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TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

2019年12月3日、アドビ最大のクリエイティブカンファレンス『Adobe MAX Japan 2019』がパシフィコ横浜で開催された。基調講演に登壇したのは、アドビシステムズ日本法人代表取締役 Jim McCready/ジム・マクリディ氏。

基調講演やその他の講演詳細は『Adobe MAX Japan 2019』アーカイブ動画一覧より視聴できる

冒頭、マクリディ氏はInDesignの事例をもとに日本との特別な関連性を強調。英語圏と違い漢字やカタカナなど独自の文字様式の多い日本だが、20年前InDesignは日本語に対応し、新たなワークフローを生み出した。現在はさらにクリエイティブチームの規模が大きくなると共に、ワークフローの改善を担うツールの重要度が高まっていると述べた。

続いて登壇したCreative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO Scott Belsky/スコット・ベルスキー氏は「Creative Cloud」のアップデートについて説明した。OSやハードウェアが進化している中、クリエイターからはツール側のパフォーマンスの向上が求められているが、Adobeはこの1年でPhotoshop CCの高速化やPremiere Pro CCのProRes HDRを最大10倍高速化するなどのパフォーマンスアップを実現。また、アイデアを自宅以外でも具現化できるiPad版Photoshopや、アセット共有などがより簡単になったAdobe XDの新レイアウトも紹介された。

岩本 崇氏からは、冒頭でMicrosoft PowerPointなどと連携するCreative Cloud ライブラリの紹介が行われた。Photoshop CCの新機能としては「ワープ機能の進化」、遮蔽された物体も切り抜き可能な「選択ツール」の進化、「背景の削除」が挙げられた。

ワープ機能は従来では1つのポイントでのみ変形ができなかった点が複数を選択可能になったほか、マスク処理ではAdobe Senseiの技術を用いて高い精度を実現。その後はAdobe Illustratorの高速化として数万のパスで構成された虎のモチーフをスムーズに拡大/縮小した後、本講演が初公開となったAdobe Captureを用いたカラー素材のベクターデータ取得デモ(従来はモノクロのみ対応だった)が行われた。

基調講演の中でも特に長い時間をかけて説明されたのは、Adobe各種ツールのiPad版だ。iPad版Photoshop CC、Fresco、llustratorの説明の中では、それぞれのツールで1つの作品を形づくるところが説明された。例えば、iPad版Photoshop CCは.psdファイルに対応しており、機能名もほぼ同一だが、拡大/縮小は画面上部のスワイプで操作し、ショートカットは画面左下の「タッチショートカット」を用いて操作するなどGUIはiPadに特化されている。

Creative Cloudから入手した複数の素材を組み合わせて1枚の画像をつくっていく

今後のアップデート予定について

Frescoのデモでは日本からのリクエストに応えて制作されたブラシを用いて富士山が描かれた

llustratorのデモではApple Pencilで行なっていることを強調。モリサワのフォントを含む複数の日本語フォントを用いた文字入力や、Adobe Senseiの機能を用いて撮影したアナログ線画をベクター化する機能などの説明があり、2020年にリリース予定とのこと

Premiere Pro CCでは映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』の素材を用いた説明が行われた。大量の撮影素材を自由自在に並べて俯瞰的に閲覧できる「フリーフォームビュー」を用いることで素材の選定が容易になるほか、Adobe Senseiの技術を用いた「オートリフレーム」で横型の映像から縦型の映像(スマホ向けのプロモーションなど)を自動的に生成する方法が説明されている。これまではマニュアルで作業する必要があったが、被写体を中心にした映像であれば今後は自動化が図れる見込みだ。また、Adobe Premiere Rushでは要望の多かった速度変更を実装しているとのこと。

また、基調講演後半では「Substance(3Dテクスチャ作成ソフトウェア)」のビデオ紹介もあり、その後イマーシブ環境での制作を実現するためのAdobe Aeroが紹介された。「道路標識がパーソナライズされたり、目の前の食べ物のカロリーがわかったりするよ......もしそれを知りたければね(Scott氏)」と語られたように、AdobeはAR技術に力を注いでおり、Aeroでは現実空間に木々や鳥を配置していくデモも実演された。

Photoshop CCなど外部ツールで作成した木々や鳥のアセットをAR空間上に配置。アクションを設定することも可能

Adobe Senseiの技術を発展した新機能紹介や、モバイルとデスクトップの連携およびモバイルならではのワークフローが示された基調講演は実機のデモも多く、クリエイターにとっても近い未来を想像しやすい内容だった。

多くのPCメーカーがクリエイター向けPCを訴求

講演冒頭でも触れられたように、OSやハードウェアの進化とツールのアップデートはお互いに強く関係しており、クリエイターにとって快適な作業環境を提供するAdobeのビジョンにはハイスペックなPCが不可欠となる。こうした背景からか、展示ブースでは各社PCメーカーが目立っていた。

中でも目を惹いたのは、Microsoftのブースで「アプライド」「FRONTIER」のBTOメーカー2社が展示されていた点だ。

4K/8K対応をはじめとする環境の変化から扱うデータ容量も増加し、ツール側の要求スペックも年々上がっていく中、クリエイター自身が「SSDの速度重視」「GPU重視」などベストな環境を模索するのが当たり前になっており、BTOメーカーの果たす役割は大きい。Microsoftとしては、こうしたBTOメーカー向けにSSDやマザーボードなど特定のPCパーツとOSがセットになった「Windows 10 DSP版」を提供しており、さらなる普及をねらう考えだ。

  • Swaro氏によるDIY PCのコンセプト展示。筐体からすべて自作とのこと。ここまでのクオリティは真似できないが、BTOでなく自作PCをつくる場合もパーツと一緒にDSP版を購入するのが確実にお得

アプライド株式会社は九州地方や中国四国地方を中心に実店舗を構えるBTOメーカーで、官公庁や大学をはじめとする法人格向けの組み込みPCも得意とする。BTOメーカーだけにとどまらず、自社でも映像プロモーション提案事業を手がけるなどテクニカルな面も対応可能。「フロンティア」はインバースネット株式会社が手がけるPCブランド。これまではゲーミングPCメーカーという印象が強かった同社だが、近年はNVIDIA Quadroシリーズを搭載したラインナップを用意するなど3DCGクリエイターも強く意識されている。

アプライド展示PC
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(フロンティア)インバースネット展示PC
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ほかにもオリジナルグッズをつくれるアドビ工房や人気の物販、Creative Cloudコーナーなど、会場内は多くのブースが立ち並び、参加者が足を止め、列をなして説明を待つ様子もたびたび見受けられた。



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