画にプラス要素を。
画には法則があります。
それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。
永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。
そして願わくば貴方の人生に+画を。
今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Turorials』と連携してお届けします。
TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(CGWORLD)
【+画 ONLINE】vol.003:Line / 「線」を使いこなす
(CGWORLD Online Tutorials)の
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Concept
「画」はモニタの中ではなく、自分の中にある
家の中にいなくてはいけない現状で、ここまで長い期間に渡り外界と接することのない日々は、これまでもこの先の人生でもなかなかないことでしょう。
そうであれば、今まで気が付かなかった「自分を見つめる」、
そんなことをしてみても良いのではないでしょうか。
クリエイターは自己分析も大切です。目標や夢とはちがい、現状や自分の能力を甘やかさず評価してみること。そして、瞑想というほどではありませんが、モニタの前でも良いので少し目を閉じて、これからつくるものやこれまでつくったものなどを頭の中でイメージしてみてください。画はモニタの中にあるのではなく、自分の中にあります。
そういった「ほんの少しの気付き」についても、多くの師匠から教え伝えられてきました。
さて、今回は「線」についてのお話です。
<画創の法則>
・均衡の法則
創造物にはバランスがあります。
人間は無意識のうちに、目でバランスを捉えています。
<線力>
「ただの線」も、使い方によって大きく印象を変えることができます。線でできているものは沢山ありますよね。今回は、HUD(Head-Up Display ※1)のようなディスプレイ上に映し出されたグラフのイメージで。
実はこういったデザインのお仕事は意外と多いんです。SF系のデザイン、宇宙船、コクピット、ルーム......、様々なところで線を用いたデザイン要素が求められます。そしてこれらのデザインは、全体のクオリティをも左右します。
※1:人間の視野に直接情報を映し出す手段である。この技術は軍事航空分野において開発され、実験的にではあるがさまざまな分野に応用されている(Wikipediaより)
まずは基本的な「線」のお話ですが、単純に縦線を描いても「線」でしかないですね。
これはこれで、線として認識できれば問題ないのですが。
少しバランスを崩してみましょう。左からだんだんと細くしていきました。想像してみましょう。先ほどの均等に配置された4本の線よりもドラマが生まれましたね。
ひょっとして光のようにも?
さらに大量に置いてみましょう。これは最初に登場した4本の線の数を増やしただけです。ここまですると「模様」や「パターン」のようですね。
何か意味のある記号? バーコード?
さらに大量に配置し、色も加えてみました。
これは何かのメッセージでしょうか?
「画創の密度」でも同様のことをお伝えしていますが、人間の目は、数えられなかったり数量を認識できなかったりと一定以上の物量がある光景を「凄い」と判断します。「量」はクオリティアップの技の1つです。
このように、最初はただの線でしたが、それを幾度も重ねたり並べ替えたり、大量に配置したりすることで、様々な表現や意味を表すことができます。
今回は、そんな「線の使い方」に焦点を絞り、作品をつくってみました。
Design
「完成された画」を模倣する
レオナルド=ダ=ヴィンチという人物は、どれほどのアーティストに影響を与えてきたのでしょうか。私が敬愛する先人の1人です。
画の勉強の1つに「模写」があります。「完成された画」を模倣することで、主にはバランスやレイアウトなどを学び取ります。絵画の学びの場では、古くから採り入れられてきた勉強法です。
ただの円と正方形の組み合わせですが、人間の動きと接地、バランスを捉えた素晴らしい配置です。ちなみに地面を意識させるのは「レイアウトの天地」のため。基本ですね。
少し加工してみましょう。グラデーションと線を二重にしてみました。線は二重にすることで、印象を強く与えることができます。「仮面ライダー1号」、「仮面ライダー2号」みたいな(笑)。
そして応用です。「大きなもの」に「小さなもの」を。バランスに関しては以前も触れましたが、こういった「目盛り」のような副資材はとても効果があります。決して目立ってはいけませんが、密度を上げるための要素です。
補助的な線をおまけとして加えることで、「これがUIやアイコンのような役割のもの」であると認識させることができます。さらに文字要素を加えることも重要です。
文字要素の話のついでに、最終画像の上下にある文字についてお話しすると、これも古文書を参考に構成しています。こういう配置には、古い筆記体がよく合いますね。
そもそも、この人間のポーズを円と四角から捉えて融合させるという発想は、どこからきたのでしょうか?
