記事の目次

    Framestoreで活動中の今川真史氏が解説する本誌の連載と連動して、メイキング動画とコラムをお届けする。

    TEXT_今川真史 / Masashi Imagawa(Framestore
    EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、野澤 慧 / Satoshi Nozawa

    「スラップコンプ」の作成からクリエイティブな作業へ

    今回は森の中に立っている「エイリアン ビーコン」を制作しました。当初はもっとカクカクした人工物のイメージだったのですが、せっかく森の中に立っているので、使っているパーツは機械ですが、有機的に見えるように挑戦しました。最終的な全体のイメージとしては、木の根っこが集まっている感じです。

    また、最近はフルCGの自主制作が多かったので、実写も交えた作品にしてみました。仕事ではフルCGショットの画づくりもありますが、実写にCG素材を馴染ませる仕事もあります。この頃は特に合成ショットの仕事が多かったので、仕事で得たことを思い出しながら制作しました。

    合成で重要な要素としては、ブラックレベル、ホワイトレベル、サチュレーションデフォーカスなどが主に挙げられます。仕事でも最初は「スラップコンプ」というものを作成して、スーパーバイザーから指示をもらいます。この「スラップコンプ」というのは、ライティングから上がってきた素材を先ほど挙げたブラックレベル、ホワイトレベルなどの最低限必要な部分を合わせて、おおまかな方向性を確認する作業です。

    その後、スーパーバイザーと話し合いながらさらに馴染ませ、クライアントからの要望に応えるなど、クリエイティブな作業に移ります。スペキュラやリムライトなどを調整してキャラクターを強調させたり、背景のマットペイントなどにはスケール感が出るようにヘイズを足したり、屋根から出る煙や鳥の素材、雪の素材などを足していき、ファイナルにもっていきます。

    今回の作品では、基本的な合成の部分、特に地面とのインタラクションを意識しました。クリエイティブな部分では、ゴットレイとリムライトでオブジェクトが目立つように工夫してみました。

    とはいえ、やはりスタジオのCG素材と自分でつくる素材とでは差があるので、またライティングやレンダリングまわりを勉強したいのですが、その時間にコンポジットの勉強がしたいというのが本音なので、これからはライティングアーティストに協力してもらって、ハイクオリティの作品をつくっていきたいです(笑)。

    Alien Beacon from Masashi Imagawa on Vimeo.

    Profile.


    • 今川真史/Masashi Imagawa
      Framestore/コンポジター

      京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。大学1年次に受けた授業をきっかけに、ほぼ独学で3DCGを学ぶ。自主制作作品『THE SEABED』でKLab Creative Fes'17動画部門グランプリ受賞。MPC モントリオールを経て、現在はFramestoreに在籍
      www.artstation.com/masashivfx321



    • 月刊CGWORLD + digital video vol.255(2019年11月号)
      第1特集:僕たちがBlenderを使う理由
      第2特集:アニメCG×ゲームエンジン
      定価:1,540 円(税込)
      判型:A4ワイド
      総ページ数:128
      発売日:2019年10月10日