記事の目次

    デジタルコンテンツ制作者の就職活動やワークスタイルの実像に迫る本コーナー。今回のテーマは「外国籍スタッフの採用」です! また今回は特別編として外国籍スタッフを積極採用している企業へのインタビュー記事も合わせてお届けします。

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 261(2020年5月号)からの転載となります。

    Illustration_カヤヒロヤ

    アンケートにご回答いただいた求人中の企業情報はこちら!
    アイロリ・エンタテインメントアバンアングーイグニス・イメージワークスオレンダKATACHIカンムスマートエンジニア東映デジタルセンター ツークン研究所ポリゴン・ピクチュアズVolcaミルキーカートゥーン

    求職側

    Q1.出身地域は?


    東アジア出身の方が59.5%と半数以上を占め、次いで東南アジアが27.7%という結果に。アジアに比べると少数ですが、欧米諸国出身者もいるようです。また、日本で就業中の方が15人、日本で在学中の方が27人と、大半の方々がすでに日本在住のようです。

    Q2.日本で働きたいのはなぜ?

    ※複数回答可(最大3つまで)


    最も多かった回答は「日本のコンテンツが好き」、次いで「日本で暮らしたい」でした。「待遇の良さ」ということを理由に挙げた方は23%(11人)ほどで、雇用条件そのものよりも日本という環境に魅力を感じている求職者が多いようです。

    Q3.日本で働く上での不安は?

    ※複数回答可(最大3つまで)


    「言葉の壁」や「業務面・日常生活面でのカルチャーギャップ」など、文化のちがいに起因する不安を抱えている求職者が多いようです。また、「就労ビザの取得」など、業務そのもの以外の要因もあるようです。

    Q4.希望する雇用形態は?


    「正社員」を希望する回答が圧倒的に多く、全体の84.8%を占めました。「フリーランス」を希望したのはわずかに8.7%で、自由な働き方よりも安定した雇用形態を求める求職者が多いことがわかります。

    採用側

    Q1.社内における外国籍スタッフの割合は?


    大半の企業(69社)において、外国籍のスタッフは1割にも満たないようです。しかしながら半数以上が外国籍スタッフだという会社が2.3%(2社)と、多数の外国籍スタッフが在籍する企業も少数ながら存在することがわかりました。

    Q2.外国籍の方からの応募は増えていると思う?


    77.3%(68社)が外国籍の方からの応募が増えていると回答。おそらく、今後この傾向はさらに強まっていくと思われます。ちなみにCGWORLD JOBSの応募者のうち、3割が外国籍の方々です。

    Q3.外国籍スタッフを今後増やす予定?


    約4割の企業が、今後は外国籍のスタッフを増やしたいと回答しました。その理由としては「人材の多様性を高めたい」というものが最多。また「採用においては国籍を問わず、能力やスキルで判断する」という回答も多くありました。

    Q4.外国籍スタッフを採用する上での悩みは?

    ※複数回答可(最大2つまで)


    クリエイター側の回答と同じく、「業務面・日常生活面でのカルチャーギャップ」や「言葉の壁によるコミュニケーションの難しさ」を挙げる企業が多く、外国籍のスタッフが日本で働く上では、文化の差異がハードルとなっていることが窺えます。


    アンケート方法について
    ※本記事は下記の要領にて実施したアンケートの結果に基づいて構成しています。

    調査方法:Webアンケート
    調査期間:2020年3月6日(金)~13日(金)
    調査対象:〈求職側〉CGWORLDメールマガジン登録者ならびに各プロダクション所属の方、各教育機関の生徒の方/〈採用側〉「CGプロダクション年鑑」掲載企業ほか
    有効回答数:〈求職側〉47/〈採用側〉88

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    深堀り編:言葉の壁・カルチャーギャップをどのように超える?

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    深堀り編:言葉の壁・カルチャーギャップをどのように超える?

    前ページのアンケートで課題として浮かび上がったのは、文化面・業務面での「カルチャーギャップ」「ビザの取得」でした。本記事では回答協力企業の中でも、特に外国籍スタッフの採用比率が高い企業が、どのように課題解決を図ってきたのか追加取材を行いました。

    「深堀り編」の記事制作にあたり、回答協力いただいた外国籍スタッフ積極採用企業
    アニマシーズクラフトスタジオグッファデジタルモーションVolca

    "言わなくてもわかる"はご法度! ギャップを埋める各社の工夫

    アンケート協力企業のうち、外国籍スタッフ採用比率が相対的に高い企業に、まずは外国籍スタッフ雇用の契機について話を聞いてみました。「海外との窓口となってもらうため、役員に外国人を採用しているからです。その外国人がArtStationなどに作品をよく載せていた経緯があり、そこから求人、お仕事の依頼が来ることも何度かあります」(スタジオグッファ)というように、海外への窓口を設けたことがきっかけで、そこから採用を拡大した企業があるようです。「日本人より意欲が高かった」(シーズクラフト)、「日本が好きでわざわざ来る方が多いので、若い日本人よりやる気がちがいます」(デジタルモーション)と、海外から求職してくるだけに、意欲の高い人材が揃っているからと回答した企業もありました。また「そもそも採用時に日本人だから、外国人だから、という区別をしていない」(ORENDA)というように、外国籍スタッフを採用するという意識ではなく、能力を見て採用した人材が結果的に外国籍のスタッフだった、というケースもあるようです。

