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ILMシンガポールのスーパーバイザーが語る『スター・ウォーズ』&『キング・コング』近作の制作秘話とシンガポールのCG事情

ILMシンガポールのスーパーバイザーが語る『スター・ウォーズ』&『キング・コング』近作の制作秘話とシンガポールのCG事情

昨年11月5日(日)の「CGWORLD 2017 クリエイティブカンファレンス」にて、ILMの制作フローが披露されたセッション「ILMの制作現場を語る【Industrial Light & Magic - Singapore】」。本セッションに登壇したILMシンガポールのCGテクノロジー・スーパーバイザー、フィル・ヴェト・ファム氏に、セッションでも紹介された映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)、『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017)の制作の裏側と、ILM4拠点の連携体制などについて、改めて話を聞いた。

EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

<1>『スター・ウォーズ』第1作と同時代を再現するための挑戦

ファム氏はILMシンガポールで10年のキャリアをもつ。ILMで数々の作品に携わる前はMethod StudiosZoic StudiosLuma Picturesなどでも活躍してきた。氏の「CGテクノロジー・スーパーバイザー」というポストは、ILMグループ内で、単一の作品制作に関わる問題を個別に解決するのではなく、複数あるプロジェクトにおける様々な技術的な問題点を全社で連携して解決するための立場だという。同様の役割のスーパーバイザーがILMの各スタジオに1人ずつ置かれ、それらを統括する立場のスタッフがサンフランシスコ本社に1人いるとのこと。

  • フィル・ヴェト・ファム/Phil Viet Pham(Industrial Light & Magic Singapore / CGTech Supervisor)

    業界歴15年以上、ILMシンガポールに勤務し10年を迎える。映画『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011)で3D映像スーパーバイザー、『アベンジャーズ』(2012)でシニアコンポジター、『グレートウォール』(2016)でCGスーパーバイザーを経て現職。CGテクノロジースーパーバイザーとしての専門領域はコンポジティング。ILMのサンフランシスコ本社、バンクーバー、ロンドンの支社と連携し、作業効率の最大化と、クライアントが求める高度なVFX映像の実現に取り組んでいる
    www.ilm.com


『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(以下、ローグ・ワン)』(2016)は、「スター・ウォーズ アンソロジー・シリーズ」と呼ばれるスピンオフ作品の1作目にあたり、本流である「サーガ」シリーズとは趣を異にする。ストーリーの時系列的には第1作の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(以下、スター・ウォーズ)』(1977)の直前の出来事を、ジェダイを登場させずに描く。「アンソロジー・シリーズ」以前にもスピンオフ作品は数々つくられてきたが、全てがテレビ映画やアニメとしての制作だった。ルーカスフィルムが2012年にディズニー傘下となったことにより、本流と遜色ないほど見応えのある実写映画作品としての制作が実現したというわけだ。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (吹替版) - Trailer

もともと第1作の制作のためにジョージ・ルーカスによって組織されたILMは、もちろん本作のVFXも手がけている。原案および製作総指揮としてILMのVFXスーパーバイザーとしても有名なジョン・ノール/John Knoll氏が名を連ねているが、本作のストーリーはまさしく第1作制作時のノール氏の小さな思いつきを記した、たった1行のメモに端を発しているそうだ。「それは『スター・ウォーズ』で、デス・スターの攻略という1つの目的のために、見えないところではたくさんの人々が死んでいる、というものでした。「サーガ」シリーズはディズニーによって厳格に管理されていますが、アンソロジー・シリーズは、設定も演出的にも自由度が高かったので、激しいアクションシーンを多く盛り込むことができました」(ファム氏)。ILMシンガポールでは270ショットを専任で担当し、27ショットを共同で制作した。ピーク時で最高86人のアーティストが関わることになったとのこと。

本作の制作において最も重視されたのは、「オリジナルである『スター・ウォーズ』の正確なコピーをつくるのではなく、我々の頭に残っている記憶と雰囲気を再現しよう」というノール氏の言葉だった。このコンセプトは制作にも大きく影響しており、ファム氏の次の言葉からも色濃く感じられる。「とにかくオリジナルとの一貫性を大事にすることが最大のこだわりでした」。

ファム氏にあの有名な『スター・ウォーズ』シリーズの制作に参加することができた感想を伺った。「すごく興奮しましたね。大変好きな作品でしたので。劇場で見るときの楽しみが薄れるといけませんので、制作中は自分が関わらないところはできるだけ見ないようにしていたくらいです(笑)」。


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『ローグ・ワン』実制作におけるトピック

Profileプロフィール

フィル・ヴェト・ファム/Phil Viet Pham(Industrial Light & Magic Singapore / CGTech Supervisor)

フィル・ヴェト・ファム/Phil Viet Pham(Industrial Light & Magic Singapore / CGTech Supervisor)

業界歴15年以上、ILMシンガポールに勤務し10年を迎える。映画『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011)で3D映像スーパーバイザー、『アベンジャーズ』(2012)でシニアコンポジター、『グレートウォール』(2016)でCGスーパーバイザーを経て現職。CGテクノロジースーパーバイザーとしての専門領域はコンポジティング。ILMのサンフランシスコ本社、バンクーバー、ロンドンの支社と連携し、作業効率の最大化と、クライアントが求める高度なVFX映像の実現に取り組んでいる

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