図形と人体、それぞれ単体でも非常にバランスがとれて洗練されて見えますが、それらを複合させることで絶対的なバランスと安定感が生まれています。私はまだまだその域に達しておらず、はるかに先があるようです。
Arrange
DX的なアレンジを加える
ここからは「スマホUI」のようなDX(※2)的なアレンジを加えていきます。
※2:デジタルトランスフォーメーション
どういったものが「アナログとデジタルの境界」なのでしょうか。ここまでの工程で描画した線はデジタルの要素かもしれませんが、紙に線を描いた場合はアナログと言えます。ホログラムやX線画像、エコーなども同様でしょうか。デジタル的な特徴に画を誘導していきます。体内などの内部的な描画なども、DXならではの表現の1つでしょう。
再び「線の話」をすると、直線はおそらくデジタル的で硬い印象を与えます。これを少し緩くしてあげましょう。
線にカーブを加えるだけで、有機的な印象を与えることができます。これでもまだ「デジタルと半々」といった印象ですが......。
さらに複雑化することで、有機的な印象を強めます。線は重ねたり曲げたりすることで、印象が大きく変わりますね。
そして、透過させることでデジタル色はとても強く再現できます。やはり、ホログラムといえばSci-Fi(※3)ですよね。
※3:サイファイ、サイエンス・フィクション
さて、UIに関して一定の要件を満たしたかと思いますが、もう少しインパクトを加えていきます。
思いついたのは「揺らぎ」です。直線的なイメージに、あえて揺らぎや流れのイメージを挿入することで、情報量を乗算的にアップさせます。
こういった最終的なディテールの追加は、現像のオブジェクトやパーツなどを多少増やしたとしても、それほど印象は変わりません。また、腕を3本にしたり三角形を足したりしたとしても、今ある延長線上のものを加えるだけなので、それほど効果的ではないでしょう。
そこで、まるで正反対のものを。
ライティングで暖色系に寒色系を重ねるように、画に大きなインパクトを与えてくれます。
見せ方というより「重ね方」です。同じものでも、印象がとてもちがってきます。
今回はこの「重ね方」でかなり苦労しました。
Composite
ベストな線の出し方を探る
今回はコンポジットというよりレイアウトですね。どの雰囲気が最も合っているか、配置しながらバランスを考えます。
線を出せば形が見えなくなり、光が薄くなる。光を出せば全体像がぼやける......。
試行錯誤はライティングの調整で。最も全体が見えるところから、コンポジットでの調整に移しました。
コンポジットのカラコレは、V-Rayでほとんど調整しました。ですので、ここではLUTを適用して微調整する程度にしています。線画で難しいのは、「やりすぎも少なすぎも良くない」ということです。
線を大量に出しすぎると見えなくなるし、少なすぎて数えられる程度の数では「単なる線」でしかありません。そのシチュエーションに合った最適なバランスを導くことが大切です。
7つの光は体内のチャクラをイメージしました。
私ももう一度、自分自身を見直す時間にしたいと思います。
【チュートリアル収録内容】
<画創の法則>
・均衡の法則からランダム
・流導の法則から空気と穴
・画角の法則か黄金比
・仕上の法則からフレアとグレア
・画創のS
<実際の制作過程メイキング>
・モデリング からコンポジットまで
・使用ソフト:3ds Max、After Effects
長年、セミナーや授業でお話ししてきた生の感覚をぜひご体感いただけたら嬉しいです。
【+画 ONLINE】vol.003:Line / 「線」を使いこなす
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Information
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3ds Max『画龍点睛オンライン』講座
文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
tutorials.cgworld.jp
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3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)
CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。
online.dhw.co.jp/course/3dcg
Profile
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早野海兵/Kaihei Hayano
画龍 / Garyu
ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
#3dsMAX,#adobe aftereffects,#zbrush,#substancepainter
<代表作>
ゲーム『鬼武者』シリーズ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
連載「+画」、「画龍点睛」
早野海兵公式サイト:kaihei.net
画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
Twitter:@Kai_ryu_Kai