    このように、外国籍スタッフの雇用機会は増加傾向にあるものの、やはり日本人を採用するのとはまた別の課題があるようです。「言葉の問題が大きな課題でしたが、時差や価値観など、挙げたらキリがありません」(アニマ)、「日本人の得意な"言わなくてもわかる"はご法度だと思います」(Volca)といったように、言葉の壁や価値観のちがいなど、コミュニケーションの面において大きな課題があったと回答する企業が多くみられました。また、「彼ら(外国籍のクリエイター)が得意とするものがフォトリアルなものが多い印象です。そのため日本特有のセルアニメ調のモデルとなると、難しい部分もあります」(スタジオグッファ)というように、国内外での求められる成果物の方向性のギャップも課題のひとつのようです。

    そこで、チームの人員構成やしくみなどについて工夫している点についても聞いてみました。「基本、そのプロジェクトの得意不得意や、相性が合うような組み合わせ、人員配置を心がけています。リーダーに外国人をたてた方が良いときもありますが、現在、当社ではアニメ案件が多いため、そういった場合は日本人で固めたりします」(スタジオグッファ)と、それぞれのスタッフの適正に応じて、能力を発揮しやすいように人員配置が工夫されているようです。また「ものすごく日本語が上手な外国籍スタッフがいるので、そのスタッフをハブにするように構成している」(シーズクラフト)、「社内にトランスレーターがいるので、チーム横断で助けてもらっています」(ORENDA)というように、日本語も外国語もできるスタッフに間を繋いでもらうという工夫もあるようです。「単発の案件でもマニュアルを一度作成し、指示内容を中学レベルの簡単な英語とイメージ図の組み合わせにすることで、誰でも理解しやすいようなしくみにしています」(デジタルモーション)というように、独自の取り組みを行なっている企業もありました。

    外国籍スタッフを交えた実務においては、表現についての「すり合わせ」や言葉や文化背景のギャップを埋める必要があります。そこで、実際にどのような手法が採られているかを聞きました。「簡単な内容だから伝わっているだろうと思ったことでも言い回しを複数使ったり、図などを用いたりして念入りに確認を心がけていますし、他のスタッフにも同じことを心がけて貰っています」(Volca)と、業務の遂行において入念な確認作業が大切だとの回答がありました。また「アニメーターに関しては日本のアニメーションのリップシンクの経験有無を聞くことが多いです」(アニマ)など、日本で求められる技術の経験を尋ねることによって適性を見ているケースもあるようです。

    カルチャーギャップ、コミュニケーションの問題以外にも、外国籍のスタッフが日本で働くときにハードルとなる物事は少なくありません。例えば、就労ビザの取得です。そこで、いくつかの企業では、外国籍スタッフの就労ビザの取得についてサポートが行われています。「必須となる在留資格認定証明書交付申請書の手続きをしている」(アニマ)、「在職証明書や、見込み年収を書いた書類などの補助書類を発行しています」(Volca)、「所得しやすいように必要な書類の用意や司法書士などのケアをしている」(シーズクラフト)など、就労ビザの取得に関しての支援を行なっている企業は少なくないようです。また外国籍の方が日本へやってきて働くとなると、当然必要となるのが住居ですが、そこでもやはり、物件を借りるまでのハードルは高いです。それでも「物件探しから契約まで、企業としてしっかりサポートをしています」(ORENDA)というように、手厚くサポートが行われている企業も存在することがわかりました。

    以上になりますが、今回のアンケート調査で得られた知見を、ぜひ、今後の採用活動、体制づくりの参考にしていただきたいと思います。

    紹介したい、うちのスタッフ<No.1>

    • アニマ所属
      Frank Medgyesy(ピーター・メジェン)さん
      出身国:ドイツ
      職種:ショットアーティスト

    Q1.日本で仕事をしようと思った理由は?

    ドイツで『攻殻機動隊』と『アキラ』を観て衝撃を受けたことがきっかけで将来日本でアニメーションを作る仕事がしたいと思いました。2011年に来日して2年間日本語を勉強し、その後専門学校でCGを学びました。

    Q2.アニマを選んだ理由は?

    以前勤めていた会社でアニマと同じプロジェクトを担当した際に実際のワークフローや作業環境(雰囲気)を知り、興味を持ちました。スタッフがとてもフレンドリーでライフワークバランスが抜群なところが良いと思いました。

    紹介したい、うちのスタッフ<No.2>

    • Volca所属
      張中崢(チョウ・チュウジョウ)さん
      出身国:中国(蘇州)
      職種:Unityゼネラリスト

    Q1.日本で仕事をしようと思った理由は?

    日本でCGを使って表現をしたいと思ったからです。

    Q2.Volcaを選んだ理由は?

    ゲームエンジンを使って色々な面白い仕事が出来る点や、スタッフの年齢が近く話しやすい点、そして中国語が通じるスタッフが多い点です。

    紹介したい、うちのスタッフ<No.3>

    • ORENDA所属
      Alan Avila(アラン・アビラ)さん
      出身国:メキシコ
      職種:宣伝プロデューサー

    Q1.日本で仕事をしようと思った理由は?

    日本のエンターテインメント業界に興味がありました。日本のゲーム業界は歴史が長く、規模も大きいのが魅力です。そしてもう一つの理由は、ラーメンが大好きだからです(笑)。

    Q2.ORENDAを選んだ理由は?

    とてもオープンな会社で、たくさんの斬新なアイデアを受け入れてくれます。スタッフたちのニーズや働き方にも柔軟な対応ができてとてもありがたいです。また、働く環境にも非常に満足しています。ランチが美味しいのも嬉しいですね。

    次回のテーマは「インターンシップ」!

    「こんなテーマをアンケート記事にしてほしい」等、皆さんのご感想・ご意見お待ちしてます。次回のテーマは「インターンシップ」です。各企業ではどのようなインターンシップが行われているのでしょうか。また、実際にインターンを経験した方々の本音にも迫ります。お楽しみに!