前回に続き、今回はこのキャラクターのテクスチャを作成していきます。
可愛さとリアルのバランスを追求する<テクスチャ編>
ベースカラーはZBrushで、ディテールやカラーとノーマルマップ以外をSubstance 3D Painterで作成しました。レンダリングにはRedshiftを使用しています。
WORK 051 "二本足で歩くシュモクザメ" / デフォルメ×リアルキャラクター<造形編><1>ZBrushのポリペイントでベースカラーを塗る
ZBrushのポリペイントでベースカラーを塗っていきます。オレンジでFillObjectしてベタ塗りした後、部位ごとの色をデザインしつつブラシで塗りつぶしていきます。このときマテリアルをFlatColorに変更すると、色がハッキリとわかって塗りやすいでしょう。
<2>明暗やグラデーションを入れる
明暗やグラデーションを入れていきます。
<3>ムラ感や色の深みを出していく
ブラシタイプをColorSprayに変更してアルファと併用しながら、ムラ感や色の深みを出していきます。このとき、ベースのグラデーションを崩さないようにしましょう。
<4>溝部分にマスクをかける
Mask By Cavityを使用し、溝部分にマスクをかけます。マスクを反転して溝部分のみペイントしていきます。ディテールが目立ちすぎないよう全体を塗るのではなく、部分的に強弱をつけることを意識します。
<5>AdjustColor機能を使用して自然なムラ感や明暗の調節をする
自然なムラ感や明暗の調節にはAdjustColor機能を使用します。特定色域を選択し、その部位のHSVやコントラストをスライダで調節することができます。
<6>Substance 3D Painterにエクスポートする
ZBrushでのベースカラーペイントはこれで終了です。この後、Substance 3D Painterでさらにディテールを書いたりRoughnessやSpecularを塗っていきます。「サブディビジョンレベル1」のローモデルをペイント用にOBJ形式でエクスポートします。
<7>Multi Map Exporterでテクスチャとして書き出す
Multi Map ExporterでNormal MapとTexture From Polypaintを選択し、テクスチャとして書き出します。目や爪など別のパーツも同じ工程で塗り、テクスチャも出しておきます。
<8>テクスチャが出力されているかを確認
テクスチャが出力されていることを確認します。
<9>ZBrushから出力したローモデルをSubstance 3D Painterに移す
Substance Painterに移り、新規プロジェクトメニューでファイルにZBrushから出力したローモデルを選択し[OK]を押します。
<10>Multi Map Exporterで出力したテクスチャを読み込む
先ほどMulti Map Exporterで出力したテクスチャを読み込みます。[Import Resourcesメニュー → AddResouces] からテクスチャを選択し、ファイルタイプをTextureに変更して読み込みます。
<11>Specularチャンネルを追加
Texture Set Settingsのチャンネルで[+]ボタンを押し、Specularチャンネルを追加します。
<12>ビュー上の3DモデルにNormal Mapを反映させる
読み込んだNormal Mapをシェルフから、Texture Set SettingsのMesh Maps内 [通常マップ(Normal Map)] にドラッグ&ドロップして読み込みます。これでビュー上の3DモデルにNormal Mapが反映されます。
<13>Color Mapを反映させる
次にColor Mapを反映させます。レイヤーで塗りつぶしレイヤーを作成し、BaseColorスロットへZBrushから読み込んだBaseColorマップをドラッグ&ドロップします。必要に応じてこの塗りつぶしレイヤーのチャンネルを設定します。今回はRoughnessとSpecularチャンネルの初期値をここで設定しておきました。
<14>ビュー上で反映されているかを確認
ビュー上でこのようにBaseColorとNormalMapが反映されているか、塗りつぶしレイヤーで設定したRoughnessとSpecularも同時に確認しておきましょう。
<15>Normal MapとIDマップ以外のマップを作成
続いて [Texture Set Settings→Bake Mesh Maps] でNormal MapとIDマップ以外のマップを作成しましょう。ここで作成するテクスチャは後ほどスマートマテリアルを使用する際に使われるものになります。ベイクしたらIDマップ以外のマップが揃ったことを確認します。IDマップは今回は使用しません。
<16>スマートマテリアルをレイヤーにドラッグ&ドロップ
スマートマテリアルをシェルフから選び、レイヤーにドラッグ&ドロップします。今回はまずLeather Damagedマテリアルを使用します。
<17>不要なレイヤーを削除または非表示に
フォルダ内を確認し各レイヤーの役割を確認した後、不要なレイヤーを削除したり非表示にしたりします。今回はベースカラーがすでにあるので、スマートマテリアル内のBase Colorレイヤーは非表示にするか削除します。
<18>質感の結果を変更する
主にマスクに付随しているジェネレータを編集し、質感の結果を変更していきます。Dirtジェネレータでは、DirtLevelやDirtContrastで汚れの量やエッジのコントラストをコントロールしたり、GrungeAmountスライダで汚れ具合を調節することができます。
<19>Jadeマテリアルをレイヤーにドラッグ&ドロップ
続いてJadeマテリアルをレイヤーにドラッグ&ドロップします。こちらも同様にBaseレイヤーは非表示に、その他のレイヤーのマスクジェネレータを編集したりマスクペイントレイヤーを追加して必要なところだけレイヤーの効果を与えます。
<20>質感を詰めていく
レイヤーチャンネルを切り替え、不透明度を変更しながら質感を詰めていきます。
<21>チャンネルごとの結果を確認
体のテクスチャが完成してきました。[C] キーを押し、チャンネルごとの結果を確認していきましょう。
<22>最終的に使用するレンダラの設定を選ぶ
Export Texturesメニューで、最終的に使用するレンダラの設定を選び、必要であればOutput Mapsを追加してチャンネルを割り当てていきます。今回はSpecularチャンネルを追加作成しました。レンダラはRedshiftを使用します。Settingsメニューからファイルパスや画像形式、解像度を選択してエクスポートします。
<23>SSSのウェイトテクスチャを作成
SSSのウェイトテクスチャも作成しておきます。白い部分にSSSの効果が乗るようにするマップです。
<24>テクスチャを書き出す
同様の手順でテクスチャを書き出します。これで5種類のテクスチャが出力できました。
<25>テクスチャを各スロットに割り当てる
Houdiniに移りRedshiftマテリアルを設定し、書き出したテクスチャを各スロットへ割り当てます。
<26>パーツごとにRedshiftマテリアルを割り当てる
体・目・爪と、パーツごとにRedshiftマテリアルを割り当てて完成です。
<完成>
森田悠揮 / Yuuki Morita
フリーランスキャラクターデザイナー/デジタルアーティスト/造形作家
国内外問わずアート、映画、ゲーム、広告、デジタル原型など様々なジャンルで活動しているフリーランスのアーティスト。ZBrushでの生物や怪獣などのクリーチャーデザインを得意とする傍ら、Houdiniを用いた動画、アート制作なども行う。初の著書 『the Art of Mystical Beasts』ボーンデジタルから発売中。
website: itisoneness.com
Instagram: yuukimorita
Twitter: @YuukiM0rita
TEXT_森田悠揮 / Yuuki Morita
EDIT_みむらゆにこ / Uniko Mimura