしたね。特に中学生時代はこれまでの人生で最もひきこもりがちな時期でした。学校でめっちゃいじめられていたんです。学校が楽しくなくて、放課後は家に帰ってPCでゲームをやったり、ネットしたり。

ーーそうだったんですか。

森田:逆に高校では、めっちゃ普通に青春しました。部活動は軽音部でバンドをやって、放課後は友達と毎日遊びに出かけて。普通に楽しかったです。逆に絵を描くといった芸術系の活動は、まったくやらなくなっていました。

ーーバンドは何をやられていたのですか?

森田:楽器はドラムでした。もっとも本気でやっていたわけではなくて、趣味の一環で、ラウド系バンドのコピーバンドとかしてました。なんだかんだで大学でも続けていましたね、CG始める直前まで。

ーー音楽がお好きなんですね。

森田:めちゃめちゃ好きです。

ーー一緒くたにしたら怒られそうですが、絵も音楽も同じ芸術系ですね。

森田:音楽と視覚表現はリンクしていますよ。好きな音楽が似ていると、たいてい同じような絵が好きだったりします。描く絵でも同じようなテイストがあったり。人間の好みって面白いですよね。

ーーその後、大学進学を機に上京されるわけですが......。なぜ立教大学を、そして心理学を専攻されたのですか?

森田:その前に。高校時代、ぼんやりとバンドしかやっていなかったし、勉強もたいしてできる方ではなかったし、このままでいいのかなと思い始めまして......。本当に自分がやりたいものってなんだろうと考えたとき、子どもの頃に夢中だった美術を思い出しました。ゲームも好きだったので、漠然とゲームグラフィックとかつくってみたいなと思ったりも......。3DCGについては、中学時代から知っていて、漠然といつかやりたいなとも思っていました。



デジタルアーティスト、デザイナーとして、ひたむきに"オンリーワン"を追求する。(森田悠揮)

ーーなるほど。大学での専攻以前に、そうした夢を抱かれていたわけですね。

森田:本当に漠然とですけどね。そんなこんなで大学を探したら、私立大学で映像系の授業があるところをいくつか見つけました。立教大学の現代心理学部や立命館大学の映像学部とか。そうした大学に行けば、CGや映像が学べるチャンスがひょっとしたらあるのかなと考えたのです。

ーーまた、同時期に映画『アバター』(2009)をご覧になられて、衝撃を受けたとか。

森田:ちょうど高校を卒業したあたりだったと思います。『アバター』以前にもVFXを多用した作品を、いわゆるハリウッド大作を観ていて、3DCGってなんでも表現できるんだなと。ただ単純に視覚表現のツールとして興味を抱いていました。

ーーそのほかにはどんな映画が好きでしたか?

森田:CGという意味では、小学生か中学生のときに観た『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)が自分にとって衝撃でした。逆に『マトリックス』や『スター・ウォーズ』などの自分よりも上の世代の方々に支持されている作品はあまり観たことがありません。単純にビジュアルの圧倒感という意味で『アバター』はまさに衝撃的でした。それとは別に怪獣映画も昔から好きで、『ガメラ』シリーズや『モスラ』シリーズなどよく観てました。

ーーマンガやアニメはいかがですか?

森田:アニメは小学生の頃に、人並みに観ていたくらいですね。マンガも特には。

ーーゲームはどうでしょう?

森田:人並み程度だと思いますが、1つのタイトルをやり込むタイプでした。『ポケットモンスター』『キングダムハーツ』『ファイナルファンタジー』シリーズなどです。なかでも『ポケモン』は、今の僕の生き物やクリーチャー好きの土台になっています。一応初代『ポケモン』から全作プレイしてますし、最新作『ウルトラサン』『ウルトラムーン』もこれからやりますよ。

ーー話を戻して大学進学についてですが、美大に行こうとは考えませんでしたか?

森田:ちょっとだけ思いました。ただ、当時は漠然と美大と言われても、よくわからなかったんです。

ーーお母様は美大出身ではないのでしょうか?

森田:いえ、東京の私立大学で、人文系でした。いちど美大に進学したいと、ちらっと母に言ったのかな。そうしたら「大丈夫なの? なにも勉強してないじゃん」と返されて、確かになと。

ーー逆に説得されてしまった(笑)。

森田:僕の真剣さが伝わらなかったというか、本当に漠然としていたからでしょうね。母親には「(それなら)一般私大に行っておいたら?」と言われて。僕自身も体系的に美術を学んだこともなかったので、結果的に私立大学を目指したという感じです。後悔はしていませんけど、アーティストとして飛び抜けたいという意志が、もっと小さな頃からあれば、美大に行っていたと思います。

ーーとはいえ、立教大学もかなりレベルが高いじゃないですか。

森田:いわゆる入試という点では、私大の中ではそうですね。ただ、第一志望が早稲田大学の文化構想学部だったんです。なんとなく、自分の興味分野にかすっていたというだけなんですが......。純粋な映像というよりは、人文学の知見を現代的な視点や新しいテクノロジーから捉え直し、学術的に研究していくという学部でした。でもそこは落ちちゃったんですよ。補欠合格までは行ったんですが......。その一方で立教大学に合格したので、こっちに行こうと。われながら本当にふんわりと進学しました(苦笑)。

ーーまとめると映画が好きだからとか、3DCGが好きだからというような、明確な理由があったわけではなかったんですね。

森田:さっき言ったようにCGには興味ありましたが、その当時から本気だったらCG系の専門学校に行かせてほしいと頼んでいたと思います。めちゃめちゃ漠然としていましたね。

ーー一般論ですが、男の子よりも女の子の方が早熟ですよね。一方で、何かスイッチが入ると、そこからガーッと伸びるのが男の子というか。

森田:そうですね。僕の場合は上京して、大学に入って、デジタルハリウッドに行ってから、スイッチが入りました。



▶次ページ:
<2>専門学校で3DCGを学んで"スイッチ"が入った

Profileプロフィール

森田悠揮/Yuuki Morita

森田悠揮/Yuuki Morita

1991年生まれ、名古屋市出身。2014年、立教大学現代心理学部卒業。在学中からフリーランスとしてキャリアをスタートし、卒業後の現在はフリーランスのデジタルアーティスト、キャラクターデザイナー。TV、映画、ゲーム、CM等に登場する生物や怪獣のデザイン、CG制作を中心に活動中。月刊CGWORLDにて「Observant Eye」連載中。

www.itisoneness.com

スペシャルインタビュー